司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 海岸に無残に広がる機体の残骸――恐れていたオスプレイの事故が遂に沖縄で発生した。しかし、これは「墜落」ではなく、「不時着」であるというのが、日米政府が即座に発表した、何やら弁明のようにも聞こえる見解である。制御不能ではなかったというのが、理由のようで、期待損傷程度で判断するのではない、という専門家の意見も報じられているが、日米政府の政治的な都合は今回の対応から透けて見えている。専門家の用語解釈は、この場合、あまり意味のない助け舟にみえる。

 

 「沖縄の人々の多くの命を守り、乗組員を守った。最悪の事態で最善の決断をくだせたのは誇りに思う」。在沖米軍のトップは会見で、謝罪の言葉とともにこう話した、という。制御不能ではなかったというストーリーができている。しかし、これもあまり意味がない。「最悪の事態」を想像させて今回の結果を「不幸中の幸い」のようにいわれても、われわれが辿りつくところはそこではない。

 

 つまり、これが制御下にあった「不時着」であったとしても、オスプレイの「不時着」がどういう結果を招くのかという厳然たる事実を私たちはみせつけられているからだ。まるで米国の顔をうかがうような日本政府の姿勢には、その「最悪の事態」の恐怖にさらされている県民への配慮、県民目線の想像力が感じられない。事実上、これが「墜落」であるとすらいえない、いわない日本政府の現実を私たちは受けとめなければならない。

 

 想像力の欠落、あるいは封印しているのは、日本政府だけだろうか。建設中の米軍ヘリパッド工事の一時差し止めを求め、沖縄県東村高江周辺の住民が行った仮処分申し立てが6日、那覇地裁に却下された。「この国は発狂している」。奇しくもオスプレイ「墜落」があった12月13日の日刊ゲンダイが、強い表現でこの司法の対応を批判する、ジャーナリスト・斎藤貴男氏の一文を掲載している。

 

 ヘリパッドの一部はすでに完成し、運用も強行されているなか、オスプレイの騒音で「家具や窓が揺れる」「吐き気で食事もできない」などとした住民の証言に対し、地裁は予測を超える低周波音が一時的に生まれている可能性に言及しながら、「1日単位の騒音でうるささを比較できない」「住民の人格権が侵害され、健康被害をもたらすとまでは言えない」。実態調査を求める住民の声は無視――。

 

 「実態を調査する気もないまま、揚げ句の果てに『違法な航空機騒音が生まれるとは考えにくい』で済ませたのだから、デタラメにも程がある。建設の必要性や公共性への言及も一切なかった。ただ国側を勝たせる目的でのみ導かれた決定であることが分かる」

 「機動隊員が反対住民を『土人』と罵倒した。それを沖縄担当相を名乗る鶴保庸介が『差別とは言えない』と肯定した答弁に、『訂正も謝罪も必要ない』とする答弁書を閣議決定した安倍政権の走狗らしいと言えばそれまでだが、司法とはここまで堕ちるものなのか」

 

 それでも「差別」はない、それでも「墜落」ではない、というのは、目的のために現実に目をつむり、想像力をも封印した日本政府の共通した姿勢をみてしまう。そして、司法もまた、その姿勢を問い質す国民にとっての最後の砦には成り得ないということか。斎藤氏は、今回の司法の対応について、「『人権』という考え方を全否定しない限りはあり得ない、悪辣きわまる代物」と痛烈に批判した。

 

 彼らを監視しなければならない私たちは、決して封印してはならない。

 

 

 「二極化・格差社会の真相 人権を否定することに喜びを感じている変質者集団」(ジャーナリスト・斎藤貴男氏、日刊ゲンダイ)



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