司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 〈市民の「日常」で活躍すべき弁護士〉

 「弁護士」という言葉を角川必携国語辞典で引くと、「訴訟に関することや、法律に関する事務を、当事者に依頼されておこなう職業の人。一定の資格が必要」とあります。そして「訴訟」とは、「裁判所に、法律による解決を求めること」とあります。

 ですから弁護士は、「裁判所で法律による解決を依頼者より頼まれて、解決する仕事」というイメージを持たれていますし、そのように思っている人が普通だと思います。私も、これまではそう思ってきました。

 ところが最近、そういう考え方は見直さなければならない、という思いを強くしています。それは、弁護士はもっと裁判所という場だけではなく、裁判所外の広い場所でも、広く仕事の場を求めなければならない、という思いに至っているのです。

 48年間にわたって、地方小都市で弁護士業を生業として生きてきて、弁護士は裁判所という場で、当事者の代理人として、法律による解決を求める仕事だけをしていては足りないと思うようになっています。弁護士は、もっと市民の日常生活に密着し、市民の普段の生活の場において仕事をしなければならないと思うのです。

 裁判所を利用することなどは、一般市民にとっては、一生に一度あるかないかという出来事です。普段の生活ではありません。とても日常茶飯事などとは言えません。むしろ、普段自分が生活したり、付き合ったりするのとは次元を異にする世界に属する非日常とでも言うべきことです。

 弁護士は、裁判という非日常の生活の場だけで仕事をしていては足りないと思うようになりました。それは、裁判という場でだけ仕事をしていては、一般市民の生活の99%以上の日常の生活に関与できず、一般市民のためにあまり役だっていないということになります。弁護士業という観点からすれば、弁護士の仕事が少なくなってしまいます。弁護士は、食べてはいけなくなりそうです。

 弁護士が、世のため、人のために、もっと役立つためには、市民の日常生活の場において活躍しなければならないのです。弁護士の業務を拡大するためには、裁判所という市民にとって、非日常と思える場だけに止まっていないで、市民の日常生活、つまり普段の生活の場に、仕事の場を広めなければならないのです。

 市民の普段の生活の中には、途切れることなく、トラブルや悩みごとが発生しています。絶えず発生している市民のトラブルや悩みごとの相談に乗り、裁判などという非日常と思える場で解決しなければならなくなる前に、適切な解決に市民と一緒になって取り組むことは、弁護士の重要な仕事ではないか、という考えに至っています。

 市民間のトラブルを解決するためには、まず弁護士が仲に入って、円満解決に努力してみて、どうしても裁判でなければ解決できそうもないという場合に、はじめて非日常とも思える裁判所での解決という手段を取るべきだと思うようになりました。


 〈開業医に似ている田舎弁護士〉

 弁護士は、もっともっと、市民の普段の生活に関与しなければならないのです。弁護士を使うのは、一般市民にとっては、一世一代の出来事のように思われてはならないのです。トラブルや悩みごとがあったら、まず弁護士に相談してみる、というようにならなければならないのです。いきなり裁判所で解決というやり方では、事が大きくなり過ぎます。まず、弁護士事務所で解決できるものは解決すべきではないかという気がするのです。

 弁護士は、医師とよく似た面があります。特に田舎弁護士は、個人で開業している一般の医者である町医者・開業医によく似た面があります。開業医は、市民の普段の生活に密着し、活躍しています。市民は、体調を崩すと、まず開業医の所に駆け込みます。開業医は、駆け込んできた患者から、現在の症状やそこに至った経過・病歴等を聞き、自分の所でできる検査をし、自分の所で治せるかどうかを判断し、自分の所で治せるものは治します。自分の所で治せないときは、大学病院などのより設備の整った病院を紹介します。まず、自分の所で治す努力を最大限尽くします。

 田舎弁護士は、この開業医とよく似た立場にあります。市民がトラブルや市民生活の悩みごとを持ったら、弁護士に駆け込んでもらえるようにならなければならないのです。そういう場を田舎弁護士は、市民に提供しなければならないのです。

 「裁判所という場でする仕事しかしません」などという田舎弁護士は、田舎弁護士としては、「くその役にも立たない弁護士」と言われても仕方がないのです。裁判所での解決という方法は、田舎弁護士としての尽くすべきことを尽くしたうえで、最後に選択すべき方法なのです。田舎弁護士は、開業医のように、まず、解決できる事件は、自分の力で解決してやらなければならないのです。そうあるべきではないか、と最近、特に強く意識するようになっています。

 (みのる法律事務所だより「的外」第352号から)


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