司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 〈十分に示されていない「戦争絶対反対の心」〉

 「煩悩を完全に断つことはできない」という私の人生経験の印象を述べましたが、「戦争をしたいという欲望」は断つことができます。そもそも多くの人は、戦争をしたいという欲望を持っていません。それが、日本人のほぼ100%に近い人々の心だと確信しています。その点においては安心しています。この日本人の「戦争は絶対にしない」という心のあり方が、普段からあらゆる場面において、はっきり示されることが大事だと思います。

 しかし、この「戦争反対」という日本人の心が、はっきり示されているだろうか、という点については、不安があります。必ずしもそれが示されているとは言い難いのが昨今の状況です。

 日本人の100%近い人が共有している「戦争絶対反対の心」が、選挙や国会や内閣などの政治の場において、十分に示されていない気がするのです。「戦争絶対反対」の日本国民の真意が、どこかで歪められています。「戦争絶対反対」の国民の気持ちが、政治の場にストレートに届いていません。

 警戒しなければならないのは、「戦争も辞さない」などという欲望を捨てきれない権力者とその仲間に煽動されることです。そのためには、国民一人一人が、平時から「戦争は絶対にしない」という心のあり方をはっきり示しておくことが必要なのです。

 戦争に向かい出したら、「戦争絶対反対」の声は、掻き消されてしまいます。戦後70年間平和を維持してきた只今現在こそ、「戦争絶対反対」の声を上げるチャンスなのです。戦争は絶対にしてはらないのです。戦争へ向かう芽は、少しでも早いうちに、徹底的に摘み取らなければなりません。現在は、そのような状況にあると確信します。そんな思いで、こんな駄文を書いているのです。


 〈「戦争放棄」の不退転の決意〉

 「行動」とは、「個人または集団が目的をもって、実際にからだを動かすこと」(角川必携国語辞典)です。「戦争」は、「国と国とが武力を使って争うこと」(前同)です。つまり戦争は、ある国民と他の国民が武力を使って争う行動です。戦争という行動を防止するためには、人類一人一人の心の中で、「戦争はしない」という不退転の決意が不可欠です。そのためには、人間はなぜ戦争という行動に及ぶのか、ということを掘り下げることは無意味ではありません。

 国家という、国民という個人の集団が、戦争という行動に走るのを防止するためには、集団を構成している個人の行動のメカニズムを掘り下げることが必要です。個人の行動は、欲望によって方向付けられ、その方向にからだを動かすことによって行動が発生します。

 戦争という方向に向かう原動力は、国民一人一人の欲望です。ですから、戦争を防止するためには、戦争に向かう国民一人一人の欲望をコントロールすることが大事なこととなります。

 戦争を防止する2つの柱、つまり1つ目の柱は戦争を防止する仕組みであり、2つ目の柱は戦争を防止する心ですが、2つ目の柱である戦争を防止する心のあり方を整えるためには、欲望を掘り下げなければならないとの思いで、この文を書いてきました。

 そして、辿りついた結論が、「戦争をしたい」という欲望については、これをコントロールするとか、調整するとかいうレベルの時代は過ぎ去り、21世紀の現代では「戦争をしたい」という欲望は、完全に放棄しなければならない、というものでした。「戦争は絶対にしない」という、人類一人一人の揺るがない決意が不可欠です。

 釈迦が教える「少欲知足」、つまり欲を少なくして、足るを知るという程度の欲望のコントロールでは、「戦争をしたい」という欲望に関する限り不足です。完全に放棄しなければならない状況となっているのです。21世紀の今日、核兵器が充満している地球においては、「戦争をしたい」という欲望は、「完全放棄」しかないのです。

 21世紀の地球上においては、「戦争絶対反対」、「戦争はしない」、「戦争放棄」、「戦力不保持」という考え方しか戦争防止の方法は残されていません。人類一人一人が「戦争放棄」の不退転の決意を心から持たなければならないのです。

 そのことを世界に先駆けて宣言したのが、日本国憲法9条の「戦争放棄」なのです。まず、日本国民一人一人が、この戦争放棄の信念をどこまでも貫くことが、戦争を防止し、平和な世界、安全な地球のために不可欠なのです。

  21世紀に日本人として生きる私たちには、人類レベルというか地球レベルの重大な責務があるのです。=この項終わり

 (拙著「新・憲法の心 第22巻 戦争の放棄〈その22〉」から一部 抜粋)


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