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 〈権力の威嚇に怖がっていては真の学者になれない〉

 前述した日本学術会議委員会の広渡清吾・東大名誉教授の、次の言葉をもう一度紹介します。

 「日本学術会議法では、会員は学術会議の推薦に基づいて、総理大臣が任命するとあり、これまでは推薦したとおりに任命されてきた。今回は法の趣旨を曲げており、違法の疑いが大きく、かつ不当だ。問題は人文社会系の学者に限定して任命を拒否したこと。現代社会を批判的に分析しないと成り立たない学問が狙い撃ちされている。威嚇すれば怖がるだろうという、委縮効果を考えているとしか思えない」

 広渡氏の「現代社会を批判的に分析しないと成り立たない学問が狙い撃ちされている」との指摘には、深く共鳴します。学問の自由に対する侵害の常套手段を見事に言い尽しています。的を射た指摘です。

 これまでも述べてきましたが、学問は、権力や、世間や、強い集団等の考え方に異を唱えるところに本質があります。それがなければ、学問研究とは言えないのです。それが、権力者によって、狙い撃ちされるようなことがあっては、学問の自由は保障されません。学問研究は成り立たないのです。

 とかく権力者は、その意を通すためには、その考え方に従わせようとするものです。それは過去の沢山の事実が物語っています。それが戦争につながっていく危険の前兆なのです。

 広渡氏は、「威嚇すれば怖がるだろうという、委縮効果を考えているとしか思えない」とも述べていますが、共鳴します。安倍元首相や菅前首相の考え方に従い、政権から認められようとして、本音を言わずに、政権の顔色を伺うような学者は、御用学者です。権力に媚びへつらい、その言いなりになっている者で、こんな輩は、学者などとは言えません。権力者の威嚇を怖がっていては、真の学者にはなれません。

 私はこれまで、憲法9条に関する冊子を25巻発刊していますが、その中で、安倍政権の御用学者と思える学者を批判してきました。言い過ぎではないかと思いつつ、「9条が放棄している戦争は、侵略戦争だけで自衛戦争は放棄していない」とか、「自衛隊の持っている武器は戦力ではない」とか、「集団的自衛権の行使なら、日本も戦争できる」などと言う学者に対しては、時勢や権力に調子を合わせ、世間の人気を得ようと諂う「曲学阿世の徒」とまで言ってきました。

 このような言い方も言い過ぎると、そのことが学問の自由に対する侵害となるのではないかと思いつつも、権力と結び付いている学者に対しては、腹が立って我慢できないのです。「そんな考えが本心なはずはないだろう」とか、「戦争を本当にやっていいと思っているはずはないだろう」と、思ってしまうのです。戦争を肯定することは、どんな理由であろうと納得できません。

 学問は現代社会を批判的に分析しないと成り立たないのですから、権力者の考え方に媚び、権力者の考え方に異を唱える学説に対し、攻撃するする学者に対しては、敵意さえ覚えてしまうのです。


 〈信念と良心に従うべき〉

 安倍元首相も菅前首相も、学者を甘く見ているような気がしてなりません。憲法学者の中にも、御用学者と思えるような輩もいないとは断言できませんが、それは極一部で、多くの学者は、信念と良心に従って、学問研究をなしているのです。一部の御用学者の学説などを盾に取って、9条改定など強引に進めたら、学者も国民も黙っていないはずです。

 その一端を、学術会議問題で、学者も国民もはっきりと政権に知らせなければならないのです。国会での議論に任せきらないで、国民も声を上げなければなりません。私の駄弁本も、その声の一つです。国民一人一人が「ツイッターデモ」でもすれば、その効果は絶大だと思います。

 選挙の際にしっかりと人物を見極め、国民の代表に相応しい国会議員を選出することがなによりも肝心です。選挙をもっと重視する必要がありそうです。ですが、何年間に一度の選挙を待っていられないこともあります。国民は、あらゆる手段を使って、国民の考え方をその都度、政権に伝えなければならないのです。

 信念とは、それが正しいと堅く信じて疑わないこと。良心とは、自分の言動が道徳的に善か悪かを判断し正しいことをしようとする心です。学者は、この信念と良心がなければ、真の学問研究はできません。

 中には、学者を自称しているが、名誉と地位を求め、曲学阿世の徒に成り下がっていると思われる者もいるでしょうが、ほとんどの学者は信念と良心に従って、真理を探究しています。政治家の中にも、学問に熱心で、その道の専門家も少なくないでしょうが、地位と権力だけに人一倍拘りの強い政治家などは、学問に口出しなどすべきではないのです。安倍元首相や菅前首相は、私の目にはそのような政治家に見えますが、的外れでしょうか。

 (拙著「新・憲法の心 第29巻 国民の権利及び義務〈その4〉」から一部抜粋)


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