司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 

 〈職業意識改革が必要な地方弁護士〉

 私がここで述べたいのは、弁護士会という組織の在り方ではない。個々の弁護士一人一人の生き方、心の持ち方、地方弁護士の在り方についてである。商売人としての個々の地方弁護士の在り方についてである。特に個々の地方弁護士の商売は、どうしたら繁盛させられるのかという問題について述べる。個々の地方弁護士は、どういう心構えで商売をすべきかということ、そのポイントとして、地方弁護士はもっと商売気を持つべきではないか、ということを述べたい。

 前記日弁連会長候補者の主張を紹介したのは、その主張の中に、地方弁護士の商売に関する現況と、将来に対する不安が示されていて、参考になる面が少なからずあるからだ。

 このような主張に対して、異論を唱える弁護士もいるが、私の地方弁護士の経験から得た地方弁護士の商売面に関する認識としては、この候補者が言っていることの中には、共感する部分もあるので、その主張を利用させてもらった。つまり、地方弁護士の商売面は、安閑としていられない状況にある、という印象を持っているということを述べたいのである。

 この候補者の指摘の骨子は、司法試験合格者数を増やした結果、弁護士の数が増えたことが、地方弁護士の商売面が厳しい状況になっている原因なのだから、司法試験合格者数を減らし、弁護士数を増やさないようにしなければならない、ということになる。

 また、国選弁護料や法テラスの報酬が安過ぎて、弁護士の商売を厳しいものとしているので、これを見直さなければならない、ということになりそうだ。そのためには、日弁連がそのような方向を目指して活動しなければならない、ということになりそうだ。

 そういう指摘には異論もあるもしれないが、必ずしも全面的に的外れな主張だとは思えない。この主張は、地方弁護士全体のことを考えての視点に立つ主張であり、地方弁護士全体の商売面の現況については、的を射ている点もあるように思える。

 だが、ここではそういうことを言いたいのではない。個々の地方弁護士一人一人は、商売面に関する意識改革をし、地方弁護士は地方住民にとって必要不可欠な存在となり、高いカネを払っても利用したいと思ってもらえる存在になるためには、個々の地方弁護士がどうしたらよいか、個々の地方弁護士の商売に対する心構えは、どうあるべきかを考えたいのである。

 一言でいえば、地方弁護士一人一人に、もっと商売人としての自覚が必要で派ないか、ということになる。地方弁護士一人一人に商売気が足りないのではないか、もっと商売を繁盛させるための努力が必要ではないか、ということになる。組織の問題とは別に、個々の地方弁護士の商売に対する職業意識の改革が必要である、と言いたいのである。

 弁護士会という組織が、どうあるべきかという問題は、ここでは述べない。あくまで個々の地方弁護士の商売を繁盛させるためには、どのような考え方をするべきか、という個々の地方弁護士の意識の問題を述べたい。


 〈自分自身の過去を反省して〉

 これまでの意識を見直し、地方弁護士の存在を「必要悪」というレベルから、「必要不可欠な存在」となるためにはどうしたらよいかを、個々の地方弁護士一人一人が真剣に考えなければならないと思えてならない。地方弁護士一人一人に、商売人としての自覚が足りな過ぎるのではないか、他の商売人に比べ、商売気が足りない、と思えてならない。

 もっと言うと、地方弁護士の中には商売をしているという自覚が薄い人が多いように見える。試験勉強だけに明け暮れてきたため、商売気の見られない人が少なくない。そもそも地方弁護士には、サービスを提供する商売をしているという意識が薄いように思える弁護士も見られる。

 これまでの自分の地方弁護士生活を振り返り、個々の地方弁護士はカネを稼ぐために、ここがこう変えた方がよいのではないか、と思うことを思いつくままに述べてみる。法律理論でないことは勿論、学問的な話でもない。商売人として客を掴むコツを考えたいのだ。

 これは、他の弁護士のことではなく、自分自身のこれまでを反省し、改善したいという自分を戒めるためのものである。

 これまで、それだけが地方弁護士の仕事だと思い込み、あまり疑問を持たずにやってきた仕事以外にも、もっと広い分野ら地方弁護士の仕事がうるはずだとの思いで、これまでの考え方を変えた方がよいのではないかと思う点もある。そういう点を中心に、個々の地方弁護士は、どうしたらもっとカネを稼げるかを考えたい。

 自分の50年を超える弁護士としての過去を反省し、これから先は地方弁護士として、どのように生きてくべきかを考えたい。他の弁護士のことを言うものではない。

 司法試験に合格することに一生懸命で、法律の条文と判例と法理論ばかり勉強して、弁護士資格を取得したのはよいが、どうしたら商売が成り立つかについて全く勉強してこなかった身は、商売のコツなど知る訳がない。

 地方弁護士の商売を繁盛させるには、商売のコツを覚えなければならない。地方弁護士の商売のコツは未だに掴んでいない。試行錯誤の繰り返しということになろうが、それでもそれに触れてみたい。どうしたら地方弁護士として商売を繁盛させられるかについて考えてみたい。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』から一部抜粋)


 「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第6巻(本体1000円+税)も発売中!
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