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 〈国民の不断の努力で守るべき自由〉

 日本国憲法第3章「国民の権利及び義務」を通読すると、「自由」という言葉は、次のように使われています。分かり切ったことのようにも思えますが、どこまで正確に分かっているでしょうか。こういう機会に改めて確認してみることも無意味ではない気がします。条文をそのまま転載してみます。

 第18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と、「奴隷的拘束及び苦役からの自由」を規定しています。

 第19条は、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と、「思想及び良心の自由」を規定しています。

 第20条は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と、「信教の自由」を規定しています。

 第21条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と、「集会・結社・表現の自由」を規定しています。

 第22条は、「①何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。②何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と、「居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由」を規定しています。

 第23条は、「学問の自由は、これを保障する」と、「学問の自由」を規定しています。

 学問の自由の保障は、前記の他の自由の保障と一連の関係にあります。学問の自由に対する国家権力の干渉や、弾圧を許してしまったら、他の自由も、国家権力の干渉や弾圧を許してしまうことに繋がっていくことになりかねないのです。国家権力に学問の自由の侵害を許してしまえば、学問の自由だけに止まらないのです。他の自由の保障も、国家権力によって侵害される危険性が高くなってしまいます。

 日本国憲法第12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と定めています。国民は、憲法が国民に保障している自由を、国民の不断の努力によって、守らなければならないのです。


 〈今生きている国民は全員憲法の番犬〉

 日本国憲法第97条の「基本的人権の本質」には、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」とあります。

 本質とは、それがなければ、それとは言えないことですから、自由権や基本的人権を語る時は、この規定を無視することは出来ないのです。基本的人権は、侵すことのできない永久の権利なのです。

 自由権の保障は、人類の多年にわたる努力の成果だったことを、日本国憲法の制定権者である主権者日本国民は、これをわざわざ日本国憲法に明記しているのです。

 学問の自由を政権によって侵害されることを許すことなど、国民として出来ません。そんなことを許したら、飼い犬に噛まれることを許すことになります。国家機関が主権者である国民の自由を侵すことを許しては、飼い犬が飼い主を噛むことを許すことになるのです。

 自由権は、「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と述べられています。信託とは、相手を信用して任せることです。誰が、誰を信用して、誰に任せたのでしょうか。

 憲法制定権者は国民ですから、国民が誰かに任せたことになります。問題は任せた相手です。「現在及び将来の国民に」「信託されたものである」と言っていますので、憲法制定権者と憲法改正権者である国民が任されたということになりそうです。

 任せた人も憲法制定権者である国民、任せられた人も憲法制定権者や憲法改正権者の国民、という奇妙な関係に見えます。今、日本に生きている私たちは、現在の国民のみならず、過去の国民からも、将来の国民からも信託されているのです。今、日本に生きている国民は、全員憲法の現在の番犬なのです。

 私たち国民は、過去の国民のために、そして将来の国民のための憲法の番犬なのです。今、この憲法を壊すことは、番犬としての役割を果たせなかったということになってしまうのです。

 (拙著「新・憲法の心 第29巻 国民の権利及び義務〈その4〉」から一部抜粋)


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