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 〈弁護士、裁判官も認識を改めるべき〉

 法律より、相続に関する皆が納得し、幸せになるような気持ちの歩み寄りが必要です。時代が変わり、世の中が変われば、人の気持ちも変わります。124年前の法律では、今の世の中に合わないこともあるのです。

 前記の通り、「80-60時代」という言葉があります。現在の相続は、被相続人が80代、相続人が60代となっているという意味のようです。そう遠くならないうちに、「90-70時代」が来そうです。「100-80時代」も来るかも分かりません。

 民法の相続法の規定は、改正は何度もありましたが、124年前に施行されたものです。当時の被相続人は40代、相続人は10代という時代。「40-10時代」ということなります。「40-10時代」は遺産は残された妻や子どもの生活費に不可欠だったことは理解できますし、遺留分もそういう意味で理解できます。

 ですが、被相続人が80代で、相続人が60代となっていたら、被相続人の残した財産をあてにしなければならなんい子どもなどいません。残された子どものための遺留分などの制度は不要です。

 長男に家業を継いでもらい、長男に妻の面倒を見てもらいたいという父の「遺産は全部長男に相続させる」という遺言書に全面的に従うべきです。60を超えた子どもの生活費に80を超えた親が残した財産を充当しなければならない必要性などないのです。

 「80-60時代」になっているのに、「40-10時代」の法律を盾に取り、法定相続分の半分を返せという二男の主張を勧める弁護士も、返せという判決を出す裁判官も時代錯誤をしているように思えてならないのです。

 そのような法律があるからといっても、それを主張することが適切と思えないケースでは、弁護士はそれを勧めるべきではありません。裁判官も権利濫用などの理論を使って、そのような請求は棄却すべきです。調停や和解ならなるべくそのような請求は控え、円満解決するように指導すべきです。

 「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに、楽しみ尽くすのみ」という「いなべんの哲学」からすれば、相続は人生を楽しむためのアイテムです。楽しく生きるということは、法律によって実現できるものではなく、人それぞれの気持ちによって実現できるのです。

 弁護士や裁判官は、単に法律の条文や判例の知識を切り売りするだけでなく、関係者に楽しく生きてもらうように指導すべきだと確信します。


 〈法律に頼らず気持ちの歩み寄りで解決を〉

 「楽しく生きるための相続」を指導するためには、条文や判例を適用するだけではなく、法律や裁判を使うべきかどうか、使えとしたらどのように活用するべきかを、アドバイスできるようになりたいものです。そのためには、弁護士や裁判官も条文や判例などの法律知識だけではなく、生き方や哲学についても、勉強することが不可欠です。

 法律の専門家ではない一般大衆は、付け焼き的な法律知識などに振り回されないで、これまで生きてきた日常生活の中で培った倫理や道理や常識を秤にして、どのように相続問題を解決したらよいかを考えるべきです。いつの世でも変わらない人間の情愛を大事にしたいものです。

 民法は124年前に施行されたものです。時代に合わないものもあります。それに気付き、それを指摘し、その法律の改正やその法律の適用を回避する方法を示してやることも、弁護士や裁判官の責任と考えていますが、いかがでしょうか。

 現行憲法は、国民主権主義です。最終的には、国民の判断が大事です。ですから、このことは多くの国民に知ってほしいのです。国民が利口にならないと、民主主義は衆愚制度となりかねません。

 古いものがすべて悪いというつもりはありませんが、「40-10時代」の124年前に施行された相続に関する民法の規定には、見直しが必要な部分がありくす。骨肉相食む相続争いの原因となる遺留分制度は見直すべきです。

 遺留分制度の廃止などの相続に関する法律の既定の改正なども必要と思いますが、それ以上に大事なことは、相続問題は、法律で解決しないで気持ちで解決すべきだという認識です。古い法律であろうと、相続問題は法律で解決しないで、気持ちで解決することを勧めます。

 気持ちで解決すれば、つまり法律はあてにしなければ、古い法律のままでも関係がないということになります。124年前の法律だってかまわないのです。法律に頼らなければいいのです。相続問題は、気持ちの歩み寄りで決めればいいのです。相続に関する民法の規定は、任意規定です。法律に任せないで、自分たちの気持ちで決めれば、古い法律でも苦にはならないのです。

 (拙著「いなべんの哲学 第6巻 」から一部抜粋)


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