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 しかし、今日においては、もし「注釈 司法書士法」の著者がいうとおりに、「本条違反を理由として懲戒事由となる」(注釈 司法書士法 24P テイハン)から、法2条の「品位保持義務違反」のみを根拠に、地方法務局長が、司法書士を懲戒し、その司法書士に不利益を加えたならば、その処分は、憲法13条に違反する違法無効な行政処分となり、国家賠償請求の対象ともなるであろう。

 
 その場合、法2条のみを、ある行為(人権)規制の根拠とすれば、法2条の内容はあまりにも漠然不明確であるから、その規定は罪刑法定主義に反し、それに基づく処分は恣意的であり、行政裁量権の範囲も大きく逸脱するものとなる。従って、その処分は憲法に違反し、違法無効であると裁定されるに違いない。

 
 もっとも、実際には法務局長は、司法書士会会則の品位保持条項を違反処分の基準とし、その法務局長が基準とする会則においては「『汚職行為の禁止・・(等具体的規制事項)』をあらかじめ規定することが必要となろう。『会員の品位保持に関する規定』に係る会則の変更には、法務大臣の認可を要する(法54条1項))」(「注釈 司法書士法」400P)とあるから、上記の様な法2条のみを根拠とした行政庁による直接の処分はありえないだろう。

 
 しかし、問題は、司法書士会の執行部や綱紀委員会が、法2条の「品位保持義務違反」のみを根拠に、解釈により法務大臣の認可を得ずに、新しい基準を平気で作って、会員の行為を違法と判断、禁止してしまうことである。よくある事だが、この会員の権利侵害、強制会執行部の業務執行権の乱用問題は、現在も東京司法書士会で進行中である。

 
 従って、正しくは、司法書士法2条自体は、「本条違反を理由として懲戒事由となる」(注釈 司法書士法 24P テイハン)という著者の主張にも関わらず、訓示規定、努力目標なのであり、この規定だけを懲戒権行使の根拠として、司法書士会は、仲間の囚われの旅人である個々の司法書士に対して、法的強制力のあるものとして、脅してはならない。また統制の道具に使ってもならない。それは品位保持義務に反する。人権侵害行為である。

 
 今、司法書士会の作った成年後見のサポート団体「公益法人 リーガルサポート」が、内閣府より、公益法人資格の認可取り消しを警告され、司法書士会はパニック状態になっているが、これは実に皮肉なことでもあり、団体内に「危険因子」が存在する(内閣府)として警告を受けたという事は決して、横領背任事件のような目に見える不祥事だけの存在だけが問題となったということではない。

 
 平成12年度(2000年)に民法の改正法として成立した成年後見制度はその基礎理念が、現代における人権思想、憲法13条の個人の尊厳、個人の生命、自由及び幸福追求の権利は最大限に尊重されなければならないという原理におかれている。そこから、「自己決定権の尊重」「ノーマライゼーション」という二つの成年後見の指導理念が導かれている。

 
 改正前の成年後見制度、禁治産、準禁治産制度は明治31年民法制定以来の規定が戦後も改正されずに残って来たもので、19世紀ヨーロッパの私有財産制度の一部をそのまま引き継いだものだった。従って個人の判断能力の欠如を補うための制度、成年後見制度は、法は家庭に入らないという原則のもとで、もっぱら契約や法律行為の問題、私法秩序、私的自治の観点、ようするに財産管理の問題としてとらえられてきた。禁治産、準禁治産制度は、明治の司法代書人法の頃に遡る。従って、改正前の成年後見制度では個人の尊厳よりも取引安全と財産が重要視されていた。

 
 改正前成年後見法は、市場から判断能力を欠いた者を家庭にとじこめ排除するのが目的であった。判断能力を欠いた者は、戸籍に記載(登録)され公開される。この制度は、明治近代に始まる取引安全と迅速、資産保全、税収確保を重視する国の登記登録制度とも関連していなくもない。現代の成年後見制度が、長いこと人間の尊厳と生命の維持に不可欠な介護や見守り、本人の身上保護といった「事実行為」に対し消極的であったのは、このような我が国の成年後見の歴史にも原因の一端があるのであろう。

 
 「憲法13条の個人の尊厳、個人の生命、自由及び幸福追求の権利は最大限に尊重されなければならないという原理」を柱に始まった改正成年後見制度であったが、法案成立前、平成9年に法務省民事局から政府に提出された「成年後見問題研究会報告書」では、改正前薄かった介護や見守り、本人の身上保護といった「事実行為」に対する配慮については「これを成年後見人の義務とすることは、私法上の判断能力補完制度である成年後見制度において、社会福祉的事項を成年後見人の職務とすることにより、制度本来の趣旨を逸脱することになりかねない上、成年後見人に過重な義務を課することになり、ひいては適切な成年後見人を得られなくなるおそれがある」として消極的な見解が出され、これが改正成年後見法についての通説となって来た。



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