司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 2月という時期は、各単位会の執行部の選挙がある時期です。埼玉弁護士会は、法科大学院や日本司法支援センターなどの司法改革問題について意見が真っ二つにわれていましたので、以前は毎年会長選挙を行っていました。しかしながら選挙は消耗しますので、50期以降の若手弁護士が選挙の回避を訴えました(第9回「弁護士会の弱体化」)。その結果、前年度、今年度、次年度は選挙は行われていません。他会でも、選挙の際はある程度派閥間で調整がされているようです。

 

 そのような中、東京弁護士会では副会長選挙が行われました。アディーレ法律事務所の若手弁護士(64期,36才)が副会長に立候補したためです。 結果的に彼は落選しましたが、票の獲得数は少なくなく、他の候補者に脅威を与えたと思われます。

 

 私は彼の公約に賛同しているわけではありませんが、若手を代表して立ち上がったこと自体は評価します。ただし気になるのは、彼自身の意思で立候補したのか、それとも彼が所属するアディーレ法律事務所の意向で立候補したのか、という点です。彼は彼自身の意思で立候補したのかもしれません。しかし、アディーレ法律事務所という大手新興事務所に所属している以上、「事務所の広報活動の一環ではないか」と評価する弁護士も少なくありません。

 

 もし彼が大手法律事務所の所属ではなく、小規模かつ宣伝活動に力を入れていない事務所所属の状態で立候補したら、どのような結果になったでしょうか。小規模事務所ゆえ組織力も注目度は落ちるでしょうが、少なくとも「事務所の広報活動」という否定的な評価を受ける可能性も低かったと思います。

 

 そして公約のうち「任意加入制の導入」については、特に反対の意見が多かったように感じます(私自身も任意加入制の導入には賛同できません)。そうすると、仮に、彼が広報活動という否定的な評価がなされない立場で立候補し、任意加入制の導入を公約からカットしていたら、違う結果になっていたかもしれません。

 

 私自身は埼玉弁護士会の副会長にさえ立候補しておりませんので、あれこれ評価できる立場ではありません。それでも感じるのは、任意加入制の導入等を公約に掲げた若手弁護士がある程度の票を獲得した大きな原因の一つに、弁護士激増問題があることです。今回は東京弁護士会の選挙でしたが、いずれ日弁連の選挙でも同じようなことが起こるでしょう。

 

 現在の日弁連執行部は弁護士激増問題に積極的に取り組んでいるように感じることはできませんが、若手の不満は溜まりに溜まっており、弁護士会を脅かす存在になりつつあることを受け止めてほしいです。



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