司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

■峯岸孝浩
登録5年で独立開業した地方会の若手弁護士が見て、感じた弁護士業や弁護士会の今をつづります。
1975年生まれ。1998年明治大学法学部卒業。2006年10月に埼玉弁護士会に弁護士登録。大倉浩法律事務所に勤務弁護士として所属。2012年1月「武蔵浦和法律事務所」を設立。埼玉速記録問題対策特別委員会委員長、埼玉子どもの権利委員会副委員長等を務める。
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 1月は、新入会員が業務に本格的に参加する時期でもあり、かつ、地方の単位会の会長選挙が行われる時期でもあります。
 
 弁護士会内部で「弁護士増員問題」などのテーマについて激しい対立があります。埼玉弁護士会も例外ではなく、むしろ全国的にみても対立が激しい単位会の1つであるようです。私が弁護士登録した平成18年10月以降,会長選挙の度に熾烈な選挙活動が行われていました。

 確かに主義主張について、意見をぶつけて議論することは必要なことです。しかしながら、毎年のように激しい選挙活動を繰り返していては消耗してしまいます。

 第9回最近の若手弁護士事情(「弁護士会の弱体化」)にて触れましたとおり、平成24年10月、埼玉弁護士会では主に50期以降の会員が中心となって「若手の会」を結成し、選挙の回避を訴えました。「法科大学院」「日本司法支援センター」「裁判員制度」などについては対立はありますが、少なくとも「弁護士増員問題」については、埼玉弁護士会の「適正な弁護士増加に関する決議(=司法試験合格者を1000人程度にすべきという決議)」を尊重するという方針で決着がつきました。

 その結果、今回の選挙は回避されました。私自身も会長選挙の度に選挙活動に労力を割いていましたので、正直なところほっとしています。来年はどうなるかわかりませんが、ベテラン弁護士が若手弁護士の支援のために一致団結してくれましたので、非常にありがたく感じております。

 もっとも、弁護士増員問題について複雑な心境であるのは、新司法試験世代である若手弁護士自身なのかもしれません。若手の会で、新司法試験で合格した若手弁護士から以下のような声があがりました。

 「受験生時代は合格者を増やして欲しいと思っていた。自分自身が合格者増員のお陰で新司法試験に合格したので、合格者を減らすべきとは言いにくい」
 「法科大学院の同級生達が今も受験を続けている。その人達のことを思うと、合格者を減員するのは忍びない。」

 確かに、上記意見はその通りだと思います。弁護士を目指して勉強を続けている受験生のことを考えると胸が痛みます。ただし、少なくとも現時点で法科大学院に入学する方々は、合格者が減員される可能性があることを理解しているはずです。そして、仮に合格者が減員されることになったとしても減員まであと数年はかかると思いますので、法科大学院在学中あるいは卒業した方にも十分チャンスはあると思います。

 現在の弁護士就職難の状況は異常です。奨学金の返済すらままならない状況でプロボノ活動などできるはずがありません。それどころか、弁護士による横領事件などの不祥事を誘発し、かえって社会に悪影響を与えてしまいます。合格者の減員は避けられないことだと思います。

 それでも現在の日弁連は、司法試験合格者の減員には消極的です。弁護士就職難を憂える我々地方の単位会の弁護士にとって、最大の障害は、マスコミでも世間一般でもなく、日弁連そのものといっても過言ではありません。

 私は現在の日弁連には期待していませんが、埼玉弁護士会執行部には期待しています。埼玉弁護士会の活動が、日弁連にどのような影響を与えるかが非常に楽しみです。



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