司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>



 

 〈楽しいものにできるかは気持ち次第〉

 遺産を残す人が亡くなったら、遺産を受け継ぐ人同士の話し合いが大事になります。その話し合いでは、正しい認識を共有し、どうしたら亡くなった人の気持ちに添えるかを理解し合い、譲り合う気持ちが大事です。相続に関係する人全員の気持ちの合致が大事となります。遺産を残す人と残された人の気持ちが通じ合うように、普段から話し合い、心の交流を計っておくことが大事です。

 自分の心の中に譲り合う気持ちを作り出すためには、「人生は、いまの一瞬を、まわりの人といっしょに楽しみ尽くすのみ」という「いなべんの哲学」の考え方と、その実践が役立ちます。譲り合う気持ちを醸成させるためには、相続問題は、「いなべんの哲学」を実践する格好の場であることを理解し、相続という人生を楽しむアイテムをフルに活用して、実現してほしいのです。

 法律の規定に従うだけでは、相続という楽しく生きるためのアイテムを活かし切ることにはなりません。相続というこの世で一番身近で、一番大切な、夫婦、親子、兄弟などの親族の間の絆をより深めるアイテムを有効に活用するためには、法律よりも関係者一同の気持ちが大事です。

 遺産を残す人が生きているうちに生前協議書を作成しておき、遺産を残す人が亡くなったら、生前協議書に従って、残された人たちで歩み寄って、気持ちを一つにし、遺産分割協議書を作成するのが、理想的な相続問題の解決方法だと確信します。

 「楽しく生きるための相続」とするか、「骨肉相食む争いの相続」とするかは、心の持ち方、つまり気持ち次第ということになります。「いなべんの哲学」に従い、最も身近で最も大切な夫婦、親子、兄弟等の関係を楽しいものとするのは、気持ちです。法律ではないのです。このことを知ってほしく、このような駄文を書きました。


 〈争いのない解決への変化〉

 生前協議書方式と四十九日方式を勧める本を出してから、10年以上が経ちました。どちらもいまだに世間に広まっていません。ですが、その趣旨、言おうとしている事柄は伝わりました。私の、みのる法律事務所には、いなべんに遺産分割協議書を作ってほしいと依頼に来る人が多くなりました。

 以前は、一方の代理人として他方と争ってほしい、という依頼が多かったのですが、今では、相続人全員の気持ちを一つにまとめて、争いのない解決をしてほしいとの依頼が圧倒的に多くなりました。

 相続人間の仲に入って、遺産分割協議書を作ってほしい、という人が大幅に増えました。それのみならず、後に何の問題も残らないように税金なども申告し、支払ってもらい、使えるカネだけを分けてほしいというクライアントが急増しています。相続に絡む全ての問題を解決してほしい、という依頼が多くなりました。

 少なくとも私の身のまわりの人の間では、法律より気持ちが大事だという考え方が広まったのです。その結果、気持ちを一つにまとめてほしい、という依頼が増えたのです。この仕事は、やりがいがあります。

 面倒な手続は全て任せるので、争いのないように解決してほしい、との依頼が増えました。争いがないことと、後に面倒臭いことが残らないように解決することを目指して、事務所の総力と協力者の力を結集して、真摯な仕事を心掛けています。関係者からは喜んでもらえています。

 裁判所で争うのではなく、みのる法律事務所で関係者一同が幸せになる遺産分割協議書を作り、遺産を分ける作業までやるという方向に変わって来ていることを実感でき、駄文でも発刊することの意義を改めて知らされました。いつかは、その趣旨が広く世間に浸透してくれるものと信じています。

 法律よりも気持ちを大事にする相続問題の解決が、私の身のまわりだけでなく、世の中に広まっていくと信じています=この項終わり。

 (拙著「いなべんの哲学 第6巻 」から一部抜粋)


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