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 〈「完全戦争放棄」しか安全保障の途はない〉

 平成27(2015)年3月17日の読売新聞の「編集手帳」欄に、物理学者のアルベルト・アインシュタイン(1879-1955)の次の言葉が紹介されています。

 「第3次世界大戦はどう戦われるのでしょうか。私には分かりません。しかし、第4次大戦なら分かります。石と棒を使って戦われることでしょう」

 核兵器が存在する20世紀後半からは、第三次世界大戦となったら人類は滅亡すると言っているのです。福島原発事故は、核の脅威を身近で教えてくれました。核戦争となったらどうなるか、その惨禍は福島原発事故の比ではないことは明らかです。

 同じ日の朝日新聞第1面には、「プーチン氏、核兵器準備も検討」というタイトルで、「ロシアのプーチン大統領は、欧米からの妨害を念頭に、核兵器使用に向けた準備を進めることを検討していた」と述べたことが紹介されています。

 第三次世界大戦となったら、核兵器が使われる危険性が現実のものとなる可能性があることを示したものであり、戦慄を覚えます。

 核兵器が開発された20世紀後半の地球は、戦争という方法では安全は保障されない状況となっているのです。そのことを知ったマッカーサーらは、9条を日本国憲法に掲げ、「完全戦争放棄」しか、安全保障の途がないことを世界に示したのです。

 9条は、自衛戦争まで放棄しているからこそ、世界史的意義があるのです。「9条は、自衛戦争は放棄していない」とする考えには、断固反対し続けます。 私は48年間、田舎で弁護士として生きてきて、そうしなければならないと確信しているのです。法曹の端くれとして、その思いを伝えたいのです。

 「誰かが言ってくれるだろう」「俺如きが出る幕ではない」と思うこともあります。自分よりも適任者は弁護士の中にも大勢います。裁判官。検察官経験者にも、もちろん大勢います。憲法学者はその代表です。

 ですが、私は私として、悔いを残したくないのです。自分の思うところを言っておきたいのです。世間がどう評価しようと、そんなことはどうでもいいのです。ただ、自分の信じるところを言っておきたいのです。のちに再び戦争となり、戦争の惨禍が起こった時に、「だから言ったでしょう」と言いたいのではありません。ただただ、「二度と戦争はさせたくない」のです。子孫のために、人類のために。


 〈憲法改正の限界〉

 弁護士は、国家機関の一員である国会議員、官僚、裁判官とは異なり、国家機関の外にいて、つまり、在野にあって法解釈に携わる立場を与えられています。弁護士は、国と国民という関係の中では、国民を代弁して国の機関に対して言うべきことを言わなければならない立場にあると考えています。

 民主主義は、多数決原理が基本です。その結果、時には勢いに乗った多数派が横暴に走ることがあります。あくまでも例えですが、自民党が選挙で大勝し続け、法律を改正し、さらには憲法の基本原則まで改正しようとします。そのような多数派の横暴に歯止めをかけるものが憲法です。

 たとえ国会議員の多数の賛成を得ても、その上、国民の多数の賛成を得ても変えられない憲法の基本原則があります。そこを変えたら、その憲法とは言えなくなる本質部分です。それは、①国民主権、②基本的人権の保障、そして③平和憲法、即ち「完全戦争放棄」なのです。

 これらの憲法の原則は、憲法改正の限界として多数決を以ても変えられないのです。時の勢いで、多数の賛成を得ても、国民的なムードが盛り上がっても、ここだけは越えることができないという歯止めがあるのです。それが憲法改正の限界なのです。

 それは、一時の国民感情に優先するのです。その部分は。多数決では動かせない「永久不変の原理」なのです。

 日本国憲法は、9条で自衛戦争まで含み「完全戦争放棄」をし、日本は紛争解決の手段として「戦争」という選択肢はないことを、憲法の核心としたのです。この核心部分は、閣議決定などではもちろん、憲法改正でも変えることはできないのです。ここは、多数決原理の限界なのです。卑近な例を引くと、クラス全員の賛成があってもできないことなどいくらでもあります。いちいち例を挙げるまでもありませんが、犠牲者を出すような決議は無効です。全員賛成であっても、やってはならないことがあるのです。

 「9条は、自衛戦争も放棄している」「9条は改正できない」という主張は、法律家の端くれである身としては、生きている限り言い続けていくつもりです。それが、私の志なのです。必ず成し遂げようと、心に決めたことなのです。

 1人でも多くの国民に、そのような9条の真意を知ってほしいのです。多数決原理の限界を知ってほしいのです。数の横暴を阻止してほしいのです。一時の国民感情やムードに流されないようにしてほしいのです。そのことを広めたいというのが、私のライフワークの一つなのです。

 朝日新聞は平成27年3月17日、「自衛隊の海外派遣の制限を緩めたり、他国の軍隊への後方支援をしやすくしたりして。自衛隊の活動を拡大することに賛成か反対かの全国世論調査を実施したところ、男性は賛成44%、反対46%、女性は賛成22%、反対57%、全体では賛成33%、反対52%」という世論調査結果を報じています。

 「反対52%」という点は心強いのですが、「賛成33%」にはがっかりしました。一人でも多くの人に「反対」の意見を表明してほしいのです。

 20世紀後半以降は、地球を守り、子孫を守るには、「自衛戦争を含む完全戦争放棄」だけが、唯一の安全保障の方法であることを認識してほしいのです。そのことを伝え続けることを、法律家の端くれとして生活させて頂いている自分のライフワークの一つとしたいのです。=この項終わり

 (拙著「新・憲法の心 第15巻 戦争の放棄〈その15〉」から一部抜粋 )


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