司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 現在弊所のメンバーは、弁護士は私1名、事務員1名です。いわゆる「弁護士1人事務所」ですので忙しくはしておりますが、事務作業は事務員がやってくれますので、自由気ままに仕事をしております。そんなある日、依頼者との打合せでこんなやりとりがありました。

 

 依頼者「先生、相手の事務所は弁護士が10名いますね」
 私  「ええ、そうですね」
 依頼者「先生は1人ですが、大丈夫なのでしょうか?」
 私  「・・・・。」

 

 依頼者から、ときどきある質問です。要するに「相手は弁護士が何人もいるのに、こちらは1名しかいないから、不安だ」ということですね。「多勢に無勢」と言われたこともあります。「相手の弁護士は数で脅すのか。卑怯なやり方だ」と憤慨していた依頼者もいました。

 

 私自身は、相手の弁護士が何人いてもいつものことですので、特に感想はありません。しかし、確かに依頼者が不安になるのは無理もありません。人数というのはわかりやすいですからね。弊所が弁護士1人であることにより依頼者を不安にさせてしまったことは事実ですので、少々心苦しく感じることもあります。

 

 もっとも弁護士が何人いても、よほど大規模の事件でもない限り実働の弁護士は1名のことが多いので、多勢に無勢というわけではありません。担当弁護士の力量がどの程度なのかの方が重要です。依頼者には、「相手の担当弁護士は1名ですので、全員で対応するわけではありませんよ。私1名で足りないとは思わせないよう頑張りますので,今後の私の対応をみていてください」と答えています。

 

 それでも,冒頭のやりとりのようにストレートに言われると、「だったら、弁護士数が多い事務所に依頼すればいいじゃないですか」と返したくなりますが、これを言ったらおしまいですのでやんわりと流してます。・・・いえ、言ってしまうこともあります(苦笑)。

 

 思えば、所属事務所の弁護士数を意識するようになったのは独立してからです。イソ弁時代の事務所は弁護士が複数名いましたので、依頼者から「1人で大丈夫ですか」と言われたことはありません。それが独立して弁護士1人になると、冒頭のようなやりとりが発生します。独立して間もない頃は、「早くイソ弁を入れて人数を増やした方がいいかな」と思ったこともありました。

 
 しかし実際には、数だけ増やせばいいというものではありません。ある程度の経験がある弁護士ならともかく、新人弁護士ですと戦力になるまで時間がかかるため、指導にエネルギーを割かなければなりません。イソ弁ですと給料を支払う必要がありますので、育つまでは経営的にも負担があります。

 

 独立して色々経験するうちに、最近は私の感じ方が変わってきたことに気づきました。「相手は弁護士複数事務所か。ボス弁イソ弁タイプの事務所だったら、人件費はどの程度だろう。弁護士就職難の時代にイソ弁を迎えているボス弁は,たいしたものだな・・・」。

 

 1人は自由気ままでいいのですが、何度かこのコラムで書きましたとおり、司法修習生からリクルート活動を受けるたびにお断りするのは、本当に申し訳なく感じます。もうしばらく1人を満喫しますが、近い将来イソ弁を迎えられるよう頑張ります。決して「多勢に無勢」と言われるからではありません(笑)。



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