司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 私は、司法試験の受験中、一時、司法書士事務所で補助者の仕事をしていたことがある。もう30年近く前のことだ。その事務所は、司法書士はボス1人だったが、補助者は、合格者を含めて4人もいたので、比較的、規模の大きな事務所だったのだろう。実に忙しい事務所で、補助者は皆、夜遅くまで残業をしており、退職していく人も多かった(私もその一人だ)。

 
 当時のボスは遣り手で、多くの銀行や不動産業者を抱え、溢れるばかりの案件を引き受けて、実に羽振りがよかった。元々優秀な方で、その後、ロースクールの教授もされたようだから、実力で稼いでいたのは間違いないが、今振り返っても、司法書士は、うまくやると、弁護士よりもずいぶん儲かるのだなと感心してしまう。

 

 弁護士は、,基本的に、職員に仕事を任せてしまうということはできないのが原則だから、司法書士のように、補助者を手足として使えるのは、ビジネスとして、やはりうらやましい面が多い。たまに私自身、不動産取引の立ち会いをしたりするが、そういうときに補助者が来ていると、こちらも事務員に任せられれば楽なのだが、と思わざるを得ないのだ。

 
 とはいえ、今日、こうした昔ながらの司法書士事務所は、ごく少数派になっている。都会では、登記で喰っている事務所を探す方が難しいのが現状だ。今や、多くの司法書士は、過払い、債務整理、敷金など、登記とはかけ離れた世界で、弁護士と仕事を取り合っている訳で、時代の変化を感じざるを得ない。裁判業務は、さすがに司法書士も人任せにする訳にはいかないから、登記のように数をこなして稼ぐこともできない。弁護士も大変だが、司法書士はもっと大変だろう。

 
 今の時勢なら、何とかして、再び登記を専門にやっていくという司法書士が増えてきてもいいのかもしれない。銀行など、顧客を掴むまでは大変だろうが、多くの司法書士が過払いに走っている今なら、逆に狙い目だったりしないのだろうか。もっとも、登記業務に参入余地ありとみれば、むしろ、今度は弁護士が登記業務に割って入るということもあり得ることなのかもしれない。

 

 かくして、司法書士と弁護士のパイの食い合いは続く。やはり、棲み分けられていた昔の方が、どちらの側にもよき時代だったのであろう。



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