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 検察審査会の起訴議決に基づき強制起訴された明石歩道橋事故の業務上過失致死傷事件での免訴判決に対して、指定弁護士が控訴した。しかし、小沢裁判の時同様、これに疑問や慎重さを求める声が聞かれる。それは、控訴の中身の妥当性ではなく、この制度そのものの、ある意味、不完全ととれる点に対するものだ。

 それは、まず、指定弁護士による控訴の正統性という問題である。検察審査会法41条の9第3項には「指定弁護士は、起訴議決に係る事件について、次条の規定により公訴を提起し、及びその公訴の維持をするため、検察官の職務を行う。ただし、検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮は、検察官に嘱託してこれをしなければならない」と規定されている。

 根拠になるととれるのは、「検察官の職務を行う」という、この下りだけだが、同条には、付審判制度に関連して指定弁護士を規定した刑事訴訟法268条2項にある「裁判の確定に至るまで」という、控訴を含み得ると解釈できる職務期間の文言がない点が指摘される。むしろ、ここに強制起訴での指定弁護士の役割として、検察審査会法の立場を読み取れるという見方だ。要は、起訴議決という決定の実行し、公訴を維持することを目的として、形式的に検察官役となった指定弁護士が、検察審査会不在で控訴の判断権を持つというところまでを想定していないととれるのではないかという話である。

 構造的な不備をいう意見もある。検察の控訴判断はもちろん、担当検事のみによるものではい。上級庁も含む、組織的な検討がなされた上の判断であり、ここに一定の客観性の担保をみる見方すれば、指定弁護士の控訴可否は、非常に危ういものを含むというものだ。そこを証拠の熟知というような点から、彼らだけに預ける構造には、問題がないのか、ということである。

 別の観点からの話としては、そもそもこの仕事を弁護士が行うことへの違和感をいう声もある。あくまで便宜的に弁護士が検察役に当てがわれているとはいえ、控訴による被告人の不利益を批判する弁護士が、積極的にそれを進めるという姿勢に転じているようにみえるのは、同業者からいかがなものか、とする意見が出ている。制度構想の段階で、弁護士会もこの点でひっかかり、当初、慎重姿勢であったという事実もある(「『指定弁護士』が生む副作用」)。

 明石歩道事故の控訴判断では、指定弁護士か遺族と話し合い、意見交換のうえ、「不参加の遺族も含めた総意」として決定した、という報道もある。裁判員時代、あたかも市民判断に正統性を見出して「疑わしきは法廷に」を実現しようとする制度の果てにあった、「市民判断」とはくくりきれない遺族意思が直接反映した刑事裁判の継続という現実。あるべき刑事裁判や被告人の権利から、どんどん遠ざかっていくような感じに陥る。



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