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 〈ポツダム宣言を受けて生まれた日本国憲法〉

 拙著「旧・憲法の心」は、日本国憲法の制定の経過を次のように説明しました。

 「日本国憲法は、第二次世界大戦に敗れた日本が、連合国に無条件降伏したことにより生まれた。即ち、日本は、昭和20(1945)年8月14日、ポツダム宣言を受諾した。翌8月15日には、いわゆる玉音放送がなされた」

 「ポツダム宣言は、日本の降伏の条件を定めたものである。その無条件降伏の条件の中には、憲法制定に関係するものがある。『民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障碍を除去すべし』、『言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立すべし』、『日本国民の自由に表明する意思に従い、平和的傾向を有し、且つ責任ある政府が樹立せられるにおいては、連合国の占領軍は直ちに日本国より撤収せらるべし』というものであった」

 「このポツダム宣言を受けて、憲法を改正しようとした日本政府は、日本の国体が護持されるのかどうかという問題意思を持った。明治憲法は、天皇に主権が存し、天皇が統治権を総覧するという国家体制であった」

 「日本国政府は、国体は護持できると考えた。昭和20(1945)109日に、幣原喜重郎を首班とする内閣が誕生した。幣原首相は、連合国総司令部最高司令官マッカーサー元帥より、『明治憲法を自由化する必要がある』と言われ、国務大臣松本烝治を長とする『憲法問題調査委員会』を発足させた。これを『松本委員会』と呼んだりする」

 「『松本委員会』は、天皇が統治権を総覧するという大原則には変更を加えない、という原則に基づいて改正作業を進めた。しかし、松本案の概要を知った総司令部は、あまりにもその内容が保守的だとして、総司令部側で独自の憲法草案を作成ることにした。そして創られたものが『マッカーサー草案』である」

 「マッカーサー草案は、昭和21(1946)213日に日本政府に手渡された。マッカーサーは、この草案を日本政府に手渡すに当たり、それに沿った憲法改正を強く進言した。日本政府は、マッカーサー草案に基づいて日本案を作成することにした。無条件降伏した日本としては、当然のことだ」

 「マッカーサー草案に基づく日本案の起草作業は、マッカーサー草案を翻訳するという形でまとめられ、36日に『憲法改正草案要綱』として国民に公表された。その後、この改正草案要綱は口語体で文書化され、憲法改正草案(内閣草案)がせ作成され、これが正式な『大日本帝国憲法改正案』となった」

 「このような経過をみると、確かに日本国憲法は『押し付け憲法』と言われてもやむを得ない一面を有している」

 「内閣草案は、明治憲法第73条の定める手続に従い、帝国議会に提出された。昭和21(1946)年6月24日、衆議院は圧倒的多数を以てこれを可決した。貴族院も、10月6日に圧倒的多数を以て可決した。衆議院においても貴族院においても、若干の修正はあったが、ほとんど内閣草案どおり、つまり、ほぼマッカーサー草案どおりのものである。さらに枢密院の審議を経て11月3日、日本国憲法として公布された。翌昭和22(1947)年5月3日から施行された」


 〈「押しつけ憲法」論以前に直視すべきこと〉

 ポツダム宣言を受諾し、いわゆる「無条件降伏」した日本は、連合国総司令部の意向に反することはできない立場にありました。マッカーサー草案に沿う憲法となるのは、極めて当たり前のことです。これを「押しつけ憲法」などと言うのは、「歴史に無知である」と言われても仕方ないのです。事の一部だけを見て、全体を見ていないのです。

 「押しつけ憲法」などと言う前に、「なぜ、日本はポツダム宣言を受諾しなければならなくなったのか」ということを考えなければならないのです。そこに至った歴史を直視しなければならないのです。それをせずに、「押しつけ憲法」などと言っている輩が著名な政治家や現首相であることに、戦慄を覚えます。

 日本は、明治維新後「富国強兵」をスローガン(標語)に掲げ、日清戦争、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争と戦争に明け暮れ、広島・長崎への原爆投下によって、ようやくポツダム宣言を受諾しました。ポツダム宣言の受諾も、マッカーサー草案に沿う憲法も、その原因は日本が自ら生み出したものであり、「押しつけ憲法」などと他人のせいにすべきものではありません。明治維新後、戦争に明け暮れた日本の身から出た錆なのです。日本国民の責任なのです。そこまで追い込んだのは日本政府であり、日本国民なのです。

 「押しつけ憲法」などというのは、お門違いも甚だしいのです。勉強不足と、自分たちの主張にとって好都合だから、そのような「屁理屈」を言っているのです。正しい歴史認識は、将来のためにも、世界諸国民の理解を得るためにも不可欠です。9条制定の歴史的背景と経過を直視しなければならないのです。

  (拙著「新・憲法の心 第15巻 戦争の放棄〈その15〉」から一部抜粋 )



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