司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 

 〈地方弁護士に降りかかる現実〉

 前記日弁連会長候補者は、選挙公報の中で「司法改革の誤りを正す!」として、「弁護士は激増する、法的需要は拡大しない」「弁護士の取り組みが正当に評価されていない民事法律扶助と国選弁護」「このままじゃ、やっていられない!今こそ声を上げよう!」と大文字、太字でアピールした上、「ストップ大量増員政策!」を掲げている。

 司法試験合格者1500人を続けると、「弁護士一人当りの国民数が2000年7411人であったものが、2021年は2895人、2047年には1632人」となるというデータを示している。このままの状態で進むと、地方弁護士業界の商売面は、もっと厳しい競争世界になるということを語っている。

 私が司法試験に合格した50数年前は、約3万人の受験者に対し、合格者は約500人という狭き門だった。52年前に仙台弁護士会に登録した時の同会の会員数は80名くらいだった。令和3(2021)年現在の同会の会員数は481名、約6倍となっている。それだけで、この52年間で仙台弁護士会という団体が、新たに5つもできた計算になる。

 これは仙台弁護士会に限ったことではない。他の地方でも同じような傾向はある。それに見合う事件数が増えなければ、地方弁護士の商売が厳しくなるのは当然だ。

 前記候補者は、弁護士の所得について、「日弁連の調査によれば、弁護士の所得の中央値(その数字より少ない弁護士が半数いるということ)は、2006年調査の1200万円から、2014年調査の600万円、2018年調査の650万円、2020年調査の700万円と激減したままでか。今後約25年の間に弁護士1人当りの国民数が半減するのですから、25年後の弁護士の所得の中央値は300万円台になるとも予測されます」と述べている。

 これは単純計算ではそうなるとの指摘だ。一つの見方に過ぎないが、今のような状態がこのまま続けば、そういうことも起こり得る。

 同候補者はさらに、「弁護士は自営業者が多いところ、この所得で家庭を守り、子供を育て、老後の準備もして、場合によっては奨学金や修習貸与金を返還し、生活していけるでしょうか。そうした生活の中で、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するという弁護士の使命を全うできるでしょうか弁護士の激増政策を見直し、弁護士人口増を緩和するため、司法試験合格者数を速やかに年間1000人以下にするべきです」と述べている。


 〈商売として魅力ある仕事でなくなる〉

 このような考え方に対しては異論もあろうが、現在の弁護士の商売面の一面を語っていることは否定できず、同じような考え方を持つ地方弁護士も少なくないと思う。

 この候補者の挙げている弁護士の所得デ―タでは、弁護士業の商売という面では、魅力的な仕事とは言えなくなってきている。もし、所得が300万円などということになったら、弁護士などをするよりも、公務員でも一般企業でもサラリーマンになった方が経済的に恵まれることになる。これでは苦労して弁護士資格を取得した意味がなくなる。

 このままでは地方弁護士の商売という面は前途は暗い。将来に希望が持てず、気持ちが沈んでしまう。子や孫に地方弁護士になることを勧める気にはなれない。地方弁護士は、商売面からは魅力のある仕事とは言えなくなる。

 この候補者は、「弁護士がその使命を全うできるように弁護士の生活を守る」として、「1.司法試験合格者数を年間1000人以下に(弁護士人口の緩和)、2,民事法律扶助報酬の引き上げと弁護士の負担軽減、3.国選弁護人の報酬の引き上げと負担の軽減、4.会費軽減(支払の見直し)、5.弁護士の就労環境の改善」を訴えている。

 このような主張に対し、反対する弁護士もおり、この考え方が全面的に正しいかどうかは定かでないが、この候補者の主張にも耳を傾けならない点も少なくない。

 この主張は、日弁連会長候補者として、日弁連はどうあるべきかという視点の主張であることは間違いない。日弁連会長に立候補した理由を述べたのだからそれは当然である。そういう意味では、この主張は個々の弁護士の在り方を述べたものではないが、個々の地方弁護士の商売という面にも深く関わる主張であり、参考にしなければならない。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』から一部抜粋)


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