司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 先日、第69期司法修習生の2回試験合格発表がありました。私が弁護修習で担当した方は・・・・無事に合格しました!優秀な方だったので大丈夫だろうと思ってはいましたが,やはり緊張するものですね。合格して本当に嬉しいです。

 

 その方は、すでに都内の法律事務所で業務を始めています。非常に忙しい事務所のようですので、良い修行ができると思います。将来が楽しみです。

 

 今年の10月、修習生謝恩会に出席しました。冒頭の挨拶で、ある裁判官がこう述べていました。

 

 「私が修習生のとき、『裁判官は最初の3年が大事、後はその貯金で食っていける』と教わりました」

 

 「裁判官」を弁護士に置き換えても同じですね。私も修習中に「弁護士は最初の○年が大事」という話をよく聞きました。数字は「3年」「5年」「10年」と色々ありますが、「最初が大事」ということは共通しています。

 

 確かに最初は大事だと思いますが、なぜなのかはよく理解できていませんでした。せいぜい、所属事務所によって扱う事件のジャンルに色があるので、得意分野に影響するという程度にしか考えていませんでした。

 

 上記裁判官の言葉の後,以下のように話が続きました。

 

 「実際には貯金ではなく、最初に必死でやっていれば努力する癖がつくという意味です。努力することが当たり前になるので、その後もやっていけるようになります」

 

  なるほど!確かにそう思います。この言葉のお陰で、最初の数年が大事であることの意味がようやくわかった気がします。

 

 弊所は今年でやっと5年目ですが、お陰様で徐々に事件数が増えてきました。平日の帰宅時間は午後10時から午後11時ころ、土日祝日も出勤することが多いです。世間的には忙しいといわれるレベルだと思います。

 

 しかし、弁護士としては通常レベルと感じています。日付をまたいで仕事をすることはあまりありません。土日祝日は暗くなる前に帰宅できます。月に何日かは休めています。睡眠も十分とれています。まだまだ余力はあります。

 

 こう思えるのは、イソ弁時代の5年間のお陰です。私は,独立する兄弁の後任としてボス弁の事務所に入所しました。当時の兄弁は弁護士歴8年という十分な経験があったうえ、後に研修所の教官にもなった弁護士です。兄弁は私が入所してから1ヵ月後に独立しましたので、その優秀な兄弁の担当事件を丸々引き継ぎました。兄弁は「事件量としては普通だよ」と言っていましたが、当時の私にとっては激務でした。事案すら頭に入らない絶望的な物量でした。しかし事件は待ってくれません。雪崩のように次から次へと押し寄せる業務を、日々血ヘドを吐く思いで何とか対応していました。

 

 当時は非常に大変でした。しかし「最初に必死でやっていれば努力する癖がつく」という言葉を聞き、修行の場を与えてくれたボス弁に改めて感謝しました。もし私が土日祝日を休めるようなイソ弁時代を送っていたとしたら、今の業務量に耐えられなかったはずです。

 

 69期の皆さんは、ちょうど弁護士として歩み始める時期です。私が新人だった10年前とは状況が変わってしまっていますが、イソ弁でもノキ弁でも即独でも、それぞれの立場でそれぞれの苦労があると思います。それでも負けずに頑張ってほしいです。「最初に苦労してよかった」と思える日が必ず来るはずです。

 

 今年もお世話になりました。今年も本コラムをお読みくださった皆様にお礼申し上げるとともに、また来年も本コラムを宜しくお願いします。



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