〈多くの仕事をしていない地方弁護士〉
事務所便り第382号は、前記駄弁句にそのようなコメントを述べた後に、さらに項を変えて「盲導犬になりたい――地方弁護士の役割と在り方」題して、次の通り述べた。
「闘犬的な仕事も番犬的仕事も、地方弁護士としてやってきましたが、これからは先が見えないで悩んでいる地方住民のために、道案内をする盲導犬的仕事をしてみたいのです。
80歳記念本の一冊『地方弁護士の役割と在り方』は、使役犬、英語ではworking dog(ワーキングドッグ)に準えて述べてみたら、分かり易く親しみ易い本になるのではないかなどとの考えが湧いてきました。その思いをそのまま前記の通り『闘犬や 番犬なども いるけれど なれるものなら 盲導犬に』と詠みました。文字通り駄弁句です。
地方弁護士を52年間経験させてもらっています。今年の5月20日で満80歳となります。暇潰しに『80歳記念本』を出そうと決めました。一つは、『人生100年時代の年寄りの生き方』について書きたいのです。もう一つは、『地方弁護士の役割と在り方』について書きたいのです。
人生100年時代の年寄りの生き方は、『年寄りの心得集と進化論』と『長生きを楽しむコツ』と『人生100年時代の年寄りの生き方』の三部作の原稿はでき、印刷製本に入っています。
『地方弁護士の役割と在り方』は、いま書いています。何を書くか、どのように書いたらよいかなどと考えながら試行錯誤を楽しんでいます。そんな中で生まれた句が前句です。地方弁護士は『喧嘩犬から氏神様へ』という話を書いていましたら、地方弁護士の役割は使役犬(ワーキングドッグ)に似ている気がしてきました。そこで、地方弁護士を使役犬に引き比べて述べたら分かり易く、親しみ易いのではないかと気付きました。
弁護士を犬と引き比べるとは、けしからんと、他の弁護士先生から叱られそうですが、どうか老弁護士の戯言で、特に深い意味のないふざけたデタラメの話として笑って許して下さい。弁護士の仕事をワーキングドックに引き比べるやり方は、分かり易く地方弁護士の仕事を語る上では、非常に便利です。我ながらいい思い付きだと自画自賛しています。
犬の多くはペットとして飼われています。愛玩動物です。可愛がる対象です。ですが、地方弁護士はペットの役割は果たせません。どの地方弁護士を見てもペットとなりそうな人はいません。ペットになろうなどと思い違いをしている弁護士はあまりいないでしょう。それでも時々ペットを目指しているのかななどと思う弁護士に出会うことがあります。自分のおかしさを棚に上げ、この仕事は少し『おかしいのではないか』と思ったりすることがあります。地方弁護士はペットではなく、ワーキングドッグに徹した方がいいような気がします。
使役犬には、番犬、猟犬、そり犬、牧羊犬、軍用犬、災害救助犬、警察犬、探知犬、盲導犬、介助犬、タレント犬等々数え上げたらきりがないほど仕事があるようです。地方弁護士の役割は、それに比べれば、ほんの僅かです。これでは犬以下だ、などということに気付きました。
探知犬だけでも、地雷探知犬、爆発物探知犬、麻薬探知犬、銃器探知犬、検疫探知犬、DVD探知犬、がん探知犬、シロアリ探知犬、トコジラミ探知犬、コロナ探知犬などがあるとのことです。犬の役割の多種多様さにびっくりしました。
地方弁護士だって、やる気になれば使役犬に負けないほどの仕事はありそうな気がします。しかしその仕事は何かと自問しても、それほど多くの答えは出てきません。地方弁護士は、それほど多くの仕事をやっていないのです。地方弁護士52年間の中でやってきたその仕事は、闘犬のような仕事と番犬のような仕事だけだったような気がします。80歳となるいま忸怩たるものがあります。心の中で犬以下だと深く恥じる気持ちが湧いています」。
〈苦労を半分に、解決の喜びを二倍に〉
「生きている限りは、地方弁護士として現役を張り続けます。この先も地方弁護士を続ける身としては、これから先、闘犬と番犬のような役割だけではなく、盲導犬や介助犬も目指したいと思います。
ですが、現実には介助してもらわなければならない状況にある身としては、介助犬的役割は果たせません。盲導犬に徹したいと思います。幸い体はあまり動きませんが知恵はこれまでの人生の中で、今が一番あります。歳を重ねるほど知恵の幅も広く、深さも増しています。その知恵で、地方住民の生き方を導きたいのです。
盲導犬は、盲人の道案内をするのですが、道案内をしてもらっている盲導犬のユーザーの方の『目的地に着くまでの苦労を半分に、目的地に着いた時の喜びを二倍にしてくれるのが盲導犬です』という言葉には深く共鳴しました。
地方弁護士は、悩みを抱えるクライアントと一緒に苦労を半分に、解決したときの喜びを二倍にするような役割を果たさなければならないと深く心に刻みました。地方弁護士は、悩みを抱える人と苦労と喜びを一緒にしたいものです」。
(拙著「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』から一部抜粋)
「地方弁護士の役割と在り方」『第1巻 地方弁護士の商売――必要悪から必要不可欠な存在へ――』『第2巻 地方弁護士の社会的使命――人命と人権を擁護する――』『第3巻 地方弁護士の心の持ち方――知恵と統合を』(いずれも本体1500円+税)、「福島原発事故と老人の死――損害賠償請求事件記録」(本体1000円+税)、都会の弁護士と田舎弁護士~破天荒弁護士といなべん」(本体2000円+税)、 「田舎弁護士の大衆法律学 新・憲法のこころ第30巻『戦争の放棄(その26) 安全保障問題」(本体500円+税)、「いなべんの哲学」第1~16巻(本体1000円+税、13巻のみ本体500円+税)も発売中!
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