司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 法律事務所の集客を考えると、一般的にインターネット上に相談解決事例や実績を出した方が反響率は高まります。依頼者(見込み者)は、自分が解決できないことを相談しに法律事務所を訪れるのですから、自分が悩んでいること、相談したいことが書かれているWEBサイトを魅力に感じるのは当然だと言えます。どういう案件で、どんな結果を出しているのかは、基本的に注目される情報であるという認識が必要です。

 

 インターネットが普及し、ネットを中心とした情報社会になり、スマートフォンでいつでもその情報にアクセスできる現在では、常に情報を出さないことは存在しないことも同じになってしまうのです。同一エリアの他の弁護士事務所が無い場合など、別の要素でその存在が必然的に浮上する場合もありますが、そうでなければ、いまやネットを探っても姿を見せない対象は、少なくともまず、その存在自体も含めて不信の対象にもなりかねないことに留意が必要でしょう。

 

 しかし、いざ法律事務所のWEBサイトを作るとなると、こと実績について弁護士の方から、不思議なくらい「出せない」「出したくない」という言葉が返ってきます。個人個人の考え方として、さまざまな理由があるとは思いますが、業種がら慎重な対応を取りたいという気遣いが目立ちます。

 

 弁護士のように個別具体的な案件によって、対応が違い、またそれによって導かれる結果が違ってくる仕事では、Aさんの案件での成功がBさんの成功に必ずしもつながるとは限りません。実績の類型化には限界があり、個別的な事情を聞かなければ、一概にうまくいくとはいえず、そこを実績として期待させてしまうことはどうだろうか、といった慎重な発想になるのも当然であり、そう考えること自体はある意味、逆に良心的ととれる面もあります。

 

 ただ、それでも依頼者はなんとか辿りつける、あるいは選択できる手がかりがほしいのです。そこでいつも「依頼者の悩みはなんですか」ということを、その弁護士にヒアリングをするようにしています。要は依頼者(見込み者)は自分が解決できないことを相談しに法律事務所を訪れるのだから、その実績を類例化し、扱ってきたこと、依頼者の悩みとして聞いて、一応の解決を導き出せたケースをアピールするのです。事件そのものの最終的な全面解決の実績ではなく(そもそも勝訴率などのアピールは弁護士の場合、広告規制でできませんが)、少なくとも解決への糸口への相談は応じられると考える、依頼者・相談者の具体的な悩みを10個~20個列挙するだけでも相当の効果を発揮するはずです。

 

 例えは、交通事故での案件を受任したいなら、
 「保険会社(相手)の対応が悪く思うように交渉できない」
 「保険会社(相手)の提示する金額が低すぎて悩んでいる」
 「補償額が自分の想像より少なく不満に思っている」
 「示談になったが、相手に支払い能力がなく困っている」
 「後遺症の認定に不満があり悩んでいる」など。

 

 依頼者が悩んでいることをピックアップし、どのように解決するかをできるだけ提示してあげるのです。

 

 弁護士は仕事柄、ある種、すきのない対応に頭を使い、厳密な意味での可能性を考え、一般的な感覚よりも、むしろ「必ずしもそうはいえない」「いえない場合がある」という方を強くこだわるところがあるように見えます。

 

 もちろん、それも一面大事なことですが、その点はやはり対話のなかではっきりさせるべきことです。すべてネット上の表記、アピールで伝えることはできず、そこには限界もあります。

 

 相談者が「この人はひょっとして大丈夫かもしれない」と一歩踏み出す、動機づけにつながるような表現を、考えてみるべきだと思います。



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