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 〈あなたは損をさせられるかも。裁判外任意債務整理に潜むワナ・・・、資格者と業者の談合リスク〉

 

 2 騙されてはいけない

 任意整理とは、分割等による返済条件の変更や、過払い金が出た場合には、その返還を求めて、返済計画を立て、支払うべきものは支払うというもので、貸主、債権者と、借主債務者が直接話し合ってできる手続きであり、基本的には裁判所や特別な法律も関与しないし、手続きとしてだけ見れば易しい手続きです。

 しかしこのやさしい手続きにおいても、現実には、あなたの交渉相手は、貸主である大企業ですし、あなた自身の申し入れや希望に素直に応じることはまずないでしょう。

 そこで、結局、あなたは自分の要望を相手方に伝え、法律的な観点からの要求も伝えるために、弁護士や司法書士に、あなたの代理人になってもらって債権者と交渉し、結論を出してもらおうと考える。そしてその業務を、弁護士や司法書士に委任するということになるわけです。

 しかし、この債務整理の委任契約をするには実は大きなリスクを伴います。

 まず委任をする、お任せをする当の弁護士、司法書士はプロなのですから旧利息制限法や、旧貸金業法やそれにともなう重要な判例などの知識は当然に豊富です。その点に関しては、あなたは資格者に全面的にお任せするしかありません。

 しかし、もし良心的な弁護士、司法書士でしたら、あなたの依頼をうけて、あなたから、業者の事故情報登録公開をともなう債務整理業務の委任を受ける前に、その債務整理業務着手の前段階として、まず何よりも、債務整理業務の前提となる「正しい残高を調査する」ために、あなたから依頼を受けて、消費者金融業者にたいし、「貸金業法19条2の権利者であるあなたの情報受領権の行使」をあなたに代わって実行し、その結果、取り寄せた業者からの取引履歴によって、正しい債務の残高を知るため、旧利息制限法により再計算します。

 この取引情報受領権の行使自体はあなたの権利の行使ですから、その行使については、指定信用情報機関にも、事故情報としては、記録も公開もされません。数社の債権調査についてその結果がでましたら、そこに金額の記載された各社別一覧表を作り、取り寄せた業者の履歴とともに、弁護士、司法書士から、見せてもらって、依頼人であるあなたは、それを見て、初めて、自分なりに自己の支払い能力を見定めた上で、あなたなりの債務整理の方針を決めます。一度持ち返って家計を見直しながらご家族と相談するのも良いでしょう。それから、その相談結果を参考にして、あらためて依頼した弁護士や司法書士と面談し、その結果も参考に、債務整理計画を代理人と決め、初めて、その方針に基づいた債務整理事務業務を弁護士、司法書士に「委任」するのです。

 ところが、現在では、大半の司法書士や弁護士は、この大事な事前の正確な残高確認業務をとばし、依頼人のあやふやな借入期間や残高についての記憶だけを頼りに、いきなり債務整理業務を受任し、その通知を消費者金融業者に送るとともに取引履歴取り寄せの依頼書もその委任通知と同時に業者に送るのです。その受任の通知は、俗に「介入通知」と呼ばれますが、消費者金融業者は、その介入通知を受け取ると同時に、貸金業法に基づいて事故情報として指定信用機関の事故情報ネットに公開し、5年間、住宅ローンでは7年間、依頼人のあなたは、消費者金融業者やカード会社との取引が出来なくなってしまいます。

 現状では、検索エンジンや新聞、ラジオ、テレビで広告している弁護士司法書士の中で、このような正しい方式をとっている事務者は本当に少数です。

 全国の司法書士向けに、発せられた司法書士全国団体の債務整理方針は、平成29年に民事法研究会から出版された日本司法書士連合会編「債務整理事件処理の手引」にも記載されているように、ごく普通には、依頼者の方から事情を聴いて、信用情報登録のリスクを説明し、その上で依頼者の方から委任状を受取り、同時に業者への取引履歴も請求することになっています。その資格者の介入通知が届くと同時に、請求は止まりますがあなたの債権は事故債権として公開されるのです。今日の多数の司法書士の債務整理手続きにおいては、このような債務者にとって不利益な手続きが平然と行われています。

 そして、多重債務の被害者の多くは、その事、自分の債務について情報を知る法律上の権利(新貸金業法19-2)があるということ知らないですし、そして専門家自身が、自分の事務上の都合や便宜や効率を考えてなのか、そのような方法を依頼人である国民消費者に教えてきませんでした。

 さらに、資格者へのこの債務整理委任契約の締結には他にも気を付けなければならない様々な注意事項、リスクが伏在しています。

 まず、第1に旧利息制限法や旧貸金業法の規定などを知るべくもない素人のあなたが依頼者であり、その依頼を受ける相手方の資格者はプロであり、一方、相手方となる債権者、消費者金融業者は、資格者以上に法的(判例等)情報も、事実上の情報も豊富に持っています。

 良心的な弁護士であれば、又、良心的な認定司法書士である場合には、その訴額140万円(請求額140万円)の範囲内で、依頼人であるあなた方の利益を最大限に計るように、訴訟による解決策を前提として和解交渉を代理するでしょう。

 判決にせよ和解にしろ、それが、裁判官の面前での決着と判決書、和解書であれば公正は保たれます。その点からしても私の事務所では、依頼人の方にその利益、安全を説明し、理解いただいた上で、従来から、判決又は裁判上での和解、又は判決取得を勧めています。しかも貸金業法事件について多くの裁判例、最高裁裁判例が蓄積された今では、その手続きも決して難しいものではなくなったのです。

 しかし、大半の事務所では、法律事務所を含め、裁判外での消費者金融業者との任意和解や、債務者代理人と消費者金融業者との話し合いで、依頼人に返還すべき過払い金の額が決められています。その話し合いの内容や妥協案の成立過程について、債務者には、詳しくは分かりませんし、教えてくれるような資格者は少数です。

 消費者金融業者は、しばしば、債務整理案件の多い法律事務所や、司法書士事務所に、架電又は訪問してきて、債務者への過払い金の返還条件、例えば、返済元本の5割引き、3割引き、それに見合う支払時期の前倒しとか、そうした話を持ちかけてきます。中には、あらかじめそのような申し入れを承諾しておいて、返還金の回転を良くし、報酬の回収を早めようとするような資格者もいます。これは人民の権利を食い物にした、業者と専門家の談合そのものではないかと、数年前、朝日新聞社会面トップに報道されたこともありました。

 消費者が自己に係る正しい情報を得ることは、過払い金の返還請求では特に重要でしょうが、これまで専門家によっても、この国民の情報受領権への配慮がなされていなかったという事は座視すべきことではありません。国民消費者の情報受領権の軽視は様々な不正を生み出す元ともなるのです。

 前出の日本司法書士連合会が編纂した「債務整理事件処理の手引」の44ページには「過払い金返還請求事件は、その争点を争うことなく、任意交渉で貸金業者等から提示される低額の和解金額に応じれば、さほど時間を要することもなく比較的容易に過払い金の回収が出来、成功報酬も得やすい」とあり、司法書士の過払い金ビジネスの実態の一端について述べています。

 司法書士の場合は、請求額140万円までは、訴訟代理権があるのですから、依頼人の了解を得て、出来るだけ判決を得るようにし、回収を急ぐ依頼人なら、業者と話し合って少なくとも17条決定(和解に変わる決定)は裁判所からもらうようにするべきであるし、本人訴訟も決して難しくはないのですから、控訴を恐れて低額で業者と談合するなどのことはもってのほかということです。弁護士に対しても同様、依頼人は出来るだけ判決をもらうように弁護士に依頼するべきで和解であっても裁判上での和解とするよう依頼するべきで、そうすれば、5%の罰金はともかく元本は確実に戻ってきます。しかし、報酬の回収を急ぐ弁護士や司法書士の場合、そこまで熱心に取り組んではくれません。

 特に、依頼人の方も、これまでの返済圧力から逃れられたということで、明日からもう返済をしなくて済むとほっとしたうえに、何がしかの過払い金が、自分で積み上げて来た自分のお金なのにも関わらず、戻ってくれば臨時ボーナスが入って来たように喜んでしまうものです。

 そこで本当は100万円回収できるのに50万円の返還で裁判外での和解となってしまう。そんなことが珍しくは無いのです。

 日本司法書士連合会が編纂した「債務整理事件処理の手引」の165ページでは「過払い金返還請求事件については、依頼者と後日紛争となることがある。その多くが報酬のことであるが、回収額が少なすぎるといった不満も現れることもある」と論じていますが、そこからは、司法書士の債務整理とその誤った日本司法書士連合会の債務整理指針の影響で、市民と司法書士間の過払い金返還をめぐる紛争が、日常的に生じているらしいことが伺えます。

 しかし、実は、以上に述べて来た、債務整理に係る危険と損害は、簡単に防止できるのです。弁護士、司法書士が、債務整理を受任する前に、依頼人に代わってその情報受領権を行使し、正しい残高を依頼人に示し、依頼人とともに債務整理の方針を立て、裁判外での和解は避け、和解するにしても、争点と証拠を示して、裁判所で和解すれば、公正公平であるばかりでなく、報酬上のゴタゴタも資格者による不正も一切なくなるのです。

 裁判外での任意整理では、あなたが知らないうちに、消費者金融業者と資格者が談合して、消費者金融業者は出来るだけ返還すべき過払い金を安くしかも返済期間も先延ばしすることによる利益を得(他に貸し付けて稼ぐことが出来る)、業者化した資格者は、報酬を出来るだけ早く得て資金の回転を良くするための利益を得るために、あなたが本来得られる利益を犠牲にして、その共通する利益を実現しようとするわけです。

 裁判外での任意整理和解は、実は、債務者にとってこのような大きな危険、リスクのある和解契約なのです。



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