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 〈世界連邦〉

 

 高柳賢三氏(貴族院議員、英米法学者。1887-1967)は、「世界連邦の形における世界国家が成立すれば、各国は、改正案第9条(日本国憲法9条)の規定している武装なき国家となるのであります。世界に生起するすべての国際紛争は、武力を背景とせず理性によって解決されることになる、武力は世界警察力として、人類理性の僕としてのみ存在が承認される。改正案9条はかかる世界連邦を前提としてのみ合理的であります」と述べています。

 

 この高柳氏の言によれば、日本国憲法の「戦争放棄」の規定は、世界連邦を目指すものであることが理解できます。

 

 「世界連邦」とは、広辞苑によると、「世界国家(world-state)と同じで、各国の主権を制限して、世界全体を単一の国家に組織しようとする理想。この考え方は、古代から存在し、第二次世界大戦後は戦争への反省、および核兵器の脅威から提唱された」と記されています。

 

 古代からあった考え方のようですが、核兵器の脅威が現実のものとなっている今日においてこそ、単なる理想としてではなく、現実の課題、つまり今、解決しなければならない問題として、世界中が一体となって目指さなければならないものだと思います。それが、日本国憲法の心です。

 

 日本国憲法の「戦争放棄」の規定は、世界連邦への第一歩です。世界連邦を創るための具体的提案です。日本国憲法の「戦争放棄」の規定に倣って、米国も、ロシアも、中国も、北朝鮮も、戦争放棄を宣言し、「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を憲法上明らかにすれば、世界連邦に近付くのです。

 

 これまで、自衛戦争まで放棄した国はありません。それを、日本国憲法は世界で初めてしたのです。これは画期的なことです。これまでの考えや仕方とははっきりと違って、これから新しい時代が始まるという意気込みで、日本国憲法は真の戦争放棄、つまり、自衛戦争まで放棄したのです。その目指すところは、世界連邦です。

 

 「核の抑止力」とか、「防衛力の強化」で平和を創ると主張する人もいますが、こんな考え方には絶対に反対です。一つ間違えれば、人類滅亡、地球壊滅となります。もう人間の手に負えない状態となってしまいます。

 

 人間の手に負えないことは、人間はしてはならないのです。世界中で核兵器が使われたら、世界中の多くの原発が事故を起こしたなら、人間の手で収拾はつきません。人間の手に負えないのです。このような時代に平和を考えるなら、「戦争放棄」「戦力の不保持」でなければならないのです。そして「核兵器の廃絶」でなければならないのです。「原発廃止」でなければならないと思います。これからの地球においては、これは普通の原理です。

 

 直ちに世界連邦ができるとは、私だって思っていません。マッカーサーだって、高柳賢三氏だって、すぐに世界連邦ができるなととは思っていなかったと思います。しかし、「世界連邦という理想に近付けることはできる」と信じていたのではないでしょうか。

 

 戦後72年が経った今日、未だ世界連邦ができていない現実を目の当たりにしますと、容易に世界連邦という理想が現実のものになるとは思えません。しかし、少しでもその理想に近付くように努力するのが日本人の責務だと信じます。日本国憲法は、日本国民一人一人にそのような責務を与えているのです。

 

 それにもかかわらず、北朝鮮の核実験、弾道ミサイル発射、中国との尖閣諸島を巡るトラブル、韓国との竹島問題などがあると、すぐに「自衛隊の兵力を増強しなければ」とか、「軍隊を持たなければ」とか、「核兵器を持たなければ」などという輩は、日本国憲法の「戦争放棄」の規定が、世界に向けられた世界連邦という理想に向けられていることを知らないのです。知っていても無視しようとしているのです。

 

 日本国憲法は、前文において「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言しているのです。

 

 軍事力で、安全と生存を保持しようとしているものではないのです。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と明言しているのです。「公正と信義を信頼する」ためには、まず日本が公正と信義を貫かなければなりません。それは、「戦争放棄」です。それも、「完全戦争放棄」です。

 

 芦田均・憲法改正委員会委員長(第47代内閣総理大臣。1887-1959)は、「人類共通の熱望たる戦争の放棄と、より高き文化を求める要求と、よりよき生活への願望とが、敗戦を契機として一大変革への途を余儀なくさせた」と憲法改正案の提案理由の中で述べています。

 

 「戦争放棄」の規定は、人類共通の熱望なのです。過去にそうだったということに止まらず、現在だって、未来だって、人類共通の願いです。それは、普遍的な願いです。時代を超え、地域を越える願いです。全世界の願いです。核兵器が多くの国で開発され、拡大し、その威力も飛躍的に増大した現在こそ、「戦争放棄」は世界に普及しなければならないのです。

 

 それを実現しようと踏み出した第一歩が、日本国憲法の「完全戦争放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」の規定なのです。日本国憲法は、世界憲法への第一歩です。日本国憲法は、世界のどこの国にも先駆けて、世界連邦を目指し、踏み出したのです、ここに、日本国憲法が「世界史的意味がある」と言われる理由があるのです。真に世界から「世界史的意味がある」と認めてもらうためには、「日本国憲法の心を世界憲法の心」にするように、日本政府と日本国民は、弛まぬ努力を続けなければなりません。

 

 そして、その努力の必要性は、シリア問題、北朝鮮問題、中国の領海侵犯問題等、紛争の種が尽きない国際情勢、安倍政権の憲法改正などを考えますと、今が一番高まっているのではないでしょうか。

 

 

 〈グローバル〉

 

 グローバル(global)とは、「世界全体にわたるさま」とか「地球規模」という意味だと思います。現代社会は、まさにグローバルな世界となっています。

 

 日本国民も、世界の各国に自由に出掛けています。また、世界中の国々から日本に多くの人が来ています。日本人が海外に出向いて働いています。逆に、世界各国から日本に来て働いている人も少なくありません。いまや外国へ行くことも、外国から来ることも難しいことではなくなっています。国境がなくなっていると言っても過言ではありません。少なくとも、経済には国境がないことを痛感する昨今です。

 

 戦争による脅威もまたグローバルになっています。戦争をしている国に限定されず、戦争をしていない国の国民にとっても、戦争の被害は及びます。

 

 どこかで戦争が起きると、その脅威は全世界にわたり、地球規模になってしまうのです。アラブ諸国で戦争が起きれば、ガソリンが値上がりし、日本人の家庭にまですぐに影響が出ます。これは、すでに何度か体験済みです。

 

 北朝鮮が米国に核弾道ミサイルを撃ち込み、それに対する反撃として、米国が北朝鮮に核ミサイルを撃ち込んだとします。北朝鮮に撃ち込まれた核兵器によって生み出された「死の灰」は、韓国はもちろん、日本にも降り注ぐ危険性が大です。それが中国であっても同じです。現に、中国のPM2.5(微小粒子状物質)や黄砂は日本にも降り注いでいます。

 

 互いにエスカレートして、核兵器を使い合えば、近隣諸国のみならず、世界中の国々に影響を及ぼすことになります。地球全体に影響を及ぼすことになります。

 

 広辞苑は、世界連邦の説明の中で「第二次世界大戦後に戦争への反省および核兵器の脅威から提唱された」と述べていますが、いまや世界には一万発を超える核弾頭が存在すると言われています。原爆の数百倍ないし数千倍の脅威がある水爆時代です。核兵器の脅威は、第二次大戦直後と比べて飛躍的に増大しています。広島・長崎の比ではありません。

 

 日本には、核兵器は今のところないようですが、50基の原発があります。原発で事故が発生したり、原発が攻撃されたりしたら、手に負えないことになりそうです。福島原発事故が、それを如実に物語っています。

 

 核兵器の脅威は、人類滅亡、地球壊滅のレベルに至っています。それは、戦争当事国間に限定されるものではなく、世界の隅々まで行き渡ってしまいます。福島原発事故の影響でさえ、日本国内に止まらず、全世界が注目しています。日本の一原発事故でさえ、全世界に影響を与えるのです。核戦争が起きたら、どうなるのでしょうか。

 

 「戦力を増強して防衛する」などと主張する政治家や学者もいますが、北朝鮮が日本の原発を狙ってミサイルを撃ち込んできたら、戦力を増強して阻止できるのでしょうか。こちらが戦力で対抗すれば、あちらも戦力を増強することになるはずです。人間の手には負えなくなりそうです。「武力」対「武力」で守れるのでしょうか。共倒れとなりそうな気がします。

 

 核兵器の脅威は、想像を絶するものがあります。人類滅亡、地球壊滅の危険は、もうすでに現実のものとなっています。

 

 このような世界情勢の現在においては、日本国憲法の心は、日本国内の心に止まってはいられないのです。全世界の隅々にまで行き渡らなければならないのです。日本国憲法の心のグローバル化が必要なのです。日本国は、日本人は、その担い手とならなければならないのです。
(拙著「新・憲法の心 第3巻 戦争の放棄(その3)」から一部抜粋)

 

 

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