司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 先日、今年(平成26年)の司法試験の合格発表がありました。合格者数は「1810人」です。平成20年以降の新司法試験合格者数は2000人超でした。弁護士増加に伴う就職難や質の低下などの弊害が、ようやく認識されてきたのだと思いたいです。

 

 その一方で、平成26年10月27日、「ロースクールと法曹の未来を創る会」という任意団体が「司法試験3000人合格を実現する国民大集合」という会を開催しました。同会の顧問・役員は、弁護士、ロースクール教授、経済界の重鎮等です。同会の名前の通り、同会はロースクールの未来、すなわち閉校が相次ぐロースクール制度を守ることを目的にしているようです。

 

 同会が目指している法曹養成制度改革の内容は,以下の通りです。

 

 「司法試験において3000名程度の合格者数を達成することをめざす。達成後は純粋な資格試験とし、合格者数の上限を設けない。」
 「ロースクール修了者の8割程度が1年目で司法試験に合格することを目処とする」
 「予備試験を廃止する」
 「法曹資格は、司法試験合格により付与される。司法修習はこれを踏まえてどのような方法が妥当か検討するべきである」
 
 ロースクール関係者がロースクールの未来を考えるのは無理からぬことだと思います。しかし、上記の法曹養成制度改革内容は,現状を把握していない不合理なものです。
 
 色々と言いたいことはあるのですが、今回は「司法試験合格者数を3000人」にすることについて、私の意見を述べます。

 

 弁護士激増による弊害は様々ですが、少なくとも弁護士の就職難という問題は数値で明らかになっています。それにもかかわらず司法試験3000人合格を掲げる同会の顧問や役員の方々に対し、私から以下の通りお願いがあります。

 

 「弁護士や経済界関係者は、就職が決まらない司法修習生を、給料最低600万円で勤務弁護士もしくは社内弁護士として迎える」
 「ロースクール関係者は、司法試験予備校に通わずに司法試験の受験資格を失った方(=5回の不合格)に対し、ロースクール学費の半額を返還する」

 

 このお願いを受け入れてくださるのであれば、私も同会に賛同します。

 

 同会の理念からすれば、司法試験合格者数を3000人にしても社会の需要があるということですから、弁護士の就職難などあり得ないはずです。弁護士は600万円の給料があれば奨学金を返済できるでしょう。

 

 そして、ロースクールの教育が優れているのであれば、司法試験予備校に通う必要などありません。司法試験予備校に通わずに司法試験の受験資格を失った方に関しては、ロースクールの教育の質に問題があったということですので、ロースクールも責任をとる必要があります。ただし、受験者本人の努力不足ということもあるかもしれないので、ロースクールの学費全額ではなく、半額の返還ということにします。

 

 もし同会が上記のお願いを受け入れないのであれば、今すぐ弁護士が必要とされる業務の掘り起こしをして、弁護士の就職難を解消していただきたいです。むしろ、弁護士就職難が現実化してしまっているにもかかわらず、なぜ現時点で業務の掘り起こしが十分できていないのか、不思議でなりません。

 

 我々弁護士は、弁護士激増の影響で経済的基盤が危うくなってきています。それにもかかわらず、法テラスの法律援助や国選弁護など、経済的に負担の大きい事件を引き受けています。同会の役員や顧問の方々も、ロースクール制度の崇高な理念のために多大なる経済的負担を覚悟してくれていると思いたいです。



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