人権も欧米からの輸入品で、重要な人間社会の導きの理念ではあるが、自然に存在するものではないし、生物学的自然から生じたものでもない、頼りない政治的な観念に過ぎないのだ。
「遺伝子や細胞、脳の仕組みなどミクロのレベルの話から、人の行動と心理、そして生物多様性から生態系など、マクロのレベルの話までどんどん知識が増えて来ました」。ついこの間までこんな知識はなかったから「人生をどのように生きるべきか、一体人間の生きる意味とは何なのか、一体人間とは何か」こうした問いに、人間は答えることが出来なかった。
しかたなくこの問いに答えるためにひねり出した間に合わせの解答が「宗教であったり文学であったり、人の世のはかなさをうたう和歌、短歌、禅問答、西田哲学や最近では村上文学」といったところであろう。しかし、以上のような感情の世界と想像の世界の興奮と満足感を、今日の科学も解析しつつあるが作り出すことはできない。それで理系が馬鹿にしてきた文系創造物を、今一度再評価し取り込んで、人間の一元的な説明の体系を作りたいというのがエドワードウイルソン教授というわけである。
ところで、全然、話は違うが、わたしの事務所近くの西五反田の海喜館(俗称 怪奇館)をめぐる売買で積水ハウスが60億円を騙し取られるという仮登記事件があった。これには弁護士も司法書士も立ち会っているが、仮登記をうけつけて古典的な地面師に活躍の舞台を与えた東京法務局および品川出張所にも責任はないとは言えない。実印、印鑑証明ではなく、写真付きの国民番号カードの提示を求め、その写しを保管していればこの詐欺事件はおこらなかった。
司法書士会という業者団体と明け暮れして不動産決済のIT化をすすめずに、かなり遅れた業界幹部と一緒になって神聖な不動産登記教に一所懸命磨きをかけているうちにこんな事件が起こってしまったのではないか。本人意思確認を手抜きした司法書士には一片の言い訳も許されないであろう。日本の不動産の2割は未登記、所有者不明と言われている。相続未登記が原因だ。業者の独占利益と一体となって天下り確保と御用登記専門学者を使ってのイギリスでは40年も前に終わった登記システムの合理化をサボって来た報いだ。司法書士の過払い金談合体質、無能力者からの金銭横領、地面師に騙される登記、国民の批判の目が民事法務局とその傘下の団体に向かってゆくことは、それほど遠い将来のことではなかろう。