司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 弁護士ドラマをみていると、いつも思うことがあります。ドラマの弁護士はフットワークが良すぎます。裁判所や事件現場だけでなく、依頼者の自宅にもすぐに移動します。ドラマですから細かいツッコミをしても仕方がないのですが、いつ起案をするのだろうとつい考えてしまいます(笑)。

 

 ドラマほどではありませんが、リアルの弁護士も移動は多いです。司法修習生時代、実務修習として弁護修習・民裁修習・刑裁修習・検察修習がありました。この修習時代に感じたのは、「裁判官や検察官と違い、弁護士は移動が大変なのだな・・・」ということです。

 

 もちろん、裁判官や検察官が外出(出張)することはあるでしょうが、弁護士の方が移動は多いはずです。

 

 外出の代表例は、裁判の期日の出廷です。民事弁護の講義で「実務では管轄が重要」と教わったことをよく覚えています。受験時代は、管轄については民事訴訟法で少しだけ勉強する程度です。しかしながら、実務では弁護士にとって管轄は大きな問題です。管轄の細かい話は省きますが、おそらくほとんどの弁護士が、初相談の際に依頼者や相手方の住所地を確認するはずです。管轄が近隣の裁判所であればいいのですが、遠方の裁判所だと移動の負担が大きいからです。飛行機や新幹線を使うレベルの場合もあります。実務に出て、民事弁護教官の言葉が身にしみます。

 

 さて、私の事務所はさいたま市南区にありますので、ホームグランドはさいたま地裁(家裁)本庁です。事務所からさいたま地裁本庁までは徒歩で往復40分ほどかかります(車は持っておりません)。徒歩圏内ギリギリですが、電車を使わずに済むので待ち時間はありません。電話やFAXの対応に追われている日中40分のロスはなかなか痛いのですが、それでも比較的近い方ですね。

 

 埼玉県内の支部は、熊谷、越谷、川越があります。いずれの支部も往復2~3時間ほどかかるため、半日潰してしまいます。しかも、膨大な移動時間をかけたにもかかわらず、期日によっては数分で終わってしまうこともあります(訴訟の第1回期日は短いことが多いですね・・・・)。

 

 以上の通りですので、私の場合、管轄がさいたま地裁本庁だと助かるのですが、それ以外の裁判所ですと期日に出廷するだけで半日仕事になってしまいますので、移動によるロスは大きいです。

 

 また、接見で外出することも多いです。私の事務所があるさいたま市近隣の警察署であれば移動時間は往復1時間強です。1時間でもロスは大きいのですが、さいたま市から少し離れるだけで往復2~3時間かかりますので、更にロスが大きくなります。

 

 時間だけでなく交通費も馬鹿になりません。当番弁護や国選弁護の場合,原則として交通費は自腹です。安いバスを使いたいのですが待ち時間のロスが大きいため、やむなくタクシーを使うことが多いです。当番弁護や国選弁護の報酬の安さを考えると贅沢かもしれませんが、時間をお金で買うと割り切っています。そう思わないと精神衛生上よくありませんからね・・・。

 

 もちろん、移動中にノートパソコンで簡単な事務処理をしたり記録に目を通したりして、少しでも業務を行うよう工夫はしています。しかしながら、やはり効率は落ちてしまいます。通常の民間企業であれば移動は当たり前かもしれませんが、弁護士は事務所に戻ると電話・FAX・メール対応などの事務処理、さらに起案という膨大な時間がかかる業務が待っています。

 

 裁判官や検察官は、移動時間が少ない分多くの業務を抱えているのかもしれませんし、転勤の負担もあります。それでも、裁判官や検察官が弁護士の移動の負担をどれだけ考慮してくれているのかな・・・と思うことは多いです。

 

 移動はなるべく減らしたいですが、そうもいかないのが弁護士業の宿命かもしれませんね。



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