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 〈命懸けで守るべき哲学〉

 身を以て原爆を体験した日本人が、核兵器の出現により、戦争をしたら人類が滅亡するという、宗教や哲学さえ、根こそぎ無くなってしまう核戦争の危険性を実感し、これまで考えられなかった哲学を生み出した。この哲学は、頭で考え出した理論でも理屈でもない。体験から生まれた危機感に基づく人類滅亡回避の人間の生き方は、これしかないという考え方を示したものだ。

 憲法を勉強し、地方弁護士になれた身としては、憲法9条は人類史上最高の哲学であることを身の回りの地方住民に説き広める社会的使命があると確信している。国として戦争を放棄した憲法9条は、画期的な哲学であり、人類史上最高に進歩した哲学である。日本国民は、人類史上最高の哲学者であると自負すべきであるということを説き広めたい。日本の政治家も日本国民も、ここまで9条を高く評価する人は少ないと思うが、9条はそれほど価値のあるものだと固く信じている。

 日本国民という大衆が創り出した、この最高の哲学は、大衆が守り通さなければならない。独裁者などに踏みにじらせてはならない。プーチンのような権力者を生み出してはならない。安倍政権や岸田政権などという一政権に9条改定など絶対にさせてはならない。

 世界では6000万人とも8000万人ともいわれ、日本だけでも300万人を超える死者がでた第二次世界大戦における犠牲者が創り上げた土台の上にできた戦争放棄の哲学は、人類史上最高の哲学であり、この哲学は命懸けで守らなければならない。

 そのことを国民に、地方住民に、そして時には政治家に、政権担当者に説き伝えるのは、弁護士の役割であり、社会的使命である。拙著「地方弁護士の役割と在り方」の第2巻「地方弁護士の社会的使命」においても、弁護士は人命と人権を守ることと、憲法9条の哲岳を説き広め、憲法9条を守ることが、日本国民の社会的使命であるということを世間に知らせなければならない、ということを強調した。


  〈効果が証明された憲法9条〉

 憲法9条は、戦争を放棄すると明言した。日本は78年間にわたり、一度も戦争に巻き込まれることはなかった。分かり切ったことであり、今更と言われるかもしれないが、ここのところは極めて重大なことである。日本国民のみならず、世界全人類に知ってほしい大事なポイントである。憲法9条はその哲学が、人類史上最高の哲学であることは理屈だけではなく、その成果が実績を示してくれた。

 明治憲法下においては、明治元(1868)年から太平洋戦争終戦時の昭和20(1945)年までの77年間に日清戦争、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争と、日本は戦争の連続だった。日本国憲法ができ、戦争放棄を宣言した結果、その後日本は一度も戦争をしていないということは、「素晴らしい」の一言に尽きる。憲法9条のお陰である。戦争放棄という哲学の正しさは、その実績によって示された。このことを日本国民は、世界に胸を張って知らせるべきである。

 戦前の明治憲法下と戦後の戦争放棄を規定している日本国憲法下とを比較したら、ほぼ同じ年数の中で、一方は戦争に明け暮れ、他方は一度も戦争がなかったという明白な結果の違いが出でいる。

 世界に目を移すと、第二次世界大戦後、戦争放棄の規定のないアメリカが、これまで何度戦争をしているか調べればすぐ分かる。驚くほどの回数となっている。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、湾岸戦争と数え上げればきりがないほど戦争をしている。

 アメリカに限らず、地球上で全く戦争の無い日など無いと言ってもいいほど、戦争は世界で起きている。これを書いている一瞬も、テレビではプーチンのロシア軍がウクライナの民間人を殺している、などという画像が映し出されている。78年間、戦争に関わることがなかったことは、どれほど有り難いことなのかを、強く認識しなければならない。これは、9条のお陰である。

 日本国憲法9条の戦争放棄の規定の効果は、この事実を目の当たりにし、見事に証明された。同規定は、安全保障はどうあるべきかという理念の問題に止まるものではなく、実際に現れた効果で、その実効性は十二分に証明された。

 この事実は、憲法9条の果たしてきた役割を、論より証拠で見事に証明した。この9条を改定しようなどと考える輩の気持ちは理解できない。安倍元首相などは、この事実をどのように評価しているのだろうか。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)



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