司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 私が弁護士登録した平成18年10月時点で、すでに弁護士会内部で司法改革問題について激しい争いがおこっていました。主なテーマは「弁護士増員」「法科大学院」「裁判員制度」「日本司法支援センター」です。

 私のような若手弁護士にとって司法改革問題の争いを最も身近に感じるのは、私が所属する埼玉弁護士会の会長選挙のときです。

 埼玉弁護士会の会長選挙では、私自身も、指示する会長候補のために選挙活動を行います。司法改革問題は重大なテーマですので熱心に取り組みます。しかしながら、埼玉弁護士会会長の任期は1年ですので、毎年選挙が行われるとさすがに消耗してきます。

 そして、埼玉弁護士会会長選挙の結果がどうであれ、日弁連に対してはともかく、世間一般に対してはほとんど影響を与えることはありません。

 弁護士の真骨頂は在野精神にあると思います。権力に縛られない弁護士が一致団結してはじめて、国家権力に対し真っ向から立ち向かうことができます。

 ですが、現在は弁護士会そのものが司法改革問題について二分化して激しく争っており、一致団結することなど到底望めません。内部で争いを抱えている弁護士会は弱体化しています。司法改革問題の真の目的が、国にとってうるさい弁護士会の弱体化を狙ったのだとすれば、大きな成果を上げたといっていいでしょう。

 このように弱体化した弁護士会ですが、2年前、一つの結果をだしました。「司法修習生の給費制維持」です。現在は貸与制に移行してしまいましたが、貸与制への移行直前に、たった1年といえども給費制が維持されたのには非常に驚きました。国の税金で司法修習生の給料を支給するのは、世間の理解を得られるはずなどないと思っていたからです。そうであるにもかかわらず、1年ではあるものの給費制が維持されたのは、このテーマに関しては弁護士会が一致団結したからだと言っても過言ではないでしょう。

 私が弁護士登録する前のことですが、同じように弁護士会が一致団結して結果をだしたことがあると聞いています。「弁護士費用の敗訴者負担制度」です。弁護士会が一貫して同制度の導入に反対した結果、同制度の導入は見送られました。
 
 司法改革問題は重要なテーマであり、簡単に妥協することはできませんが、だからといっていつまでも弁護士会内部で争いを続けるわけにはいきません。

 先日、埼玉弁護士会において、主に50期以降の弁護士が中心となって「若手の会」を結成し、埼玉弁護士会会長選挙の回避を訴えました。せめて埼玉弁護士会だけでも一致団結する必要があると考えたからです。次期会長選挙がどうなるかはまだわかりませんが、少なくとも埼玉のベテラン弁護士は我々の声に耳を傾けてくれました。

 主義主張の完全な一致はすぐには難しいかもしれませんが、弁護士増員問題については、埼玉弁護士会の「適正な弁護士増加に関する決議(=司法試験合格者を1000人程度にすべきという決議)」を尊重するという方針で、ほぼ一致しました。

 日弁連は巨大組織ですのですぐに一致団結というのは難しいかもしれません。それでも、この埼玉弁護士会の動きが何かの契機になってほしいと考えています。



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