司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 先日、埼玉弁護士会の臨時総会が開かれました。議案の一つに、議論が紛糾することが明らかなものがありました。「埼玉弁護士会会長及び副会長の報酬に関する会規」です。

 

 会長及び副会長、常議員、各委員会活動などの会務は、無償です。これが原則です。上記議案は会長及び副会長については有償に変更しようとするものですので、この原則から大きく外れます。

 

 しかしながら資料によると、以前に比べ各単位会の会長及び副会長に報酬を支払う会が増えてきています。報酬といっても微々たる額の会がほとんどです。実際に埼玉弁護士会の上記議案の報酬額は、会長及び副会長職に伴う接待交際費にすら足りない額です。

 

 それでもやはり時代は変わったのでしょう。会長及び副会長になると通常業務を行う時間を削られますので、収入が激減します。そして昔と違い、弁護士激増に伴う競争激化により弁護士の収入は減っていますので、会長及び副会長を務めると事務所維持に大きな支障をきたすはずです。接待交際費程度であっても報酬がないよりはあった方がいい、と言わざるを得ないのかもしれません。

 

 やはり議論は紛糾しました。反対派から様々な意見がでましたが、印象的だったのは以下の言葉です。

 

 「会務活動は無償だからこそ誇りを持ってやれる。しかし報酬をもらってしまったら、『お金をもらっているのだからやって当然』と言われてしまう」

 

 確かにその通りです。上記発言をした会員は副会長職を務めたこともあり、委員会活動も非常に熱心ですので、説得力がありました。

 

 ただ、それでも、競争が激化している弁護士業界の将来を考えると、わずかではあっても会長及び副会長に報酬を支払わざるを得ないのではないかと感じます。特に経済的基盤が安定していない若手会員にとっては副会長職の負担は大きすぎます。

 

 私は会長も副会長も務めたことはありませんが、前年度及び今年度は調査局として会長及び副会長の業務に接する機会が多くなりました。・・・その激務ぶりに唖然としました。執行部会議(週1)、弁護士会館当番(週1、副会長のみ)、関係各所の各種イベントの参加、全国への出張、常議員会(月1)、弁護士会総会(年2~3回)、声明の起案もしくは確認、担当委員会への出席・・・。おそらく他にも私が把握していない業務が数多くあるでしょう。

 

 その負担割合は人によって評価は様々ですが、移動時間も考慮すると業務時間の半分近くを会長及び副会長業務に割かれるのではないでしょうか。

 

 議論は紛糾しましたが、結果として議案は承認され、次年度以降の会長及び副会長に報酬が支払われることになりました。時代が変わりましたのでこれはこれでやむを得ないと感じています。

 

 しかしながら、次のテーマに発展するはずです。「委員会など他の会務活動についても、今まで通り無償のままでよいのか」というものです。実際、すでにこのテーマに関する調査は始まっています。

 

 「会務活動は無償だからこそ誇りを持ってやれる」と発言した会員の言葉が胸に突き刺さります。弁護士激増による競争激化の中、我々弁護士はどれだけ誇りを持ち続けることができるのでしょうか。

 

 来年も激動の時代になるでしょうが感じたことを綴らせていただきます。今年もお世話になりました。来年もよろしくお願い申し上げます。



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