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 〈闘うことを求められてきた地方弁護士〉

 地方住民は、地方弁護士に何を求めているのかについて考えてみる。わざわざ弁護士事務所に足を運び、地方住民が地方弁護士に相談したいと思う一番の理由は、裁判を起こしたいということか、裁判を起こされたので、それに対応してほしいということであることは間違いない。

 地方住民が、地方弁護士を必要とする最大の理由は、民事裁判では原告の代理人か、被告の代理人になってほしいこと、刑事裁判では弁護人になってほしいということである。いずれも法廷において、自分のために闘ってほしいということになる。そういう状況に追い詰められた地方住民は、地方弁護士を求めている。

 20代後半から80歳となる今日まで半世紀を超えて地方住民の求めに応じ、原告代理人、被告代理人、刑事弁護人として、ほぼ毎日法廷闘争をこなしてきた。世間でいう「喧嘩犬」的な仕事に明け暮れてきた。地方住民は、裁判で紛争に決着を付けなければならない状況となることもあり、自分自身はもとより、身内が犯罪者となった場合には、弁護士に弁護を依頼しなければならないこととなる。この時、地方住民は近くにいる弁護士に、自分に代わって闘ってもらうことを求めることになる。

 地方住民が第一に地方弁護士に求めているのは、民事裁判においては、原告または被告の代理人になり闘ってもらうことであり、刑事裁判においては、自分や身近な被告人のために弁護人となって、検察官と闘ってほしいことであることは明らかである。地方住民は民事裁判であれ、刑事裁判であれ、裁判となったら弁護士を求めることになる。地方住民は裁判となったら、必ずと言っていいほど、地方弁護士を求めることになり、地方住民は地方弁護士に裁判において、自分に代わって闘ってくれることを求めていることは間違いない。

 手許の国語辞典には、「弁護士」とは「訴訟に関することや、法律に関する事務を当事者に依頼されて行う職業のこと」とある。地方住民が地方弁護士に求めているのは、法廷で闘うことと、法律に関する事務を行うことということになる。

 これが、地方住民がこれまで地方弁護士に求めてきたことである。それが、地方住民が地方弁護士に求めていることと、一般通常人は認識している。地方弁護士自身も、そのように認識している人が多い。しかし、そういう認識に止まっているだけでよいものであろうか。そういう疑問が湧いてくる。


 〈裁判以前の悩み事の受け皿〉

 地方住民は日常生活において、裁判に関与することはほとんどない。地方住民が裁判に関与することなど、一生に一度あるかないかという程度である。地方住民にとって裁判は非日常、つまりは普段の生活とは言えない地方住民にとっては、非日常の出来事である裁判に関しては、専門家である弁護士に頼まなければならない。

 「地方住民は、地方弁護士に何を求めているのか」という問いに対する答えは、「民事裁判の代理人になってほしい」ということと、「刑事裁判の弁護人になってほしい」ということになる。この認識は、地方住民も地方弁護士も共通している。

 しかし、民事裁判や刑事裁判にまではならなくても、地方住民は日常生活の中でも絶えず悩み事は発生する。その悩み事は、自分一人で解決できるものから、身近な人に相談し解決できるものもあるが、専門的知識や優れた知恵の持ち主に相談することが必要な場合もある。明確には意識はしていなくとも、そういう必要性を潜在的には感じている悩み事は多く存在しているはずである。

 地方住民が普段の生活の中から生まれる悩み事で、専門知識や知恵を持つ人に相談したいという場合に、その相談相手は、どういう人が適任者であろうか。

 健康問題なら、地方医師が適任であることは間違いない。法律問題なら弁護士であることも間違いない。この点は、異論がないと思う。健康問題と法律問題以外の地方住民の悩み事は、誰に相談すべきかが問題となる。問題によっては、地方弁護士よりもっとよい適任者がいると思うが、一般的に言えば、その役割は地方弁護士が果たすべきではなかろうか、という思いが湧いてくる。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵で統合を――』から一部抜粋)


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~27巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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