〈国際救助隊にすべき自衛隊〉
私は、「自衛隊の組織・内容を変えて、国際救助隊とすべきである」との考えを提案します。自衛隊を国際救助隊とし、その内容を180度変えて残すという方法です。向きをぐるりと反対に変えるのです。
国防軍は「戦力」ですから、「人殺しと破壊」が目的です。国際救助隊は「救助組織」ですから、「人を救い、助ける」ものです。国防軍と国際救助隊は、全く真逆な目的を持つ存在です。
ですが、「殺すこと」と「救うこと」、「破壊すること」と「造ること」は、案外と共通する面が少なくありません。殺す道具は、救う道具にも代われるのです。壊す道具は、造る道具にも代われるのです。立っている位置は同じです。向きを全く逆にするのです。前に向いていたものを、ぐるりと後ろに向きを変えるのです。
戦争目的で開発された道具でも、戦争から離れた場所で活用されているものが多くあることは皆様もご承知の通りです。現代の重機などは、兵器開発の中から生まれたものも少なくありません。戦車と重機は、よく似ています。ヘリコプターは戦争でも使われますが、人命救助にも使われます。原発は、原爆の開発から生まれたものです。
慢性腎不全の治療方法である人工透析療法は、朝鮮戦争の時に傷を負った兵士の命を救うために開発されたという話を、私に腎不全の食事療法を指導して下さった昭和大学藤が丘病院客員教授・出浦照國先生から聞いたことがあります。その人工透析療法のお陰で、今や多くの末期腎不全患者の命が救われています。私はその恩恵を受けました。
破壊兵器である戦力は、人命を奪う道具から、人命を救う救助道具に容易に代われるのです。向きを変えればいいだけです。ジェット戦闘機、ヘリコプター、軍艦、戦車などは、少し手を加えれば強力な救助用機器や土壌、地質等の改良機械などに化けさせることができるのです。
これまでも、戦力開発がどれほど科学の進歩を促進させたかわかりません。戦力開発にかける努力を、救助のために使ってほしいのです。自衛隊を国際救助隊に変えることは、兵器開発科学を破壊目的から生産目的に変える、一大契機になるものと確信します。目的は真逆ですが、やることは同じです。
〈世界中で役立つ存在になる〉
自衛隊がこれまでも国内において災害時に救助活動に当たってきたことは、私たち国民もよく知っています。その救助能力は、国内においては他のどの集団と比べても、突出した能力を有していることは誰もが認めるところです。阪神・淡路大震災、東日本大震災、三陸沿岸巨大津波における自衛隊の救助活動は、目を見張るものがありました。
国内において自衛隊が災害救助活動で果たしてきた役割は、「自衛隊は、憲法違反の存在だ」と主張している私でも、高く評価しています。ほとんどの国民が、同じ気持ちだと思います。三陸沿岸部の子供たちの中で、東日本大震災・三陸沿岸巨大津波後、「大きくなったら自衛隊員になりだい」と言う子が多くいるという話が、地元紙・三陸新報に掲載されていました。子どもたちがなりたいのは、戦争をする自衛隊ではなく、災害救助活動をする自衛隊であることは間違いないと思います。
自衛隊の救助能力は、国内において突出しているというだけではなく、世界中を見ても他に類がないほど優れた能力を持っていると思います。
この自衛隊の持っている救助能力を、自衛隊を国際救助隊に変えることによって、さらに特化し、国内に止まらず世界中で活動できるようにすれば、他に類がないほど世界に貢献できる存在になることは間違いありません。今、現に存在している自衛隊を、憲法違反の存在から国際救助隊として合憲の存在とし、しかも世界中から望まれる存在とし、かつて地球上に存在しなかった新しい形の組織にするために、「自衛隊を国際救助隊に改める」という案を、私は提案したいのです。
前記の通り、自衛隊員は現在約22万人もいるとのことです。これだけの人数をそろえた救助隊は、世界中どこにもないと思います。人数が多いというだけではありません。自衛隊員の能力は、極めて高いと思います。
その技術力、統率力、組織力は、高いレベルにあります。のみならず、個々の自衛隊員は知的能力も学力も高く、モラルも高く、非常に訓練されていて、極めて高いレベルにあると思います。自衛隊の救助隊としての人的能力は、世界の中でも大変優れていることは間違いありません。
物的能力も、自衛隊は救助隊としては他に類がないほど優れていると思います。現在保有しているジェット戦闘機、軍艦、戦車、迎撃ミサイルなどの超最新式の技術に少し手を加え、方向を変え、救助機器に振り向ければ、この先どれほど優秀な救助機器が開発されるかしれません。
最新鋭ステルス戦闘機一機の購入予算は約150億円とのことですから、これを救助機器の開発に充てただけでも、どれほど素晴らしい救助機器が開発できるだろうかと、想像しただけでワクワクしてきます。
自衛隊を国際救助隊として、その人的・物的能力を活用し、自衛隊にかかる予算を国際救助隊に振り向けば、国際救助隊は、世界中で多くの人々を救うであろうことは間違いありません。
現在、地球上には救助を求めている人が数限りなくいます。天災は、休む暇なく発生し続けています。ほとんど毎日のように、地球上のどこかで天災は発生しています。天災によって被害を受けた人が、救助を求めていることは言うまでもありません。
戦争は、いつでも地球上のどこかで行われています。1日として、地球上に全く戦争がないという日はないのかもしれません。その戦争によって被害を受けている人は、毎日どこかにいるのです。シリア内戦による難民は約510万人となっています(2017年6月、国連人道問題調整事務所発表)。難民となっている人は、救助を求めています。
砂漠化によって、水や緑を求めている人も多くいます。井戸がなく、泥水のような不衛生な水を飲んでいる人もいます。救助を必要としている人は、世界中にいつでも数限りなくいるのです。
地球温暖化やPM2.5 (微小粒子状物質)などの大気汚染、チェルノブイリや福島の原発事故による放射能汚染など、この地球上には、そして世界人類には、世界中の知恵と技術と人力を結集しなければ解決できない問題も少なくありません。そして、現在それらの問題は先送りにできない、緊急を要する状況にあります。今の地球には、人類には、のんびりしている余裕はないのです。
自衛隊を国際救助隊に変えれば、これら救助を待っている人々のために、地球のために、すぐに役立つのです。のみならず、国際救助隊の能力があれば、単に発生した災害の救助だけに止まらず、これから発生することが予想される災害の予防までできると思います。
国際救助隊は、災害救助活動に限らず、防災活動もできるはずです。防災面における活躍も期待できる国際救助隊の必要性は極めて高いと思います。
自衛隊を国際救助隊に変えて、地球の隅々まで出向き、災害救助活動と防災活動に従事してもらうことこそ、安倍政権が使っている偽「積極的平和活動」と異なる、本当の「積極的平和活動」だと確信します。
(拙著「新・憲法の心 第5巻 戦争の放棄(その5)」から一部抜粋)
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