〈地方住民の人生の道案内人〉
80歳記念本「地方弁護士の役割と在り方(第1巻)――地方弁護士の商売」では、「地方弁護士は、喧嘩犬から盲導犬にならなければならない」と述べた。法廷で依頼者の代理人となって、相手と闘ってカネを稼ぐだけでは、地方弁護士の商売は行き詰まる。地方弁護士は、地方住民がこの世を生きていく上での進むべき先に曲がり角や、段差や、障害物などがあることを教え、導くことを仕事としなければならない、と述べた。
そこでは、地方弁護士の商売という視点で、地方弁護士は地方住民の迷いや悩みや不安を地方住民と一緒に解決してやって、それに見合う報酬を貰うという商売を目指すべきだ、と述べた。
そうすることによって、理屈ばかりに走り、真の紛争解決になっていないという批判が多い民事裁判と地方弁護士から離れつつある市民に対し、地方弁護士の必要性を再確認してもらえれば、地方弁護士は地方住民にとって、必要不可欠な存在と認識してもらうことができるのではないか、述べた。
地方弁護士が商売として繁盛するためには、地方弁護士が地方住民に、これまでのように必要悪とも思える存在に止まっていないで、必要不可欠な存在にならなければならないのではないか、という思いを述べた。使役犬(ワーキングドッグ)に例え、地方弁護士は、「喧嘩犬から盲導犬へ」と述べた。地方弁護士は商売を繁盛させるためには、法廷で裁判という争いの代理人という喧嘩犬的存在から、地方住民の生活全般に関し、指導するという盲導犬的存在にならなければならない、と述べた。
盲導犬は、盲人の道案内ができるように訓練された犬で、目の不自由な人の行く手、つまりこれから進んで行く先にある曲がり角や段差や障害物などを知らせ、間違いがないように道案内する役割を担っている。盲人にとっては有り難い存在であり、必要不可欠な存在と言える。
地方住民を盲人の如く言うことには異論もあろうが、人生の行く手に何があるかなど誰にも分からない。行く手が見えないという意味では、人間誰でもそうで、地方住民だって同じである。そういう意味では、地方住民だって盲人と同じだ。地方住民だって盲導犬に道案内してもらいたいことは、普段から発生する。
地方住民にも、人生の行く手を案内してくれる道案内人が必要だ。地方住民も日常生活での悩みは絶えず発生し、道案内を必要と感じる問題は、いつでも発生し続けている。それが生きるということである。地方住民が道案内を必要としている時に、人生の道案内をすることも地方弁護士の役割とし、それをやってカネを稼ぐことを地方弁護士の商売にしたい、と第1巻では述べた。
自分個人としては、法律の条文や判例に関する知識だけを切り売りするような弁護士ではなく、地方住民の悩みを聞き、地方住民と一緒に悩み、泣き、笑う弁護士となりたい、という思いがあることを述べた。老馬の智で地方住民を案内し、相応のサービス料を地方住民より貰って、商売にしたいという知識を売る商売から、知恵を売る商売に切り替えたいと述べた。
〈社会的使命としてこそ重要な盲導犬的役割〉
人生の先のことは分からない。不安とは、「なりゆき・結果・様子などがはっきり分からす、悪いなりゆき・結果も予想されて心が落ち着かないこと」(角川必携国語辞典)であるから、先のことばかり考えすぎないで、今の一瞬を大事にしなければならないことを数多く体験した。その体験から得た知恵を「人生、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」という考え方として、地方住民に説き広めている。思った以上に反響は大きく、「その言葉で、不安が解消した」と言ってくれる人も少なくない。
法廷での紛争の一方当事者の代理人となって闘ってカネを稼ぐという古典的と言うか、これまでの地方弁護士に対する喧嘩犬とも思えるイメージを変え、地方住民と一緒に歩く盲導犬とも思える弁護士像を打ち立てて、新しい職業分野を開拓すべきである、と述べた。それを、「地方弁護士は喧嘩犬から盲導犬へ」というキャッチフレーズにした。第1巻は、地方弁護士の商売面に着目し、地方弁護士は喧嘩犬に止まらないで、盲導犬にならなければならない、という思いを述べた。
しかし、この地方弁護士の盲導犬的役割は、地方弁護士の商売面においてより、地方弁護士の社会的使命という面においてこそ重要である。地方弁護士は、生き方に悩む地方住民を、その知恵で導くという社会的使命があるという認識を持って、盲導犬的役割を果たしたいと考えている。
この考え方を弁護士会や他の弁護士に強要するつもりなど全くない。私個人の地方弁護士の社会的使命は、こうありたいという思いである。そもそもここでは、地方弁護士の社会的使命は、自分がこのように果たしたいという個人の夢を述べているものであり、他の弁護士がどのように考えるべきかなどというつもりは全くない。
地方弁護士は、国や地方などが国民や市民の人命や人権を侵害することになりかねないと思えるような、人命と人権にとっての曲がり角や段差や障害物となるような行動をしようとしている者がいれば、番犬として吠え、それを阻止することが社会的使命である。さらに、人命と人権が侵害されることのないように盲導犬として道案内し、地方住民の人命と人権を守ってやるという役割があると、自分は思い込んでいるということを述べたい。
他の弁護士が、弁護士の社会的使命は、それとは別にあるというのであれば聞いてみたいが、あまり聞く機会がない。そもそもそんなことを語る地方弁護士は少ない。多くの地方弁護士の考え方を知りたい。こんなことを言う地方弁護士が続くことを期待し、こんな原稿を書いている。たまには、こういう無駄とも思える話を交換してみたい。そういうきっかけになってほしいという思いもあって書いている。
(拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)
「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~26巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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