司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 〈国民への明確な裏切り〉

 

 今、隣国韓国では、大統領が長年友人として交際していた女性に国家機密を漏洩し国政への介入を認めていたのではないかとの疑惑が生じ、国民の信頼を裏切ったということで大統領退陣を求める国民の声が大きくなっている。

 

 最高の司法権力者が本来の使命を果たさず、というよりこれを放棄し、国民の権利の擁護より国策追従の道を選択したことは、国民への明白な裏切りであり、未だ真相が明確とは言えない韓国大統領にまつわる問題よりも、より強く弾劾されるべきことではないかと考える。

 

 しかし、本来権力の監視機関であるべきマスコミそして日弁連は、前述の西野教授、木村教授らの明確な指摘があるにも拘らず、この判決の投げかけた問題を取り上げることを全くしなかった。

 

 アメリカでは、政治経験も軍務の経験もないドナルド・トランプ氏が、大方の予想に反して次期第45代大統領に選出された。彼の選挙運動中の過激な発言から、今後のアメリカという国の在り方に不安を感じている人は多い。一方、新しい大統領を成功させようという意見も出始めている。大統領として選んだ以上は仕方がない、成功させる以外にはないということかも知れない。しかし、そうではあっても、その大統領の言動がノーマライズされてはならないという意見もある(ダイヤモンドオンライン瀧口範子2016年11月16日)。あの選択は間違いだったから大統領を選び直そうなどということはできない。しかし、その言動を常に批判し、監視し、正当化しないように叫び続けることは、主権者である一般国民としては可能だし、続けなければならないことである。

 

 大法廷判決に関わった裁判官も多くがその職を離れ、現職に留まっているのは寺田長官を含め4人である。しかし、その判決の下されたことの司法の危機、国家の危機は現に続き、それに対する批判と監視は強められるべきこそすれ、弱められ、忘れ去られることがあってはならない。

 

 

 〈最高裁の事態への正しい批判の継続を〉

 

 トランプ氏が大統領に当選したのは、従来のエスタブリッシュメント(既得権益を持つ者)に不満を持つ国民の多くがトランプ氏に投票したからではないかと言われる。それはポピュリズム(大衆迎合主義)であり、民主主義の危機だと捉える立場もある。木を見て森を見ないで、国政の最高責任者を選ぶということは確かに心配なことではある。特に、国際関係におけるアメリカの覇権的立場を考えればなおの事である。このトランプ勝利で、大衆迎合的言動をする政党が各国で勢いを増すのではないかとの危惧の指摘もある(毎日新聞2016年11月10日)。トランプ氏より先行した、フィリピンのトランプと言われたドゥテルテ氏の大統領当選がある。

 

 確かに心配な流れではあるが、国民が既存の権益者(その中には大マスコミも含まれる)を批判し、それを弾劾する力を見せ付けたということは、別の面から見れば、民主主義の健全性の証とも言えるものなのかも知れない。

 

 我が国の最高裁判所は、正義の府、人権の最後の拠り所というイメージが持たれ、真実そうでなければならないのだが、実際はそうではなく、前述の国策追従のなりふり構わない素顔を見せつられれば、国民はその実態を良く見極め、正しく批判し続けて行かなければならない。

 

 こう説けば、この大法廷判決とその後の国家に見られる流れは、ことは単に裁判員制度だけの問題ではなく、この国の脆弱な民主主義を象徴的に表す存在だということである。トランプ氏以上に心配である。



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