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 〈地方住民の潜在的意識〉

 地方住民の多くは、法律や裁判に関する仕事をするのが、地方弁護士の仕事と思い込んでいて、それらに関する問題には、地方弁護士と相談しなければならないという認識を持っているが、裁判や法律に関係のない問題は、地方弁護士に相談しても断られると思い込んでいるように思える。また地方弁護士には、そういう能力がないと思っている地方住民が多いと思う。

 裁判や法律に関係のない問題は、地方弁護士に相談するのはお門違いだと思っているようにも思える。さらには、地方住民は、地方弁護士が裁判や法律に関すること以外は知らないと思い込んでいる人も多い。地方弁護士は、法律や裁判のことしか知らない専門馬鹿だと思われている面もある。

 しかし地方住民の中には、日常生活の中で発生する悩み事のうち、健康問題以外の問題は、地方弁護士に相談に乘ってもらいたいという、潜在的な意識を持っている人もいる気がしてならない。はっきり意識はしていないが、心の奥底には日常生活の中で発生している悩み事で、直接は裁判や法律に関係はない問題であっても、弁護士に相談したいという思いを持っているように見える人が少なくない気がする。ただ、地方弁護士はそういう仕事はしていないとか、そういう能力はない、と思い込んでいる地方住民が多いことは間違いない。

 地方弁護士生活を重ね、地方住民の相談に乘る時は、クライアントの求めに応じて、裁判や法律に関す問題の話をまず先にするが、時間があればそれに止めないで、世間話や身の上話をしながら、裁判や法律に関する問題以外の悩み事に関する話に及ぶことがある。

 ほとんどの人は、相談の目的である裁判や法律に関する問題以外にも悩み事を抱えていて、こちらからそのような話に及ぶと、もっとその話も聞いてほしいと積極的に話し込んでくる。直接の相談事以上に、こちらの話に熱が入ることも少なくない。法律や裁判の話と違い、立場が同じで目線が対等となり、互いに打ち解け、楽しい時間となる。

 このような経験を積み、地方住民は地方弁護士に大して、裁判や法律に関すること以外の悩み事も相談したいという潜在意識を持っているのではないか、という印象を強くしている。

 地方住民は、はっきり自覚するには至っていないが、心の奥底で日常生活の中で絶えず発生している悩み事を地方弁護士に相談したいという潜在的意識がある。その潜在的意識を呼び覚ましてやれば、地方住民は地方弁護士に対し、日常生活から絶えず発生している悩み事を、裁判や法律に関係しない問題であっても相談し、解決してほしいと求めるようになるのではないかという気がする。


 〈日常生活で絶えず発生している悩み事の相談〉

 地方住民は、地方弁護士が地方住民の日常生活の中で発生する悩み事で、裁判や法律に関する問題でなくても相談に応じてくれて、解決案を出してくれるということが分かれば、地方住民は裁判や法律に関する問題でなくても、地方弁護士に頼ることになる。

 地方住民は地方弁護士に対して、日常生活の中で発生する悩み事全般に関して、その知識と知恵を提供してくれることを潜在的に求めている。それは相談に来るクライアントとの、依頼事件とは離れた雑談ともいえる話の中で感じることが多い。

 地方弁護士は、地方住民のそのような潜在意識を目覚めさせ、地方住民の日常生活で発生する悩み事を解決してやることも地方弁護士の仕事とすれば、それ相応の報酬が貰え、商売も繁盛する気がする。地方弁護士は地方住民の、この潜在的需要を開拓すべきではなかろうか。

 そうすることで、地方弁護士の役割と在り方は、商売面においても、社会的使命面においても、向上するものと確信する。地方弁護士は、地方住民が地方弁護士に知恵を求めていることを認識し、その求めに応じなければならない。

 地方弁護士が地方住民にとって日常的に必要不可欠な存在となるためには、法律問題や裁判事件という地方住民にとって非日常と思える出来事に止まらないで、日常生活の中で絶えず発生している悩み事の相談に乘ってやらなければならない。相談に乘ってやれる存在とならなければならない。

 地方住民は、地方弁護士に法律問題や裁判事件に限らないで、日常生活の中で絶えず発生している悩み事の相談に乘ってもらいたいと潜在的には思っている。地方住民は、地方弁護士に広く生きる上での知恵を求めている。地方弁護士は、地方住民が地方弁護士に日常生活の中で日常的に発生する悩み事の相談相手になってほしい、と思っていることを認識したい。 

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵で統合を――』から一部抜粋)


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~27巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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