司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 多くの弁護士の方も同じだと思いますが、法律相談の際、私は結論を明確にいうタイプです。記号で言えば「○(=できる)」「×(=できない)」「△(=やってみないとわからない)」といったところでしょうか。

 

 「○」なら相談者が喜ぶ回答ですので、問題ありません。問題なのは「×」「△」の場合です。相談者は弁護士なら良い解決方法を知っていると思って法律相談を申し込みます。そのため、「×」と答えると相談者をがっかりさせます。「△」は×ではありませんが、○でもありませんので、相談者の望む回答ではありません。

 

 事件方針の見通しとして、○×△を明確にするのは必要です。相談者を喜ばせるために、×や△であるのに「○」と嘘を言っても、後で結果を出せなかったときにトラブルになるのは明らかですからね。

 

 それでも、×や△を伝えるタイミングは、本当に難しいと感じています。

 

 法律相談を実施する前に、まずは電話で日程調整をすることが多いです。この電話の際、予めどのような相談か概要を聴き取ります。その際に明らかに「×」の相談もあります。よくある例として、「交通事故の被害者側。後遺障害非該当や14級のケースで、症状固定後の治療費を相手損保に請求したい」という相談です。

 

 交通事故であれば、少なくとも慰謝料を増額できることが多いので(=○)、法律相談を行うメリットはあります。しかしながら、非該当や14級レベルで症状固定後の治療費を請求するのは・・・・さすがに「×」と言うしかありません。

 

 迷うのはいつ×と伝えるかです。

 

 期待させると申し訳ないので電話の際に予め「×」と答えると、「・・・そうですか。ちょっと考えさせてください」と電話を切られてしまいます。慰謝料については「○」なのですが、伝える機会すらなくなってしまいます。「・・・まだ伝えたいことがあるのに。最初から言い過ぎてしまった」と反省します。

 

 その反動で、電話では何も言わずに、相談者に来所していただいて法律相談を実施することもあります。「×」と答えると、相談者は当然がっかりはするのですが、電話と違い顔を合わせて話をするので、「×」の回答を理解してくれることが多いように感じます。

 

 それでもときには、相談者から「無理なら無理と最初に言ってほしかった。わざわざ予定を空けて時間を割いた意味がない」と叱られる事もあります。結局、慰謝料については「○」であることを説明できないまま相談が終了してしまいます。相談者も私も、気分は良くありませんし、時間をロスしますので、「最初から電話で×と伝えておけばよかったな。悪いことをした」と、また別の形で反省してしまいます。

 

 「×」を「×」と答えても理解してもらえないなら、それはそれで仕方がないと思ってはいます。できることがあるとしたら、言葉を選ぶことくらいです。

 

 それでも相談者の力になりたいと思ってアドバイスしているので、理解してもらえないと少々落ち込みます。そのようなことを繰り返しているうちに、いつの間にか立ち直りが早くなってきました。もしかしたら、話し方やタイミングも上達しているかもしれません。何事も修行ですので、前向きに考えますね。



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