司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 
 弊所を開設したのが昨年の1月です。無事に2年目を迎えることができました。新年の挨拶としては遅くなりますが、改めて、今年もよろしくお願い申し上げます。

 さて、年始めの1月という時期は、新入会員の弁護士が業務を開始する時期です(正式には新入会員は12月下旬頃に弁護士登録をするのですが、12月は年末ゆえ慌ただしいので、実質的には年明けに活動開始という方が多いです)。
 
 新入会員向けに、埼玉弁護士会の様々な委員会が研修会を行います。東京や大阪のような大規模単位会は違うかもしれませんが、埼玉のような地方の単位会では、プロボノ活動中心になる委員会は人手不足になりがちですので、研修会の後の懇親会の際に新入会員を委員会に新人を委員会に勧誘します。

 私も新人の頃は色々な研修に参加し、色々な委員会から勧誘していただきました。思えば、私が知らないうちに勝手にメンバーにされてしまった委員会もあります(笑)。

 新入会員の弁護士の方々が熱心に研修会や懇親会に参加しているのをみかけると、私もまだまだ若手ではありますが、新人のころの自分を思い出し懐かしく感じます。

 ただし、私が弁護士登録した平成18年と違う点が、2つあります。1つは、修習を終了したにもかかわらず、現在も就職活動をしている方がいることです。就職難という大変な時代であることを実感します。この弁護士就職難の問題については、これまでのコラムで何度か触れてきましたし、これからも触れると思いますので、今回は割愛させていただきます。

 もう1つは、事務所運営のノウハウに関する研修が行われるようになったことです。即独弁護士や準即独弁護士向けに、経験豊富な弁護士が事務所運営のノウハウを公開してくれます。私が新人だった頃はこのような研修はなかったと思います。

 昨今の弁護士の不祥事の多くは、経営難が原因となっています。経営難になった弁護士は事務所の家賃すら払えず余裕がありませんので、人権活動のようなプロボノ活動などできるはずがありません。それどころか依頼者からの預り金を横領するなど、あってはならないことが起きてしまいます。良い弁護士を育成するという意味では、確かに事務所運営に関する研修は有益です。

 かくいう私自身も、独立してから2年目にすぎず、マネジメントについてはまだまだ未熟ですので、研修に参加し勉強させて頂きました。ただし、遠くない将来、事務所運営に関する研修もなくなるかもしれません。

 このような研修に協力する弁護士は、自分の経営が安定しているにもかかわらず、弁護士就職難の時代を憂いて自らのノウハウを提供してくれる方です。競争相手になるとわかっているにもかかわらず、他の弁護士を育てているのです。

 しかしながら、競争が激しくなりどの弁護士も食べていくのに必死な状況になってしまったら、皆が競争相手を蹴落とすことに躍起になるはずです。事務所経営の研修など行われるはずがありません。

 ある経営コンサルタントにあったとき、「弁護士業界は甘い。なぜ同業者を応援するのか理解できない。通常の民間企業で同じようなことをやっていたら生きていけない。異常な業界だ」と語っていたのが印象的でした。

 確かにその通りだと思いました。生き残るために必死な通常の民間企業と比較すれば、自然な感想です。

 しかしながら、弁護士は通常の民間企業とは違います。弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としています(弁護士法第1条1項)。必然的にプロボノ活動を求められる特殊な職業です。

 上記経営コンサルタントの言葉を聞いた私は、「そうか。民間企業は利益を最優先にしてよいのか。利益のためには他の同業者をライバルとみなしてよいのか」と、恥ずかしながら民間企業の常識に気づきました。そして、通常の民間企業の方から怒られるかもしれませんが、「通常の民間企業はいいな・・・。利益を最優先にしても良いのだから」と感じました(もちろん、激しい競争の中で生き残らなければならないという多大なる苦労があるのは理解しているつもりです)。

 利益を最優先にするということは、ビジネスマンになるということです。通常の民間企業はビジネスに徹することによってより良いサービスが生まれるのでしょうから、ビジネスマンであるべきです。弁護士業界でも、大手法律事務所はビジネスを最優先にしているところが多いです。
 
 しかしながら、苦労して弁護士になったのですから、ビジネスに徹するのは少々もったいないような気がします。利益がでるのは確かにありがたいことでしょうが、利益を度外視しても依頼者のために結果を出せたときの達成感は一生忘れることができません。弁護士になって良かったと思えるかけがえのない瞬間です。

 サービス向上のためには適度な競争は必要かもしれませんが、他の弁護士を競争相手として蹴落とすような状況になってしまったら、利益を最優先にしなければ生きていけません。弁護士法第1条を守る弁護士はいなくなります。プロボノ活動などもってのほかです。

 新入会員と接して、そうはなってほしくないと思いました。同時に、「私自身も他人事ではないな・・・・」と思いを新たにしました。



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