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 〈「100対0」判決の無神経さ〉

 田舎弁護士が、自分の力で、市民の日常生活の中で絶えず発生するトラブルや悩みごとを解決するためには、弁護士自身に市民のトラブルや悩みごとを解決してやれる力がなければならないのです。

 その力は、法律の条文や判例を知っているというレベルでは不足です。市民間に発生しているトラブルや悩みごとは、法律の条文や判例だけで解決できるものではなく、人間の心を察する力や、経験則が要求されるケースが多いのです。解決策を見出すためには、人間力という総合的能力が要求されるのです。離婚問題一つ解決するためにも、夫婦間の心の機微を心得ていた方がいいに決まっています。いろいろな面で経験が求められているのです。

 48年間田舎弁護士を経験して実感することですが、市民間のトラブルを解決する場である裁判の場が、市民の感覚とか常識から乖離し、法律理論と近代自然科学理論に偏重し過ぎて、世間の常識とか人の心を、軽視したり、無視していると思えるため、市民が判決に納得しないケースが見られることが少なくありません。

 そのうえ、判決はどちらか一方を勝たせ、他方を負かせますので、オール・オア・ナッシングという格好になってしまいます。てすが、市民間に発生し、裁判になるようなトラブルには、どちらにもそれ相応の言い分があります。それを100対0とする判決には、根本的な間違いがあると言わなければならないのです。裁判の場という非日常とも思える場で、市民間のトラブルを解決するというだけでは、本当にいい解決はできないと、48年間の田舎弁護士の体験から確信するに至っています。

 民亊裁判所は不要だとまでは言いませんが、改善しなければならないことは山ほどあります。まず、前記のように市民間のトラブルで「100対0」という判決を出し、平気でいられる無神経さを反省しなければならないと思います。


 〈多方面の経験を活かす町医者のような弁護士に〉

 それと同時に、弁護士や弁護士事務所のあり方についても、考え直さなければならない点は沢山あります。

 弁護士に今、求められていることは、弁護士の仕事の場を、裁判所という非日常の場にだけ止まっていないで、市民の日常に進出しなければならないことだと確信しています。弁護士を頼むことは、具合が悪くなったら、まず町医者に行くように、市民間のトラブルや悩みごとが発生したら、まず弁護士事務所に行くようになってもらわなければならないのです。

 弁護士が町医者のように、市民の日常生活に密着し、市民の日常茶飯事とも思える場を仕事の場にするためには、市民が気軽に弁護士事務所に足を運べるようにしなければならないのです。いつ行っても留守だったり、電話でも対応しないようでは、どうしようもありません。

 まず、弁護士事務所の受け容れ態勢を整えなければならないのです。そのような思いを込め、私の法律事務所は、事務局はいつでも7~8人はいますし、若い弁護士もいます。土日祝日を含めて、年中休みなしの看板を掲げています。法律問題に限らず、悩みごと相談を含めて、相談はいつでも無料で乗ることにしています。

 私の法律事務所の仕事は、裁判という非日常の仕事場だけでなく、市民に普段発生しているトラブルや悩みごとの解決という日常の場での仕事を大事にしていくつもりです。町医者と同じです。まず、普段の生活の中で、トラブルが発生したり、悩みごとがあったら、私の「みのる法律事務所」に声をかけて下さい。

 50年になろうとする弁護士の経験があります。既に117冊の裁判体験記、病気体験記、生き方体験記の本も発刊しています。法律だけでなく、多方面にわたって経験を積んでいます。皆さんの力になれると確信します。法律に限らず、何でも相談して下さい。自分の力で解決できないことは、他の然るべきところを紹介させてもらいます。

 間もなく、半世紀になろうとするところまで、田舎弁護士をさせてもらい、90歳までは、田舎弁護士として現役を張ることを宣言している身としてしては、これまで培った人間力を駆使し、ここまで育ててくれた皆様に恩返しをしたいのです。=この項終わり

 (みのる法律事務所だより「的外」第352号から)


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