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「法曹一元の給源のためには弁護士の増員が必要」

 こう言われても、いまや若い弁護士で、ぴんとくる人はいないだろう。あるいは、中堅以上の弁護士の中には、まるでなつかしいものを見るような気分になる人もいるかもしれない。

 今、法曹人口増員の問題がクローズアップされていても、こんなことを言う人はいない。そもそも「法曹一元」という言葉自体、死語に片足を突っ込んでしまっているという印象すらある。

  しかし、47年前の法曹界は、全く違っていた。1964年、法曹一元の実現可能性を議論した臨時司法制度調査会が意見書の中で、法曹人口増員を打ち出した時、実は日弁連は、それを批判する意見書の中でも、法曹一元制度実現のための弁護士人口増加の必要性は認めていた。

 ただし、こう付け加えることも忘れていなかった。

 「法曹の質の低下を招かないよう特別の配慮を払う必要がある」

 1980年代後半から、法曹人口増員問題は、検察官志望不足や受験生の滞留問題などに端を発した司法試験・法曹養成制度改革というテーマの中で、再び注目される。

 法曹基本問題懇談会から法曹養成制度等改革協議会へ。思えば、このころの弁護士会には、まだ増員への大きな警戒感と強い抵抗感があった。過当競争と質の低下、弁護士偏在解消への無効果、需要創出への懐疑・・・。

 結果として、日弁連が1990年代半ばまでに、2度の臨時総会を経て、合格者年1000人の増員路線を固める過程で、こうした増員慎重論は、弁護士会の「ギルド体質」批判を恐れる、時として自虐的ともとれる自己改革論の前にかき消された。そして、その後、長く「改革」に後向きの論調として位置付けられることになる。

 この位置付けは1990年代後半、増員問題が規制改革の流れの中で議論されるようになっても、基本的に受け継がれていく。

 「規制改革は司法の改革になじまない」

 こういう見方は、法曹界のなかにもあった。だが、日弁連は既に劣等に押し込めた増員慎重論を今さら省みることができないまま、「国民のため」を旗印に、司法改革路線の上を増員へ突き進むことになる。慎重論を「改革」への「抵抗勢力」として。

 そして、2010年、司法制度改革審議会が発表した「改革」のバイブル、最終意見書で掲げた合格年3000人は達成されなかった。増員とそれとともに作られた法科大学院、その果てにあった弁護士の就職難、経済苦境、合格率の低迷、そして「質」低下の問題。今、ようやく日弁連も、この増員ペースを危険視し始めたが、推進派の大マスコミは、やはりこの慎重論を「抵抗勢力」であるかのようになじっている。

 法曹一元、法曹養成、規制改革。法曹人口増員論議のステージが変わる度に、弁護士は何を得て、何を捨ててきたのだろうか。日弁連・弁護士会は再び、あの日の「質」へのこだわりを呼びさまし、今度こそ、対外的批判を恐れず、情勢論に傾斜することなく、この問題に向き合うことかできるだろうか。

 そのことが、これからの新たなステージでの議論と、法曹人口の行方に大きくかかわってくるはずである。



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