〈独占体質が弁護士長者を太らす〉
「過払いバブルがはじけた。今後の弁護士界をどのように見ているか」というダイアモンド・オンライン編集部 片田江記者の質問に、石丸弁護士は「一時より落ち着いている。・・だが、私の見方は、一部の選ばれたところに依頼者が集中しているということだ。全体の数が減っているというものもあるが、偏りが出ているといったほうが正しいだろう」と答えている。
大宣伝戦の勝者である「一部の選ばれたところに依頼者が集中している」というのは事実であり、その反面で、過払いバブルあやかり派の弁護士司法書士が、どんどん脱落し始めている。これも、当然に生じた市場選択の正義の結果ということであろう。本来、実力も、営業力も金も無いあやかり派の危機に着眼し、ダイアモンド・オンライン特集「弁護士界の憂鬱」第1回も報じているように、法律事務所の広告戦略と開業支援、コンサルテイングを提供する企業も現れた。そしてそのような会社は行き詰まった都市法律事務所の地方出張法律相談会を企画し、請け負ったりしている。
このような民間企業の進出に対しては、当然に地方地元弁護士会から企業に対し猛烈な抗議が来る。質問状も来るという。しかしこれに対しては企業サイドから当然に独占禁止法違反という紙爆弾のお返しが来るというわけだ。縮小する債務整理市場をめぐる弁護士司法書士間の生き残り競争においては、当然に報酬ボッタクリや、過払い金横領といった刑事事件、さらには一時は減ったかに見えた事件屋や消費者金融と提携する弁護士、司法書士事務所が増えてくる。
こうなると、元左翼正義独占派弁護士や司法書士が元気を盛り返しそうだが、かって猖獗を極めていたヤミ金融が収益性の激減した市場から(司法制度改革下での弁護士や司法書士の活躍の結果でもある)撤退して行ったように、正義派弁護士司法書士の糾弾を待つまでも無く、過払いバブルパンクでカモとなる弁護士司法書士がいなくなれば自然に減ってゆく。
プロミスの久保社長が「もう、過払い金はこれ以上ない。今回の引当金が最後だ」と宣言し、他の大手消費者金融会社幹部も「もう過払いはヤマを越えました。われわれに請求してきた弁護士さんはこれから大変ですよね」(ダイアモンド・オンライン特集)と言っているそうだが事はそう簡単なことではない。しかも、旧利息制限法違反の罪とその償いから業者は永遠に逃れられそうにない。
というのは、消費者金融との取引における過払い金返還請求権の消滅時効の進行は、最後の取引の時から始まる、このことが最高裁判決で確定した結果、債務者が返済を続けている限りは消滅時効は進行しない。つまり全国に張り巡らせた無人君に毎月、1万円、5千円を10年20年返済し続けている律儀な債務者がまだ何十万人とおり、その人達からの過払い金返還請求からは逃れることは出来ないのだ。そして、このような優良顧客の存在を最もよく知っているのが消費者金融業者そのものなのである。
信義と面子を重んじ、恥を知りかつ用心深く、弁護士司法書士の資格カルテル暴利稼ぎの手伝いはしたくないと思っている中高年日本人は実に多い。このような人たちには「アデイーレを初めとした振興の弁護士法人」たちのメデイア、インターネット戦略も全く歯が立たないのである。
サラ金の有料顧客をなす信義と面子を重んじ、恥を知りかつ用心深く、弁護士司法書士の稼ぎを手伝いたくないと思っている中高年日本人の存在、消費者金融業者はこれら有料顧客の新規借入金への利息を年利7%代に下げるなどして、これらの有料顧客から過払い金の請求を免れようとしている。「一部の選ばれたところに依頼者が集中しているということだ。全体の数が減っているというものもあるが、偏りが出ているといったほうが正しいだろう」という石丸弁護士の見解も、実態は、大メデイア作戦を展開している「一部の選ばれたところ」でさえも、債務整理受注は頭打ちから減少に転じているのではないか。
そこで激突するマーケテイング屋交えての宣伝戦が最後の火花を散らしているというところなのだろう。だから石丸弁護士はラーメン業界への進出に着手し始めたのだ。規制改革と長期不況に青色吐息の資格業界の、生き残り戦略、弁護士カルテルで稼いだ超過利潤を元手に他業種進出第1号、これが石丸ラーメン店が意味するところのものなのではないか。