司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

   事件解決により終了。弁護士として肩の荷が下り、プレッシャーから解放される瞬間です。依頼者の期待に応えられた場合は、喜びを分かち合います。残念ながらそうでない場合もありますが、事件解決まで依頼者と共に歩むため信頼関係が築けていますので、結果にかかわらず依頼者から感謝のお言葉を頂くことが多いです。

 

   さて、事件が終了すれば委任関係も終了ということになるでしょうから、理論上は、事件が終了すれば弁護士は一切対応しなくてもよいはずです。しかしながら、実際のところはそうではなく、アフターフォローをする弁護士が多いように感じます。

 

   事件の延長線上にあるテーマであれば、弁護士がアフターフォローした方がスムーズに対応できます。仮に弁護士が窓口にならない場合、本人が直接やりとりする結果、対応を誤りトラブルに発展する可能性もあります。

 

   どこまでがアフターフォローの範囲なのか明確な線引きはありませんが、事件の延長線上にあり別途裁判や交渉をするレベルのテーマでなければ、アフターフォローすべきだと感じています。そもそもアフターフォローをする必要性は、弁護士だけでなく、どの業界でも同じだと思います。

 

   私もアフターフォローをします。そして、私が出会った相手方弁護士の多くもアフターフォローをしていました。

 

   あるとき、事件終了後に私の依頼者の親族が、私に確認をしないまま、相手方本人に直接連絡をして要求をしました。事件の延長線上にあるテーマです。相手方弁護士から私に電話があり、私を窓口にした方がよいのか、それとも私の依頼者の親族に直接連絡してもよいのか、問い合わせがありました。つまり、私がアフターフォローをするかどうかの確認をしてきたということです。私は相手方弁護士に対し、私を通さずに依頼者の親族が直接連絡をしてしまったことを謝罪したうえ、私が窓口となって対応しました。

 

   事件が終了していますので、相手方弁護士もアフターフォローをしているということになります。アフターフォローは当然のこととは思いますが、敵ながら天晴れと感じる気持ちのよい対応でした。私も相手方弁護士の気持ちに応えました。相手方弁護士が窓口になってくれたお陰で、事件終了後の問題も無事に解決しました。

 

   もちろん、弁護士がアフターフォローをしない場合もあります。弁護士が辞任あるいは解任された場合です。辞任解任の場合は、依頼者と弁護士の間の信頼関係がなくなっていますので、アフターフォローをできないのは当然です。言いかえると、辞任解任の場合でなければ、大半の弁護士はアフターフォローをしているように感じます。  

 

   しかしながら、ときには、辞任解任でもないのに、事件終了と同時に弁護士が一切窓口にならないということもあります。私はアフターフォローをするのが当然と考えておりますので、驚いてしまいます。弁護士がアフターフォローをしない原因として考えられるのは、以下のような事情でしょうか。

 

   ・単純に弁護士がビジネスライクな対応しかしない。

  ・何らかの事情により弁護士が依頼者と関わりたくないと考えている。

  ・依頼者が弁護士を無視して話をすすめたがる。  

 

 他にも理由はあるかもしれません。原因として共通すると思われるのは、依頼者と弁護士との間に真の信頼関係が築けていないということではないでしょうか。

 

   ある弁護士は「依頼は終わっています。私の人生に、彼(相手方本人)は一切関係がありません。私に連絡しないでほしい」と言いました。アフターフォローの必要性の議論はさておき、弁護士の言い回しに驚きました。いったい依頼者との間に何があったのでしょうか。    別の弁護士は「もう事件は終わったから私は対応しません。しかし、あなたが事情を話したいなら話しなさい」と言いました。窓口になるのかならないのかはっきりしない返答です。相手方弁護士が対応しないということは、相手方本人との委任関係がないということになりますので、事情を話せるわけがありません。自分の依頼者に対する守秘義務に反するからです。不思議な返答でしたが、相手方代理人の本心は「対応はしたくないが、何か問題があるようなので気になる。確認したい」というものだったのかもしれません。

 

   さらに別の弁護士は、当方からのリクエストではなく、相手方側からリクエストしてきたテーマであるにもかかわらず、「後のことは直接(相手方)本人とやりとりしてください。私は旅行に行くので連絡がとれません」と言いました。相手方側からのリクエストで連絡してきたのですから、これは論外です。私は、「旅行中でも携帯から連絡できるはずです。私の携帯番号も教えますので,引き続き対応をお願いします」と答えました。相手方弁護士は多少はアフターフォローをしましたが、すぐに窓口から外れました。その後相手方本人と直接やりとりしたところ、相手方本人は、相手方弁護士がアフターフォローをしないことに疑問を感じているようでした。

 

   皮肉なことですが、アフタ-フォローをしない弁護士に出会うことにより、アフターフォローの必要性を感じます。

   冒頭で述べましたとおり、アフターフォローはどの業界でも当然だと思います。むしろ依頼者との間の信頼関係を密にする弁護士は、他の業界よりもアフターフォローの必要性が高いのではないでしょうか。アフターフォローという当たり前のことを、当たり前のようにできる弁護士であり続けたいです。



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