〈永世中立国〉
「永世中立国」という言葉を耳にしたことはあります。角川必携国語辞典には、「永久に国際間の中立の立場を守り、国際法上戦争に関係しない義務を負う代わりに、独立と領土の安全を他の諸国によって保障されている国。スイス、オーストリア」とあります。
他の資料によりますと、「他の国家間のいかなる戦争に対しても介入せず、また自国の防衛と中立侵犯防止のため以外には、いかなる国に対しても自ら戦争をはじめないことを義務づけられ、かつ国際的にも不可侵を保障されている国家の地位。現在、スイス(1815年)、オーストリア(1955年)などがこの地位を有する」とあります。
この「永世中立国」という国のあり方は、「完全戦争放棄」を宣言した日本国にとっても参考になります。特に、集団的自衛権を考える際に大変役立つと思います。どこの国の戦争にも加担しないのですから、集団的自衛権を理由にしても、戦争に力を貸すことはできないのです。
オーストリアは1955年に永世中立国になったとのことですから、第二次世界大戦後ということになります。スイスは1815年に永世中立国になったとのことですから、日本が「完全戦争放棄」の憲法を施行した昭和22年(1947年)5月3日より132年も前ということになります。
スイスは永世中立国であるため、第一次世界大戦(1914年-1918年)においても、第二次世界大戦(1939年-1945年)においても、中立の立場を貫きました。
スイスが1815年に永世中立国となってから140年が経った1955年に、オーストリアが永世中立国になったのです。140年もの時間はかかっていますが、素晴らしいことだと思います。私は勉強不足で、この快挙についてはあまり知りませんでした。
永世中立国が世界に一つでも多く誕生することは、日本の「完全戦争放棄」の規定が世界に広まる可能性を期待させるものだと思います。
永世中立国はスイス一国と思っていましたが、140年をかけてオーストリアが永世中立国の仲間入りをしたということは、日本国憲法の「完全戦争放棄」の規定も、時間はかかるかもしれませんが、いつか他の国も採用する可能性があるという期待を持たせてくれるものです。
粘り強く「完全戦争放棄」を世界に訴え続けていけば、日本に続き、「完全戦争放棄」を掲げる国が出てこないとは断言できません。世界で初めて日本が「完全戦争放棄」を宣言してから、まだ71年です。スイスが永世中立国になって、オーストリアが永世中立国になるまで140年かかっていることを考えると、まだまだ諦める段階ではありません。日本国及び日本人は、世界に向かって「完全戦争放棄」を採用するよう、訴え続けることが大事です。
〈先を行く「完全戦争放棄」の日本国憲法〉
永世中立国であるスイスは、「完全戦争放棄」はしていないとのことです。スイスは戦力を持っています。自国が攻撃されたら自衛戦争はできるのであり、そのための兵力やシェルター(防空壕)などは保持しているという話を聞いたことがあります。
これに比べ、日本国憲法の「戦争放棄」は、「戦力の不保持」、「交戦権の放棄」を宣言し、自衛戦争まで放棄したもので、「完全戦争放棄」です。歴史上、世界で初めての試みです。永世中立国という考えよりも、ずっと先を行く考え方です。まさに、世界に先駆けたものです。この憲法の心を世界に広め、平和愛好国間において名誉ある地位を占めることが、日本国憲法の心なのです。
なお、資料によりますと、スイスは2002年に国連に加盟しましたが、永世中立国という基本的立場は変えていないそうです。ベルギーは1831年に、ルクセンブルクは1867年に永世中立国と認められましたが、ベルギーは第一次世界大戦でドイツに敗れて1919年に、ルクセンブルクは1948年の憲法改正で永世中立国としての地位を廃止したそうです。
正確なことは分かりませんが、トルクメニスタンという国も1995年に永世中立国になったとのことです。これらの資料によりますと、現在世界で永世中立国は、スイスとオーストリアとトルクメニスタンの3国ということになるのではないかと思われます。
日本は、世界唯一の「完全戦争放棄」の国です。日本の仲間を増やすため、日本国と日本国民は世界中に働きかけなければならないと思います。日本国憲法の心を世界憲法の心にすることが、「国際社会において、名誉ある地位を占める」ことになると確信します。
「スイスは永世中立国だ」ということは、私も子どもの頃から知っていました。そのため、重要な国際会議はスイスで開かれることが多いようです。日本も、一日も早く「完全戦争放棄の国だ」と、世界中の子どもたちにも知られるようになってほしいと思います。どこかで戦争問題が発生したら、「完全戦争放棄の国」日本で、和平のための国際会議が開かれるようになってほしいのです。
(拙著「新・憲法の心 第3巻 戦争の放棄(その3)」から一部抜粋)
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