〈「大衆法律学」シリーズの立ち上げ〉
日本国憲法を創った動機と憲法の前文と憲法9条の心を大衆に分かりやすく、興味を持って聞いてもらったり、読んでもらったりするためにはどうしたらよいかと考え、立ち上げたのが、「田舎弁護士の大衆法律学シリーズ」での発行ある。
同シリーズは、既に40冊発行した。そのうち憲法9条の「戦争放棄」シリーズは25冊となっている。塵も積もれば山となるで、内容はともかく、戦争の放棄に関する大衆向けの本を数多く発刊できたことは、いくらか地方弁護士の社会的使命を果たしてきたのではないかと自負している。
憲法改正の動機、憲法の前文、憲法9条を説き広め、憲法9条改定阻止を国民に、地方住民に勧めることは、地方弁護士の社会的使命だと確信している。少なくとも、地方弁護士になったわが身としては、憲法改正の動機と、憲法前文と、憲法9条の心を一般大衆に分かりやすく説き広め、憲法9条改定阻止を勧めることは弁護士法第1条の規定が有る無しに関わらず、地方弁護士である自分の社会的使命であり、役割と確信している。これからも憲法の伝道師の役割は果たし続けたい。
法は、国家機関などの権力を持つ者のためにあるものではなく、国民のためにあるものだ。法というルールに従ってプレーするのは国民である。社会の大部を占めるごく普通の人々である。
法は、プレーヤーである大衆に分かりやすいものでなければならない。そういう思いから「田舎弁護士の大衆法律学」はスタートした。特に国民の生命と人権を守る根本法である憲法は、国民一人一人に、大衆の隅々までに浸透させなければならない。そのためには憲法を一般大衆に分かりやすく説き広め、それを守るように勧めなければならない。
その役割は、大衆の中で、大衆の一人として、大衆と一緒に、普段から生活している地方弁護士にピッタリである。そんな思いでこれまで憲法の講演をし、平成18(2006)年11月30日に4「田舎弁護士の大衆法律学――憲法の心」の発刊を皮切りに憲法の本を多数発行した。
「田舎弁護士の大衆法律学」の憲法の中でも「戦争放棄」シリーズは、数の上でも内容の上でも最も力を入れて発行してきた。日本国憲法の核心は、戦争放棄の規定にあると確信しているからである。憲法98条を死守すべきであると確信しているからである。
このように駄弁本を他に例がないほど発行し続けているのは、一言で言えば、地球上から戦争をなくし、人命と人権を守りたいからということになる。憲法9条を守りたいからである。戦争を放棄した日本国憲法は、人類の歴史上最も優れた哲学であり、私の知る限りでは釈迦も、孔子も、ソクラテスも、キリストも語らなかった画期的な哲学であることを日本国民に教え説き広め、それを守ることを勧めたいという一念によるものである。
戦争の放棄という哲学は、一つの偉人が考えたものではなく、国民が創り出したものであることを、改めて国民に知らせたい。マッカーサーなどの占領軍による影響を否定するものではないが、戦争の悲惨さを身を以て体験した日本国民が創り出したのが、戦争放棄という人類史上かつてない哲学である。
この哲学というか、生き方を日本国民に教え説き広め、この哲学を実践し、地球上から戦争をなくす役割を日本人が果たすように伝道することは、地方弁護士の社会的使命であると確信する。憲法の伝道師的役割を果たすことは、地方弁護士の社会的使命であると固く信じている。
〈日本国憲法の心や真意を理解しているか〉
日本国憲法の伝道師としては、芦田均憲法改正委員会委員長の演説の前記部分は、人々に教え説き広めなければならないと確信する。戦争放棄という人類史上最高最善の哲学は、この演説の中のこの言葉の中に生まれ出るべき、必然の運命にあったことが語られている。この演説を広めることは、憲法の伝道師になりたいと思う身としては、まず第一にやりたいことである。
人命と人権を究極の価値とするということは、国を守るとか、領土を守ることより、人命と人権を守る方が大事だということである。プーチンのロシア軍がウクライナに侵攻したというニュースを知った途端に、人命や人権より国や領土が大事に思えてくるようでは、日本国憲法が戦争放棄を掲げた心というか真意を本当には理解していないと断言せざるを得ない。
日本国憲法の心や真意を本当に理解しているかどうかが試されているのは、こういう機会である。日本国憲法は戦争を試したくなるような理由があても、戦争はしないと決めたのである。そのことを国民や地方住民に教え説くことが弁護士の社会的使命であり、地方弁護士にとっては、それは最も大事な使命である。戦争を肯定する理由などないことを説き知らせるのが、自分の使命だと確信している。
芦田均氏の憲法改正の動機の演説を思い出してほしい。国より、領土より、人命と人権が大事であることが伝わってくるではないか。それを説き広めることは、弁護士となり弁護士として仕事ができる立場にある自分の使命だと確信している。
芦田均憲法改正委員会委員長の昭和21(1946)年7月9日の衆議院における憲法改正の動機の演説の前記部分を紹介できるチャンスを得ただけで、80歳の記念本の一冊を書いた意味は、自分にとっては十分である。そもそも80歳記念本は、80年間生かしてもらった老人の思い込みを書き残したものなのである。
(拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)
「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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