司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

■金丸哲也
テレビ東京「日経スペシャル ガイアの夜明け」でも取り上げられた介護ヘルパーによる窃盗事件の被害者家族として、刑事裁判と、「本人訴訟」による民事裁判に臨んだ市民の体験記。一市民の目に映った司法の現実とは–。
ニューヨーク州立ラガーディアコミュ二ティーカレッジ卒。コマーシしャルフォト専攻。ニューヨークでは、パンクミュージシャンとして10年間活動。ヨーロッパを中心に、その他各国からCDリリース。そのかたわらに、フォトグラファーとして活動。数多くのアルバムジャケット作成。現在、都内広告代理店勤務。
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  「ガイアの夜明け」放送後から、1ヵ月が過ぎた頃だろうか、姉から緊迫した様子で連絡がきた。手短に事情を聞くと、地元に住むおばさんから、今、関わっている「民事裁判の件で用がある」と言われ、母方の本家に呼び出し出しがあったという。

 一体、なぜ親戚が、この件で用があるのか。耳を疑った。彼女らは、姉にこう告げたという。「もう、裁判はやめなさい。裁判というのは、長くかかるし、ロクなことはないよ」。さらに、「両親たちは、町にはお世話になっているでしょ?だから、町には逆らわない方がいいよ」とまで言われたとのことだった。
まるでこちらが悪いような感じで、直面している事実を説明しても、先方の反応は鈍かったという。

 姉自身も、「これでは、あべこべね。どっちが被害者なんだろう」と、嘆いていた。その土地に住む苦労なのか、親戚付き合いもあるため、顔色を伺いながら、強くは反論できずじまいだったのだ。

 被害者である我が家が、親戚からこのような形で、なぜ非難を浴びないといけないのか?そんな腑に落ちない状況を、ニューヨークの兄にメールで報告した。兄も同じ意見だった。

 お門違いの考え方をもった親戚のおばさんたちに、真実を理解してもらうには、少々、摩擦が起こるかもしれない。だが、誠意を込めて話せば分かってもらえると信じ、最終的には、一軒一軒、時間をかけ、詳細を説明することにした。

 彼らは、私たちに「窃盗額が15万円なのに、なぜ損害賠償額が膨れ上がっているのか」と、聞いてきた。細かい内訳も説明し、最終的には、プロの弁護士と話し合い、その観点から損害賠償額等については決めたことだとした。また、報道では、盗まれた金は15万円と記載されていたが、実際は、700~800万円相当はあり、私が刑事裁判中、直接担当検事に会い、聞いたこと、話をしたことを添えながら、事細かくいきさつを伝えた。

 これまでの我々の苦労が伝わったのか、一応理解してくれた様子だった。それ以来、起訴の取り下げを求める声は、少なくとも私の耳には入らなくなった。この状況を見かね、ニューヨークの兄も、各軒に連絡を入れてくれていた。のちに聞いた話だが、県庁勤めのおじさんとは、激口論を交わしたという。

 それにしても、この件で親戚一同がなぜ騒ぐか、理由がどこにも見当たらなかった。直感ながら、「何かおかしいぞ」と、臭ってきた。これは、もしかしたら、だれかの入れ知恵で、親戚一同が、悪いのは我が家だと「洗脳」されたのではないかと推測した。

 この状況を究明するため、もう一度、姉に話を深く掘り下げて聞いた。すると、我が家の親戚に、この話を持ちこんだ人物の名が判明した。一人は農業関係のI氏、もう一人は漁業関係のK氏。両者とも町では、気性が激しいと噂の町会議員さんだった。町会議員が、この事件に絡んでいたことが判明したのだ。これで、事件発覚後から、これで3人目だった。

 もう代理人を立て、裁判は始まっているというに、なぜ、彼らが、このような形で動く必要があるのだろうか。この不自然極まる状況に、隠された真相があるのは明らかだと感じとった私は、この動きの裏に潜む「陰謀」を探るため、姉から今回我が家の親戚に接触してきた二人の議員の連絡先を聞き、思い切って直接彼らに接触してみることにした。

 そんな中、地元商店街などで、事件を取り上げた「ガイアの夜明け」が話題になっていた。番組を見た他県の業者から、「大変なことになっていますね」といわれ、地元商店街の店主が驚いていたり、都会に行き働きにいっている孫から、「大事件が起きたんだ」と連絡がきた、という話が伝わってきた。番組を見た人にはある程度、事件の「真相」は理解できたと思うが、いきなりそんなことを伝え聞いた地元の人間たちは、何が起こっているのか皆目理解できなかっただろう。それは、まるで「おとぎの国の話」みたいに。

 この町では、介護ヘルパー窃盗15万円逮捕以来、事件を火消するために、だれかが情報を操作している。また、政治的圧力を使い、身内を巻き込み、この民事裁判を制しようとしている。そんな周りを固めた威圧攻撃で、こちらが参るとでも思っていたのであろうか。「降伏は絶対しない」。そんな強い決意を秘め、私は二人の町会議員にコンタクトをとった。



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