〈吠え続けることの意義〉
9条改定阻止の本は、それだけの目的で、いろいろな角度から、いろいろな切り口で、既に30冊くらいの駄弁本を発行した。その本は、地方住民のみならず、国会議員の先生方にも謹呈という格好で送り続けた。
自民党の古い国会議員の先生方からは、「同感だ」とか、「共鳴する」という手紙も少なからず頂戴したが、若い先生方のほとんどは無反応だ。地方住民からは、「全く同感だ」とか、「私の気持ちを、代わって語ってくれて有り難い」という反応も多い。それだけで有り難いが、若い国会議員の意識の低さには、いつも呆れ、がっかりする。
浅学非才の身が語ったり、書いたりしても、それによって、どれほどの影響があるかは大いに疑問であり、はじめから大きな成果があるとは思っていない。しかし、共鳴してくれる方も少なからずいる。最近では、「田舎弁護士の哲学」の伝道師となりたいといてくれる方も多い。それは、昇天するほど嬉しいことである。自分がやれることをやるということは、地方弁護士の社会的使命を果たすためには、不可欠であると固く信じて実践してきたし、これからもそうしていくつもりである。
「雨垂れ石を穿つ」という言葉もある。小さな雫でも長い間ずっと同じところに落ち続けると、硬い石に穴を開けることもある。地方弁護士は、人命と人権が侵害されるような危険の気配を感じたら、人命と人権を守る番犬として、吠えて吠えて吠え続けることが、地方弁護士の社会的使命であり、それが、次の雨垂れを呼び起こすことになると確信している。
故・安倍元首相などのような9条改定の動きに対しては、「絶対反対」「絶対阻止」の声を上げ続けたい。憲法9条改定に繋がるような動きに対しては、その都度反対の意思を示し続けてきた。集団的自衛権問題、砂川判決の解釈問題、国連憲章の解釈問題などなど、問題が持ち上がる度に自説を駄弁本として出してきた。これまで、安倍元首相などの憲法改定の動きや、憲法の解釈の誤りについては、気付く度に駄弁本を発行して抗議してきた。
拙著を、若手の報道関係者との勉強会などでの参考資料として活用してくれるベテラン地方弁護士もいて心強い。駄弁本も何かしらの役に立っていることもありそうだ。全国にある憲法9条を守る会には、駄弁本を発行する都度送り続けている。心ある9条の会の会員からは、「共鳴する」「これからも頑張ってほしい」などというファックスや手紙や電話をもらい、発信し続けることによる成果があることを実感している。志を同じくする仲間の存在は心強い。
そのような仲間内では、政治家の9条改定という動きに対する警戒感は強くなっていると確信する。いくらかでも憲法の番犬としての役割を果たしていることを実感する。気持ちは、「戦争反対」「9条改定阻止」なのだが、口に出して言う機会のない人が多くいる。そういう人に代わって、そういう気持ちを言うことは、弁護士の本来の役割だ。憲法の番犬として、国民や地方住民に吠え、危険を知らせることは地方弁護士の社会的使命だと確信し、この先もその使命を果たしたい。
〈言い続けていればできる仲間〉
たった一人でも、その信念を曲げないで言い続けていれば、心ある人の心に届き、仲間ができる。孔子の言う「朋あり、遠方より来たる。亦た楽しからずや」といいう関係が生まれる。それは、この世を生きることの真の楽しみである。
地方弁護士は、憲法の保障する人命と人権が侵害されそうな気配を感じたら、国民に、地方住民に、吠えて危険が迫っていることを知らせなければならない。吠えれば、それに気付き、一緒に吠えてくれる仲間ができる。その輪を広げたい。
番犬的役割を果たすべき地方弁護士は、飼い主ともいうべき国民や、地方住民に危険が迫っていることを知らせるのみならず、危険な存在に対し、それを撃退する行動も取らなければならない。時に危険な相手に噛み付かなければならない。噛み付く方法は、考えればいくらでもある。それらを活用し、政治の場や国民に訴えることは、有効な手段であることは実証されている。
弁護士は、国や地方が憲法違反や違法な方向へ進むような行動を取ったら、それを阻止するための働きをしなければならない。地方弁護士は時には、地方住民の先頭に立って、そのような運動をしなければならない。一票の格差裁判を進めている弁護団の行動には、深く共鳴し、地方弁護士としても見習いたい。個々の地方弁護士としては、まず自分のやれることをやり、その輪を広げていくという方法をとることが基本となるものと考えている。
前述したように、安倍政権が9条改定の方向を目指すために動いたり、9条の解釈を都合の良いように改めようとする動きをする度に、駄弁本を書き、発行し続けてきた。番犬として吠えてきたつもりだ。これからも9条を改定したり、国民の人命と権利を侵害するような動きを感じたら吠えまくるつもりである。それは弁護士の社会的使命であり、地方弁護士にも出来ることであり、やれることは全力でやっていくつもりである。
(拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)
「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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