〈芦田均演説を広く知らせること〉
芦田均氏の憲法改正の動機に関する演説は、4分の3世紀が経過した今でも、日本国民に、世界人類に知ってもらわなければならない。地方弁護士としては、まず身近な地方住民に知らせなくてはならない。形振り構わず戦争反対を発信し続けることは、自分の使命と確信している。地方弁護士の使命と考えているからである。
プーチンのロシア軍が、ウクライナに侵攻したニュースが連日報道され、日本国民の中にも国防の必要性を感じている人が多くいる今、この機を利用し、国防費の増大を企てる政治家は大勢いる。それに賛同する国民も多くなっている。
しかし、日本国憲法は戦争放棄の規定を置くだけではなく、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記していることを忘れてはならない。一時のムードに流されることがないように、日本国憲法の真理と心に伝道するのは、弁護士の最も大切な使命であることを忘れてはならない。
地方弁護士として、地方住民に、この憲法改正の動機を教え広める伝道師になりたいと心に決めてから60年となる。地方弁護士は、地方住民に日本国憲法の考えを説き広め、日本国憲法を守ることを勧める役割を果たさなければならないという思いは、地方弁護士生活を重ねるにつれてより強くなっている。
日本国憲法、特にその中核となる戦争放棄の規定を守るように国民に、地方住民に発信する方法はいろいろあろうが、この憲法改正の動機を知らせることも有効な方法と確信する。この憲法改正の動機に関する演説の存在と内容を初めて知った時のインパクト(衝撃)は忘れられず、一人でも多くの人に知らせたい。そのためには、あらゆる機会を活用したい。私の著書も、そういう機会の一つとして活用する。
この演説は、国民や地方住民の琴線に触れられそうである。脳の奥に秘められた細やかで感じやすい真心に必ず触れるものと信じて疑わない。戦争をしたら敗戦国の国民のみならず、勝戦国の国民だって、悲惨な結果を味わうことになる。この演説が取り上げ語ったウクライナは、今、戦争の悲惨な結果を世界中に知らせている。
この演説は戦争の悲惨さを分かりやすく、文学的にも人の心に染み込むような表現力で迫ってくるような名文である。受け取る人によって、その印象は違うだろうが、自分は深く感動し、未だ忘れることはできない。その感動を一人でも多くの人に知らせたい。
〈戦争放棄規定を説き広める存在へ〉
今、このような演説のできる首相や大臣や国会議員は何人いるであろうか・安倍元首相のマリオの扮装姿からは、とてもこのような演説を期待することなどできない。9条改定など主張する政治家と、それに同調する国民に、この演説を知らせたい。
日本国憲法は、どれほど多くの人の犠牲の上にできたのか、太平洋戦争で日本人だけで300万人を超す死者と、一度限りの人生を、不幸な人生のままで最期を迎えた無数の人のことを忘れてはならない。第二次世界大戦では、世界中で6000万人とも8000万人とも言われる死者が出たことを忘れてはならない。
大学の憲法の講義で、橋本公亘教授が読み上げてくれた芦田均憲法改正委員会委員長の憲法改正の動機に関する演説は、地方弁護士になった身としては、地方住民に教え広めたい。地方弁護士は、地方住民に日本国憲法、特に戦争放棄の規定の考えを説き広め、日本人は自らが戦争放棄の規定を守ることのみならず、戦争放棄の規定を世界中に広め、他国でも取り入れることを勧める伝道師とならなければならないと確信する。残された人生は、戦争放棄を掲げる日本国憲法の伝道師となりたい。
日本国憲法9条の戦争放棄の規定の伝道師としては、芦田均氏の憲法改正の動機の演説を一人でも多くの人に知ってもらいたく、機会ある毎に紹介して来たし、これからも紹介し続ける。
これまで「戦争の放棄」と題する本は、25冊発行した。その中での主張の骨子は、①明治憲法を改正し、日本国憲法を創った動機と、➁その動機を明確にした憲法の前文と、➂それを具体的な条文にした憲法9条の三点は、日本国憲法の核心であり、ここを動かしては日本国憲法ではなくなってしまう。そのことを教え説き広め、それを守りたいし、守らせたいということである。
(拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)
「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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