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 〈戦争を長期化、拡大化、深刻化させるウクライナ武器支援〉

 80歳記念本として「地方弁護士の役割と在り方(第2巻)――地方弁護士の社会的使命――」を書いていたタイミングで、プーチンのロシア軍のウクライナ侵攻と民間人大量虐殺のニュースが連日流れた。今こそ芦田氏の演説を地方住民に知らせるようにと、天から命ぜられているような気がしてならなかった。

 戦争は絶対にしてはならない。させてはならない。地方弁護士には、戦争を絶対させないために、国家機関、地方機関、国民、地方住民に働きかけなければならない社会的使命があると確信する。

 そんな思いで、令和4(2022)年5月号の事務所便りに、「戦争を長期化、拡大化、深刻化させる武器支援」と題して、次のような駄文を書いた。

 「ロシアのウクライナ侵攻の報道に接し、プーチンは気が狂ったのではないかという思いがする。正常な人間のすることとは、とても思えない。それだけに追い込まれたら、核のボタンを押さないとは言い切れず、恐ろしい。

 これに対する米国を始めとする諸外国の中には、ウクライナに武器支援をしている国が多く見られる。プーチンの暴挙に対し、腹を立て、ウクライナ軍を支援するという気持ちは良く分かる。ウクライナ軍に    武器を支援したいという気持ちも分かる。

 しかし、武器の支援は止めるべきだ。武器の支援によって、戦争は長期化、拡大化、深刻化する。追い詰められたら何をするか分からない狂人を相手にしていることを忘れてはならない。

 戦争が長期化、拡大化、深刻化すれば、ロシアの軍人も、ウクライナの軍人も死傷する人が増えることは目に見えている。軍人ばかりではなく、民間人にも死傷者は多く出る。人権侵害は当然の如く行われる。戦争は犯罪のデパートである。

 この世界で最も大切なものは、人命と人権である。戦争が長期化、拡大化、深刻化すれば、その人命と人権がより多く侵害される。戦争はしてはならない。戦争になったら一日でも、一時間でも早く止めなければならない。止めさせなければならない。

 ウクライナに武器を支援することは、火に油を注ぐことになる。戦争を止めるには、闘わないことが一番簡単で、且つ効果的な方法である。

 ロシア軍が侵攻した時点でウクライナは抵抗などせず闘わないで、降伏すべきであった。そうしていれば、こんなに犠牲者は出ていない。これから先も犠牲者はでない。

 日本は憲法で戦争放棄をしている。日本なら憲法9条に従い闘わないで占領されることになる。闘わないのだから、戦争にはならず、人命も人権も侵害されない。

 一旦は占領されることになるが、国際社会は黙っていない。いずれ占領状態は、どこかの時点で必ず解消する。日本国憲法は前文で、『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』と明記した。それは、そういうことを見越しているからである。

 フセインのイラク軍のクウェート侵攻では、クウェートには闘う戦力がなかたから激しい戦争にはならなかった。武力がなければ戦闘にはならない。憲法9条の『戦力不保持』の規定は、戦争しないための制度的保障である。

 クウェートは一時占領されたが、後日国際社会の働きによって、占領状態は解消した。日本国憲法の前文通りとなった。ウクライナも一時占領されたとしても、必ず占領状態は解消される。

 プーチンという気が狂ったとも思える男の指揮するロシア軍と闘わせるために、武器を支援する米国などの国々のやり方には、日本は反対すべきである。少なくとも日本は、武力は勿論、戦争を長期化、拡大化、深刻化をさせることになる物資は送るべきではない。

 ウクライナを支援するつもりで武器支援をすることは、『もっと戦争を続けろ』『もっと闘え』と言うことと同じであり、よりウクライナ国民に悲惨な思いを強いる結果となる」。


 〈枝葉末節の法律解釈論より哲学の発信を〉

 「我々日本国民は、感情的になり過ぎず、戦争を放棄した世界唯一の国の国民として、冷静にウクライナ国民が一人でも多く助かる方策を考え、その考えを発信しなければならない。岸田首相(当時・編集者注)の指導力に期待したい。

 しかし、政府は『ドローンや防護マスクや防護衣は防衛装備品に当たらない』などと詭弁とも思えるつまらない議論をしている。

 枝葉末節の法律の解釈論より『人命と人権を守るためには戦争はしてはならない』という根本的な哲学を発信しなければならない。

 一日も早く戦争を止めさせる方法を考えなければならない。後のことは、その後で考えればよい。戦争放棄と戦力不保持を宣言している憲法を持つ日本国は、早期に戦争を止めさせることを提言しなければならない」。

 少し長くなったが、事務所便りの駄文を紹介したのは、このような格好で地方住民に対し、憲法の心を伝道している一例を紹介したかったからである。

 毎月1回このような事務所便りを発行し、1000人近くの地方住民に配布している他に、地方紙に寄稿したり、講演などをし、憲法の伝道師のような役割を果たしていることを知らせたい。これは地方弁護士の社会的使命は、人命と人権を守ることにあると確信しているからである。

 (拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』から一部抜粋)


「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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