〈「戦争絶対反対」訴えるべき弁護士〉
人命と人権を軽視したり、無視するような正義論は、国家権力の考えであろうと、国民の大多数の考えであろうと、弁護士は阻止しなければならない。そうすることが、ここで言う正義の実現である。その正義を実現することが弁護士、従って地方弁護士にとっても、最も大きな社会的使命である。
弁護士である以上、地方弁護士も人命と人権を守ることが、社会的使命であるという純粋な気持ちを持ち続けなければならない。もっともらしい理屈で戦争を肯定しようとする人もいるが、戦争を肯定する正義などはない。このような考え方は青臭いと言われ、精神が未熟のように見えることがあるが、真理は単純明快で、それだけ純粋なものである。青臭いとはそれだけピュア(純粋)だという証左だと思っている。
青臭かろうが、戦争は絶対にしてはならない、させてはならないという主張は、声を大にして言い続ける。人命と人権を守るために、戦争には絶対に反対しなければならないということを何歳になろうと発信し続けたい。一生ピュアで青臭いままで生きたい。
地方弁護士の究極の社会的使命は、人命と人権を守ることである。そのために戦争にならないように働かなければならない。この認識を持たなければ、地方弁護士としての真の社会的使命は果たせない。弁護士、従って地方弁護士の社会的使命を果たすためには、まず弁護士法第1条の社会的使命に関する規定の意味内容を正しく解釈することが不可欠である。そして、それを地方住民に説き広めなければならない。
この世で最も多くの人命と人権を奪う戦争は、「人命と人権を擁護する」という弁護士の社会的使命にも、「社会正義を実現する」という弁護士の社会的使命にも、真っ向から反することになる。弁護士は、「戦争絶対反対」を訴えなければならない。これは弁護士である以上、地方弁護士も同じだ。戦争絶対反対を世の中に訴え続けることは、地方弁護士にとっても、具体的で且つ最も大事な社会的使命である。この使命を果たさない弁護士、従って地方弁護士も、その社会的使命を果たしているとは言えない。
自民党政権、中でも安倍政権は、アメリカの意を受けて日本国憲法を改定し、日本を戦争のできる国にしようと考えているが、この考え方に反対しないようでは、地方弁護士としても、その社会的使命を果たしているとはいえない。安倍元首相などはいろいろな理由を付け、憲法9条を改定して、日本を戦争のできる国にしようとしたが、これは間違っている。日本国憲法に反している。こんなことは許されるはずがない。これでは法秩序は保たれない。真の社会正義は実現されない。
しかし、国民の中にも安倍元首相らの屁理屈に毒されていると思える人も増えている。弁護士としては、国民や地方住民に憲法を守るように働きかけなければならない。憲法を守らないような政治家を選びださないよう国民に働きかけることは、社会正義を実現するためには必要不可欠なことであり、地方弁護士が地方住民にそのことを発信することは、その社会的使命であると確信する。
〈「9条の会」と弁護士〉
日本全国には、憲法9条改定に反対する「9条の会」がある。地方弁護士の中には、各地の9条の会のメンバーとして活躍している人も多くいる。他方、9条の会に関心のない地方弁護士も多い。地方弁護士の商売面の厳しい現状を考えるとそれどころではなく、まず食うことを考えなければならないという弁護士も少なくない気がする。それも分かるが、それはそれとして、地方弁護士の社会的使命にも心を向けてほしい。
弁護士法第1条は、「弁護士は基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と明言している。その規定の意味を正しく解釈すれば、地方弁護士は9条の会のメンバーになるのは、当たり前と思えてならない。9条改定を許しては、日本国憲法の存在自体を否定することになる。弁護士は憲法の番犬であり、9条を改定して、日本を戦争のできる国にすることを許しては、弁護士の社会的使命を果たしているとは言えない。
9条の会に感心のない地方弁護士を見ていると、地方弁護士の中には弁護士の社会的使命を忘れているのではないか、と思われる人も多くいるように見える。弁護士の社会的使命に目を向けずに、商売にだけ力を集中している地方弁護士の商売が上手くいっているかというと、必ずしもそうでもなさそうに見える。
地方弁護士の商売面と社会的使命面とはリンクしていて、デキる弁護士は両立させているように見える。地方弁護士の商売の面も社会的使命の面も渾身の力を振り絞るかどうかで、その結果が違ってくるのは当然である。商売面も社会的使命面も、一生懸命とは思えない地方弁護士も少なくないように思える。
憲法は、集会・結社の自由を謳っている。地方弁護士は9条の会に入らなければならないなどとまでは言わない。そこまで言うつもりはないが、戦争反対の気持ちだけは一般国民以上に地方弁護士には強く持ってもらい、それを地方住民に発信するという社会的使命を果たしてほしい。
社会的使命を果たすことによって、商売も上手くいくこともある。地方弁護士は、地方住民から必要不可欠の存在だと思ってもらえてこそ、商売面も繁盛することになる。行動の自由もあるから、地方弁護士はこうしなければならないなどと具体的に何かを強制するつもりはないが、人命と人権を守る行動を勧めたい。
(拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)
「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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