〈許してはならない菅前首相の詭弁〉
学問研究は、学者と学者との切磋琢磨に任せなければなりません。学問研究は、真理を探究しようという、同じ目的を持つ学者同士が、互いに競い合い、励まし合いながら、ともに努力して向上しようとするエネルギーに任せるべきなのです。専門的学問をしていない政治家や政権担当者などが、口を出すべき分野ではありません。
安倍元首相にも菅前首相にも問いたいのです。「あなた方は、どれほどの学問研究をしたのでしょぅか」、「学問研究に口出しするのはおこがましいと思いませんか」、「身のほどをわきまえず、出過ぎていませんか」。
選挙で多数を得たとしても、学問的研究を極めたなどとは、とても言えません。言葉は悪いのですが、あえて言えば、ミソとクソの区別はしっかり付けなければならないのです。
菅政権は「総合的、俯瞰的に判断して排除した」と繰り返し述べていますが、「具体的に排除した理由を明らかにせよ」との問いに対し、「総合的、俯瞰的」の繰り返しでは、答えになっていません。「総合」とは、様々なものを一つにまとめ合わせることであり、「俯瞰」とは高いところから見下ろすことです。前記問いに対する返答になっていません。
問いに対し、答えをはぐらかしているのです。政治家の中には、こういうやり方で他人を上手く巻こうとしている輩がいるようですが、誰が見ても、そんなこと誤魔化しだと見えています。遅かれ早かれ、真実は分かります。いずれその責任は取ることになります。
菅首相は、具体的なことは、何も言っていません。こんな誤魔化しの回答で納得する国民はいません。このような答弁で誤魔化そうなどとすることは、主権者である国民を馬鹿にしている態度と言わなければなりません。後日、その責任は、とらなければならなくなるはずです。
野党議員はもちろんですが、与党議員も国民の代表者です。国民の疑問を、国民に代わって国会で明確にしなければならないのです。大臣になりたいなどという損得計算で、首相の嘘を見逃すような行動は止めた方がご自身のためになると思いますが、いかがでしょうか。自民党議員だって、その立場はあるでしょうが、首相の答弁の趣旨が分からなかったら、国民の代表として確認しなければならないはずです。昔の議員より、やる気がないような気がしますが、いかがでしょうか。
菅政権の、この返答は詭弁です。道理に合わないことを正しいように言いふくめる、誤魔化しの理屈です。このようなことが大手を振って罷り通ることを許したら、「憲法9条の戦争放棄は侵略戦争だけで、自衛戦争は放棄していないから、戦争はできる」とか、「自衛隊の武力は戦力とは言えないから、憲法9条の戦力の不保持に反していない」などという詭弁が罷り通るようになってしまいます。
日本国民は、菅首相の「総合的、俯瞰的判断」などという誤魔化しの言葉で納得してはならないのです。日本学術会議が推薦した学者を排除したのは、安倍政権や菅政権の「憲法改定に異を唱える学者は排除されることになる」という脅しだと見るべきです。
嘘や詭弁を言う者が悪いのですが、それを許す議員や国民も悪いのです。そいう議員を国会に送り出す国民が、最後に責任をとることになるのです。トランプ大統領を選出したアメリカ国民のような苦悩を体験することになりかねないのです。自民党議員の中にも、是々非々で良いことは良い、悪いことは悪いと、公平な見方をする人が、一人でも多く出現してほしいと願うのみです。
〈良心に従って判断するべき〉
「総合的、俯瞰的」という言葉には、誤魔化しの匂いがします。ピュア(Pure)ではありません。純な様が全く感じられないのです。不純の匂いがします。
「政治の世界は、そんなに単純ではない」などと言う方もいるかもしれませんが、もっとピュアであってほしいのです。純粋であってほしいのです。政治家に限らず、国民もピュアであってほしいのです。損得計算や詭弁を弄することだけに長けることなく、純な考え方を大事にしなければならないのです。
妙に物分かりがよい大人になってほしくない。駆け引きばかり考える大人になってほしくないのです。良いものは良い、悪いものは悪いと、はっきり言える純粋な人間になりたいものです。
憲法76条は、「すべての裁判官は、その良心に従い独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」と明記しています。何が、善か悪かを良心に従って判断すればよいのです。日本国憲法の究極の価値は、人命と幸福にあるのですから、その秤で計ればいのです。
良心に従っているか否かの判断は単純です。嘘や詭弁は良心に反します。一人一人の命と幸福が日本国憲法の究極の価値です。その価値にプラスとなるかマイナスとなるかという秤を使って計ることが、憲法上の良心です。
学問研究者を委縮させ、政権担当者の考えに異を唱えないようにする政策は、絶対に許してはなりません。それを許すことは、良心に反する行為です。国会も内閣も裁判所も良心、つまり人の命と幸福に適しているかどうかを秤としなければならないのです。主権者であり、憲法制定権者の国民も、そうしなければならないことは言うまでもありません。
学術会議推薦者除外問題は、見逃してはならない問題です。新型コロナウイルス問題で、国会も世間も学問の自由など論じている時ではないという状況ですが、いずれ新型コロナウイルス問題も収束するでしょう。その時が来たら、私の駄弁を思い出し、安倍元政権と菅前政権の責任を追及してほしいのです。
国民の基本的人権を考えるには、教材の一つになるものです。そういう思いで、この問題を提供します。
(拙著「新・憲法の心 第29巻 国民の権利及び義務〈その4〉」から一部抜粋)
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