司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 先日,事務所旅行に行ってきました。

 とはいっても、弊所の事務所旅行ではありません(ただの家族旅行のような状況になってしまいます)。私のボス弁の事務所の旅行であり、毎年開催されています。ボス弁は,独立のため退所した元イソ弁達も事務所旅行に誘ってくださいます。お陰で楽しいひとときを過ごすことができました。

 ボス弁の事務所を離れて約5か月経ちましたが、週に1~2回はボス弁の事務所に顔を出しています。共同受任している事件の打合せに参加したり、後任に引き継いでもらった事件のフォローをしたりしています。

 ボス弁の事務所に寄ると何だか懐かしい感じがします。実家に帰省した気分に似ているかもしれません。新天地で生活の本拠を構えてしまったためもう戻ることはないでしょうが、安らげる実家です。

 多くの独立開業している弁護士と同じように、私がこうして独立開業して弁護士を続けていられるのは、ボス弁のお陰です(もちろん、多くの方のご支援の賜物であることは言うまでもありません)。新人の頃はつまらないミスをしてボス弁に迷惑をかけるということが何度もありました。ミスの度にボス弁から厳しくも熱い指導を受け、そのお陰で弁護士として成長することができました。ボス弁の愛の鞭は厳しかったですが、非常に感謝しております。
 
 ボス弁は、ボス弁のボス(便宜上「祖父弁」と呼ぶことにします。)との関係も非常に良好です。ボス弁は、祖父弁から受けた愛情を、イソ弁であった私にも注いでくれたのだと思います。この業界ならではの良い伝統です。

 しかしながら、この伝統はもう古いのかもしれません。
 
 弁護士激増による就職難により、やむなく即独する弁護士が増えています。就職できても諸事情によりわずかの期間で退職して独立する弁護士(準即独)も増えています。これではボス弁との関係を持ちたくても持ちようがありません。弁護士増員には賛否両論ありますが、少なくとも、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の体制を整えることが必要です。最も有効なOJTは、既存の事務所にイソ弁として入所し経験を積むことです。

 若手の私でも、修習生の方から「先生の事務所ではイソ弁を募集していますか?」と問い合わせを受けることがあります。さすがにまだ独立開業したばかりですので丁重にお断りしているのですが、非常に申し訳ない気持ちになります。

 私自身がイソ弁を迎えていないので偉そうなことは言えないのですが、弁護士増員に賛成する弁護士の方には、弁護士就職難の解消のために尽力してほしいものです。

 私のささやかな目標なのですが、いずれは私もイソ弁を迎え、育て、独立開業を応援したいと考えております。私が、祖父弁・ボス弁から受けた愛情を他の誰かに注ぐことが、祖父弁・ボス弁への恩返しになると思うからです。
 
 弁護士増員の今の時代では時代錯誤になってしまうかもしれませんが、この業界ならではの良い伝統を受け継いでいきたい、そう感じています。



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