司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>




 

 今年の司法試験合格者数が前年を378人上回る1781人と8年ぶりに増加し、政府の最低死守ラインとされた1500人を4年ぶりに上回ったことを新聞各紙が報じている。その要因は、今年から認められた法科大学院での在学中受験にある(前記合格者数の内637人)という分析でも、ほぼ共通している。

 しかし、この在学中受験という制度が、そもそもどういう意味を持つものだったのかについて、言及しているものがみられない。法科大学院経由より格段に早く法曹資格を取得できる道として、人気が高まった予備試験に対抗する形の、いわば時短化による学生獲得策として導入された、というところまでは、言及している報道もある。

 しかし、これはいうまでもなく「プロセスによる養成」を売りにした法科大学院の理念とは、明らかに矛盾しているともいえるものである。これをめぐっては、法科大学院制度を擁護する側からも、当初、強い反発が出た。

 「法科大学院の在学中に司法試験の受験を認めるということは、法科大学院の課程を修了していない(つまり、『教育途上の者』)に、『裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうか』を試す機会を与えることを意味します。これが、法科大学院を『法曹養成制度の中核』と位置づけた司法改革の理念と法科大学院制度の趣旨に反することは明らか」

 「「法科大学院に在学中の学生が司法試験に合格すれば、試験の時点において、『こうした知識と能力を有する』と判定されたことになるわけですから、その者には、受験後に法科大学院に在学する理由はまったくないということになります。したがって、法科大学院在学中に司法試験の受験を認め、合格させることは、法科大学院制度の趣旨からすれば、まさに、『背理』」(「ロースクールと法曹の未来を創る会」〈「Law未来の会」〉の、法務大臣への法案提出中止を求める要請書)

 逆にいえば、この在学中受験が認められたことで、法科大学院制度の理念の底の浅さがむしろ露呈したといえる。予備試験との競争条件を有利にしたいということを優先したととれることで、法科大学院教育そのものの正当性、いわば純粋な法曹養成を目指した理念に基づくものというよりも、少子化時代の大学おこし、その生命線ともいえる学生獲得が、そもそも第一目的であり、それこそが本音なのではないか、というところまで疑わせるものになるのである(「法科大学院在学中受験『容認』という末期症状」)。

 いわば政策的に誘導される結果である今回の合格者増加は、前記制度の本音から導かれたものであって、およそ在るべき法曹、在るべき法曹養成から逆算された結果とは言い難いといなければならない。そして、前記在学中受験に反対した制度擁護者の「正論」は、逆にそれを掲げるだけでは、予備試験人気の歯止めにはならない、という意味で、完全にその理念そのものの価値も、志望者から見切られている現実を示したといえるのである。

 日本弁護士連合会も、合格発表の即日、会長談話を発表しているが、その中で、今後を注視するとは言っているものの、在学中受験「容認」が意味する法科大学院制度の現実に触れるところはない。

 もっとも、各紙が数年ぶりに増加に転じたことを強調する司法試験合格者数だが、いわば今回の在学中受験による結果は、そのまま翌年に受験しても合格を想定出来た優秀層を含む人材のいわば「先取り」的意味を持ってしまっているので、当然、来年以降、今回のような合格者増を見込めるという話にもならない。

 在学中受験という、本来の理念に基づく制度論からの「禁じ手」が、その本音の狙い通り、法科大学院制度を浮上させるものになるかも、今のところ、全く見通しは立っていないといわなければならないのである。



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