司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>



 〈マイナス財産にカウント〉

 最近、相続に関する依頼事件が多くなっています。その中で、特に印象的なことは、相続人の多くが、土地・建物の取得を希望しないということです。現金は欲しいが、土地・建物はいらないというのです。

 特に、田舎の土地・建物の取得を希望する人はほとんどいません。売却できる土地・建物なら、取得を希望する人もいますが、その土地・建物が欲しいというより、売却代金がほしい、ということなのです。土地・建物そのものが欲しいのではないのです。

 売却できない田舎の土地・建物は、マイナス財産と考えている人が多いのです。その考え方は、必ずしも間違っているとは言えません。売れない土地・建物を取得しますと、当然、売却して代金化することができません。誰かに貸して賃料を取ろうとしても、借りる人はいません。田や畑として、耕作しようとしても、採算が取れません。それ以前に、田や畑を耕作する人手がありません。土地・建物は、お荷物(やっかい者)なのです。

 土地・建物を持つと、固定資産税を払わなければなりません。一銭の金も生まない土地・建物なのに、固定資産税だけは取られます。農地も耕作しないで放置していると、草がボウボウとなり、隣地に迷惑をかけることになりますから、耕作していなくても、草刈りなどの手間がかかります。建物は、地震などがくれば、修理費がかかります。地震などなくても、時が経てば老朽化し、修理費がかかるだけでなく、いずれ撤去が必要となります。撤去となれば、新しい家を建てるのとあまり変わらないほどの撤去費用がかかります。

 売れない土地・建物は、お荷物です。人口減少で住む家を求める人も、田舎では減る一方です。空き家も増える一方です、相続人の誰もが、このような土地・建物の取得を希望しないのは当たり前です。田舎の土地・建物は。マイナス財産としてカウントしなければならない時代となっています。

 このような傾向は、全国的にあります。数年前までは、相続人が取得しないで放置されている土地は、全国で九州全土に匹敵するくらいある、と報道されていましたが、最近は、北海道全土に匹敵するほどまでに広がったと言われています。


 〈相続や債務整理で問題に〉

 私のみのる法律事務所に相談に来るクライアントの中にも、最近、特に目立つのがこのマイナス財産といえる土地・建物の処理をどうするかという問題です。最近、当事務所が取り扱っている事件で、そのような場合に、弁護士として苦慮事例を紹介します。

 一つは。これまで述べた通り、相続事件です。現金数千万円が遺産として残っていました。その現金については、どの相続人も取得を希望しましたが、土地・建物は誰もいらないと言って、引き取ろうとしません。

 私が、土地・建物の管理・処分費用として、土地・建物を相続する人に他の相続人は、その取得金の中から支払いをするという案を出して、何とか解決したケースがありました。今もこうした問題で悩んでいる事件が数件あります、これからは、このような処理の仕方が普通となるのではないか、と思います。

 もう一つは、債務整理事件です。債務整理を頼まれ、自己破産手続を取るべきケースと判断したのですが、田舎に土地・建物を所有しているときは、簡単には済みません。この土地・建物があるだけに、簡単に免責決定とはならないのです。

 破産決定は出るが、管財事件となり、予納金を納めたり、土地・建物売却などの管財手続のため長い時間がかかることになり、自己破産手続を取り難いケースが何件もありましたし、今も悩ましい事件があります。債務整理をしたいと思っても、売れない土地・建物はお荷物になっているのです。

 (みのる法律事務所だより「的外」第351号から)


「いなべんの哲学」第3巻(本体1000円+税)、「兄」シリーズ 1話~5話(各本体500円+税) 発売中!
  お問い合わせは 株式会社エムジェエム出版部(TEL0191-23-8960 FAX0191-23-8950)まで。

◇千田實弁護士の本
※ご注文は下記リンクのFAX購買申込書から。

 ・「田舎弁護士の大衆法律学」シリーズ

 ・「黄色い本」シリーズ
 ・「さくら色の本」シリーズ



スポンサーリンク


関連記事

New Topics

投稿数911 コメント数376
▼弁護士観察日記 更新中▼

法曹界ウォッチャーがつづる弁護士との付き合い方から、その生態、弁護士・会の裏話


ページ上部に
くわばたりえダイエット